おとらの古新聞

昭和15年05月18日「マジノ線 突破 −ドイツだけで十分さ」
昭和15年5月18日付 大阪朝日新聞。

  マジノ線突破に伴ってのベルリン特派員からの報告です。

  まず、マジノ線突破の経緯が報告された後、どうやらその際、ドイツ軍が新兵器を使ったという噂があったようで、それについて本社から聞いています。

  本社   「こんどマジノ線を破ったドイツ軍の驚異的な新兵器とはいったいどういうものですか」
  ベルリン 「さあ、それはね… 実はベルリンでも大評判なんですが、どうもはっきりしたことはわかりません。毎日ドイツ政府当局と外人記者団との会見の際、記者団側から質問すると外務省の情報部長や宣伝省の外国新聞部長も「自分にもわからないが、非常な興味を持っている」と言っているくらいなんです。そしてただ、『この文書を読んでみよ』と言ってドイツ軍の参謀本部の書いた戦況の現地報告を見せるんです。それによると、ドイツ軍は新兵器の登場によってリエージェ要塞をたった二十四時間で攻略したが、その時の敵の捕虜の話として交戦中どうしたことか突然大砲が利かなくなって、われわれは戦闘不能に陥ったということを報告しています。」
  本社   「あなたの意見はどうですか、その新しい兵器というのはなにかガスみたいなものか、或いは殺人光線みたいなものですか」
  ベルリン 「どうもよくわからぬですが、火炎放射器とか、磁気を応用して敵の武器の機能を停止させるといったようなものではないでしょうか。いづれにしてもものすごい各種の兵器を併せて応用しているようです」

  う〜む、本当か? まるっきり電磁兵器ではないか。ンなもんがありゃ、ドイツが負けるワケないじゃないか。そもそも外国の新聞記者に教えるか?
  などとツッコミをいれてしまうのでした(笑)。

  続いて今後の戦況ですが、イタリアの参戦について聞いています。

  本社   「ドイツの方ではイタリアの参戦を望んでいますか」
  ベルリン 「まだ望んでいないようですが、今のところ自分ひとりでも十分やっていける。しかし将来イタリアは結局参戦するだろうという見方をしています。このイタリアが参戦するだろうという見方と同じ割合でアメリカは参戦しないだろうという見方があります」

  イタリアは6月10日に参戦しました。しかし問題なのはアメリカです。アメリカはこの年の10月あたりから、徐々に参戦の意志を示し始め、イギリスに肩入れしていきます。そして翌1941年12月8日。日本の真珠湾攻撃に伴い、ドイツ、イタリアがアメリカに宣戦布告し、あとはみんなそろってコテンパンにやられてしまう道を滑り落ちて行ったのでした。

  ところでこの記事、朝日新聞なんですねえ。今の論調とは似ても似つかぬものです。ドイツが勝っているのがとてもうれしそうなのは気のせいかな(笑)。





戻る
前へ
次へ