大阪市内「渡船」ツアー
(1997年1月25日取材)


@千本松渡船へ
 住之江公園11:04発の幹76系統バスに乗りこみ、新なにわ筋を北上、11:12南津守2丁目着。西へ向かい看板を右に折れると渡船場がある。この渡船場の真上には桁下33mの千本松大橋、別名めがね橋がある。この橋は、船舶通行のため桁下高さをかせぐため、両端部が2回半の円形ループとなっており、上から見るとあたかも眼鏡みたいになっている。しかし住民にこの橋を使え、というのも酷な話なので、この渡船は生き残ったようだ。
 渡船場では、5人の子供が遊んでいる。無料の渡船場は子供たちの格好の遊び場でもあるようだ。むこう岸から11:15発の渡船「さざなみ号」がやって来る。大阪市営の渡船は、渡船事務所のある岸側から定時に発車し、往復し、次の時間まで待機する、という運航形態を取っている。係員に扉を開けてもらってから、浮き桟橋を歩いて渡船に乗り込む。他の乗客は自転車のおばちゃん1人だけ。約200mを1分30秒くらいで渡りきり、対岸に着いた。

A「昭和山」と落合上渡船・落合下渡船
 次に向かうのは、大正区役所の近くにある、落合上渡船だ。次の幹76系統バスまで30分あるので、大正通まで出てみる。この通りには、9系統ものバス路線があるので、少なくとも2,3分待てばバスに乗れる。時には、2台、3台と続いてくることもある。たまたま来た大運橋通11:33発の幹91系統に乗る。大正区役所11:38着。大正区役所の横を通り、「昭和山」のある千島公園に入る。この「山」、実は地下鉄建設工事で出た残土により1970年にできたもので高さ35m、天保年間に川の浚渫残土でできた「天保山」に対抗して「昭和山」と名付けられたそうだ。あまり期待せずにこの「山」に登ってみる。するとなんとなんと、なかなかの絶景である。西に港大橋とWTCタワー(高さ256m)、北西に六甲山、北に銀色に光る大阪ドーム(1997年3月1日オープン)、東に生駒山が望まれる。ちょっと名残り惜しいが下山して、落合上渡船場へ向かう。
 渡船場の北にはアーチ状の木津川水門がそびえ、どす黒い水面には、ゆりかもめがのんびり浮かんでいる。乗客7人(うち自転車5人)の12:00発「天神丸」に乗り込む。あっという間に100m足らずの木津川を渡って東岸へ。みなさん口々に乗員に「ありがとう」と言って船を下りる。今回は言えなかったが、次からは、僕もそういって下船しようと思ったりする。
 次の落合下渡船場に向かう前に、途中で見つけた「うどん屋」に入る。辺鄙な場所なのに、近くの造船所の社員などで結構繁盛している。キツネうどんを食べ、木津川沿いの道を南へ。5分ほど歩いて、落合下渡船場に到着する。12:30発の「みどり丸」で木津川西岸へ。乗客は僕一人だけだった。

B本日のハイライト、千歳渡船へ
 落合下渡船を後にして西へ向かい、中央小学校前バス停へ、そこで幹70系統の西船町行きバスを待つ。鶴町4丁目行きを4本くらいやり過ごす。何台も市バスとやり過ごすうち、バスの側面広告が「タワラ印」(大阪第一食糧)と「あかふじ米」(神明)のどちらかであることに気づく。そういえば、バス側面でのこの両社の「広告戦争」が新聞記事にもなっていたことを思い出す。12:49、やっと幹70系統バスが来て、乗り込む。木津川運河を渡ると、左右にそびえる大きなタンクやコークス炉、配管などに圧倒される。中山製鋼所の工場だ。右折ししばらくすると左手に3回半ループの木津川鉄橋がちらっと見える。このたもとには「木津川渡船」があるが、昨年5月に一度訪問したので、今回はパスする。ほどなく終点西船町12:56着。終点では、折り返しバスが3台ほど休んでいた。
 ここから北上し2,3分歩くと、今回4つ目の渡し「船町渡船」がある。13:01、対岸から50人乗りの「金剛丸」がやってくる。今度も乗客は僕一人だ。対岸まで70mほどなので、45秒くらいで対岸へ。対岸から徒歩で北上し、バス道である府道にぶつかるとバス停を探す。鶴町2丁目バス停から幹55系統バスに乗り、1分ほどで終点鶴町4丁目着13:13。ここには、交通局鶴町営業所がある。7系統も乗り入れる路線だけあって、車庫に整然と並ぶバス群は壮観である。この光景が見られるのも、地下鉄長堀鶴見緑地線の鶴町延伸までだろう。
 公園を横切り、千歳渡船場へ向かう。てっきり他の渡船の例から15分ヘッドと思っていたが、ここは20分ヘッド。13:20発は目の前で出発してしまったので、13:40発を待つ。ここは大きく開けている港なので、特に風がきつく身にこたえる。とりあえず、景色でも眺めることにする。北東には弁天町の「オーク200」が見える。名の通り高さ200mのオフィス棟とマンション棟が仲良く並んだ大阪市の土地信託ビルである。渡しの航路の脇に、真新しいコンクリート橋脚が2つ見える。建設中のこの橋が完成すれば、この渡しはどうなるのだろうか。
 13:43、対岸から83人乗り「千歳丸」がやってきた。対岸からやってきた乗客は、黒いウインドブレーカー姿の高校野球部員や買い物のおばちゃんなど計22人とこれまで見た中でいちばんの盛況ぶりだ。こちらからの乗客は8人、うち4人は自転車だ。ディーゼル音も高らかに、水しぶきをあげながら大正内港を北東へ突っ走る。対岸まで約350m、2分弱で到着した。

C天保山渡船で観光気分
 次に、出発寸前のところで駆け込んだ幹臨98系統バスで、新千歳から北恩加島へ。バス停1つ分なので、1分足らずで到着する。公営高層住宅群を抜け、5分ほど歩くと、今日6つ目の渡し、甚兵衛渡船場にたどりつく。ここも対岸まで80mほど、ほんとに目と鼻の先だ。14:15頃、渡船事務所の職員の方2人が出てきて、桟橋に通じるゲートを開ける。他の乗客は、小学生4人だけだ。「泉尾丸」(50人乗り)はエンジンのうなりとともに、真っ黒い排ガスを出しながらあっという間に対岸へ。乗車時間45秒。
 対岸に着き、環境事業局港工場(ごみ焼却場)、JR貨物の引き込み線を過ぎると、次に支106系統バスに乗れると踏んでいた。しかし、バス停の時刻表を見て唖然、10時から15時台にはバスが走っていない。仕方ないので、みなと通(国道172号線)までひたすら歩く。夕凪バス停に到着。次のバスを待っていると、反対車線に「2008年大阪にオリンピックを!」のペインティングのバスが通るのが見えた。夕凪14:34発、ちょっと混雑気味の幹60系統バスで、西へ。天保山へ向かう。途中、右手に木に覆われた古墳のような丸い丘がある。この丘、実は昨年オープンした大阪市立中央体育館の建物で、上に土をかぶせて公園にしている。公園の緑を少しでも増やそうと、涙ぐましい努力である。
 10分ほどで天保山に到着。目の前には、ジンベエザメが泳ぐ大水槽で有名な「海遊館」と「マーケットプレース」、安藤忠雄設計のコーヒーカップみたいな形をした「サントリーミュージアム」が並んでいる。それらは時間がないのでパスして、小豆島や淡路島行きの旅客船ターミナル脇を抜け、堤防沿いを東へ。天保山渡船場に着く。そこには、マウンテンバイク野郎たちや、家族連れなどが待っており、結構にぎわっている。乗客20人ほどで、出発。天保山大橋を右手に仰ぎ見ながら、岸を離れる。しだいに、海遊館が視界に広がっていく。2分ほどで桜島側の対岸に到着。対岸に帰っていく渡船を見送っていると、観光客船「サンタマリア号」がゆっくりやってきた。渡船と一瞬重なり合ったが、その大きさには、小錦とネズミほどの違いがあるように見えた。


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