凌くんが生まれた頃
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凌くんが病気!?
凌くんが生まれた翌日、パパが仕事を終えて帰る支度をしていると、ママから電話がかかってきました。なんと凌くんが日赤病院に転送され、入院になったというのです。パパは急いで、まずママの病院に行きました。そこで院長先生の話によると、足の先に少しチアノーゼ(酸素が足りなくて紫色になること)が出ていて、悪い病気の恐れがあるので、念のため日赤に入院してもらったとのことでした。あくまで安全のためということで、心配することはなさそうだったので、一安心です。
でも凌くんはプラスチックケースの保育器に入れられ、パパたちは面会の時は、菌が入らないようにガウンを着て凌くんに会いに行きました。ケースの丸い穴から手を入れて、話しかけたり、凌くんをなでなでしました。凌くんはぽんちゃんと違って、生まれてすぐから力強くお乳を飲んだのでママたちはびっくりしました。
その日からパパは、仕事が終わると、ママの病院に行き、凌くんのいる日赤に行き、最後に家に帰るという忙しい毎日になりました。ママは予定通り、出産から10日後に退院して実家に戻ったので、今度はパパは、仕事が終わるとママの実家へ行き、二人で凌くんのいる日赤へ行き、ママを実家に送ってから家に帰るというさらに忙しい毎日になりました。その後凌くんも何事もなく元気に退院し、ママのところへ帰りました。
凌くんの名前
さて、一息ついたら、いよいよ名前を決めなくてはなりません。パパはまだ名前を決めていなかったので悩みました。
まずパパは、「雲」を使った名前を考えていました。大空を悠然と流れる雲が好きだったからです。「雲」はパパの大好きな三国志の関羽の名前の中にもあります。また「東雲」と書いて「しののめ」と読み、夜明けというとても気持ちのいい意味になります。けれどどうしても雲を使ったいい名前が浮かびません。そこで、雲と関連性がある字として「凌」が候補に挙がりました。
どうしてかというと、「凌」とは、「さらに上を行く」という意味ですが、「凌雲」という言葉があり、これは「雲をも凌ぐ高い志」という意味です。さらに平安時代に嵯峨天皇が作らせた日本最古の勅撰漢詩集の名前でもあります。そういうわけで、パパはまず、この字を使うことに決めました。
しかし「凌」という字はその意味が強すぎるために、「凌辱」「凌ず」「凌侮」など悪い意味もあるので、これを和らげるために、「明るい」という字をくっつけました。これで漢字で書いたときのバランスも良くなり、音の感じも良くなりました。それに何より、「雲よりも高いところに出たら、そこはいつも明るい。」と云うとても良い意味になりました。ママもこの名前が気に入り、こうして凌くんの名前が決まりました。
ちょっと聞くとお坊さんの名前みたいですが、俗世間を離れた理想を求める名前ではなく、俗世間の荒波を悠然と泳いで渡るための名前です。
甘えん坊の凌くん、ママの愛情をたっぷり吸収して大きな人間になってね。今はまだ、想像できないけど。そろそろおねしょ、卒業しようね。