合唱を楽しむ | ||||
はじめに | ||||
合唱がうまくなるのにはちょっとしたコツが必要です。それを知らないと、なかなかうまくならなくてしんどい目をします。 でも、合唱すること自体は誰にでも気軽にでき、直ぐに楽しめます。 コンクールなどを目指すには、それなりの特別な訓練が必要ですが、楽しくみんなでハモるには苦労はいりません。 コツをつかんで、楽しく歌える合唱部を作りをしましょう。 |
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T.声の話 | ||||
1.いい声を出すには | ||||
まず、合唱するための声についての話です。 そして、いい声を出すためには、次のコツを覚えておけばいいのです。 それは、いい声は一生懸命に練習を重ねて、がんばって出すものではありません。そうではなくて、ちゃんとした準備さえすればいい声は自然に出るものなのです。人間、誰もが、その人なりの美しい声を持っているのです。 でも、なかなか美味く声はでませんね。それには理由があります。それは、いい声が出るためには、3つの問題点、しかも日本人特有の問題を解決する必要があるからなのです。 その3つとは、「日本人の言葉の問題」、「日本人の耳の問題」、「日本人の性格の問題」の3点です。 |
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2.日本人の言葉の問題 | ||||
つまり、日本語そのものの問題です。 日本語の特徴のひとつとして、顔の筋肉をあまり使わずにしゃべることがあげられます。また、腹筋を使って喋る発音が少ないことも問題となります。 これらの事が声にどんな影響を与えるかというと、いい声が鳴るための筋肉が動きにくいということと、息をコントロールするための、腹筋を動かすことが出来ないことです。 これに対して外国語には、これらの筋肉を動かす動きがあり、発声に結び付いていくのですが、日本語を使っている限り、これらの筋肉をまず訓練して使えるようになる必要があります。さらに詳しい解説はここをクリックして下さい。 |
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3.日本人の耳の問題 | ||||
これは、文化の問題でもあります。 日本の古くからの音楽に使われる声は、声を共鳴させるというより、喉そのものを鳴らして声を絞り出すと言った発声法が多く用いられてきました。この声を、知らず知らずに小さい子供のときから聞いているため、声を共鳴させるという感覚が育っていません。 また、その背景にある木造建築であるという住環境も、部屋がよく響かない構造のため、この共鳴ということを経験することが少ないのです。 また、古くからの音楽は基本的に単旋律音楽ですので、ハモった時のすばらしい感じを知らずにいる場合が多いのです。 音をハモらせるには、音程を正確に取るだけでなく、耳で聞いて感覚的合わせることが必要です。この感覚を育てる必要があります。西洋では、教会などでよく響いた4声のハーモニーの音を聞く機会は十分あり、自然に感覚として身についていくのですが、日本にはこのような経験が非常に少ないので耳が慣れていません。 |
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4.日本人の性格の問題 | ||||
日本人の美的感覚の問題です。 何事にも真面目に真剣に取り組み学ぼうとする姿勢が美徳とされ、音楽についても学ぶ姿勢がまず前面に出てきます。このため、いい声を出すときに必要な、リラックスすることが出来ないで、体を硬くして声を出す傾向が、多くの人に見受けられます。 音楽を学ぶより、音楽を楽しむことが歌うときには大事です。 さらに、日本人は、以心伝心で意思を伝えようとするとか、日本語には主語をはっきりさせない傾向があるとか、よくいわれいています。このことは、物事をはっきりさせない傾向を生む文化的側面があります。 このような、自己主張を抑えてしまうことは、息を強く使ってはっきり声出さないということに繋がっていき、いい声のためには障害になっています。歌うときは羽目を外して楽しむべきでしょう。 |
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U.いい声を作ろう | ||||
はじめに | ||||
前章での「声の話」で、潜在的に持っている問題点を挙げました。それをうまく克服しながら楽しく歌えるいい声を作っていきましょう。 |
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1.リラックスした姿勢 | ||||
まず、姿勢です。最初は、両足に体重を均等にかけて自然に立った姿勢を維持することを覚えましょう。練習していくうちに、自分の歌いやすいポイントみたいなものが見えてきます。それが他の人から見て無理のない姿勢になっていたら、まずその姿勢を保ちましょう。 よく教科書や発声の本などに正しい姿勢として図などが載ってますが、その姿勢を維持し続けようとして、かえって力が入って声が出にくくなっている場合があります。 また、姿勢には癖があり、自分ではリラックスして立っているつもりでも、他人から見ると傾いてたり、ねじれてたりする場合があります。本人自身では判断できてない場合があるので、周りで見てあげましょう。 以前、左右の足の長さが少し違う人がいました。この人は教科書に書いてあるような姿勢で、足を揃えて立つと体が傾き、それを戻そうとしてかえって力が入っていました。この場合は、すこし、足を前後にずらして立って、体の水平を保っている時の方が、リラックスして歌いやすいポイントになっていました。このように、その人がリラックスして立っている姿勢を基本にしましょう。 |
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2.いい声のための三原則 | ||||
さていよいよ、声を出す方法です。最初にも書いたように、いい声は一生懸命にがんばって出すものではなく、ちゃんとした準備さえすれば出るものです。 そのいい声を出すための準備には、3つのポイントがあります。それは、「いい息をして・ノドを開けて・良く響かす」です。全てがここに集約されると言ってもいいでしょう。いろいろな発声をやってみるより、まずはこの基本の三つが出来るようになることが大切です。 |
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3.三原則のための準備 | ||||
ここで、日本語の特徴から来る問題点を解決する必要があります。いい声のために使う筋肉は、日ごろ日本語を話しているときには余り使わない筋肉です。それを使えるようにしましょう。 「練習1」 まず、顔面の筋肉がよく動くようになるよう、練習しましょう。 「練習2」 次に、腹筋を使って声を出す習慣がないのに対応して、腹式呼吸のために使う腹筋を使えるように練習をしましょう。 |
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4.「いい息をする」には(三原則その1) | ||||
では、いよいよ、いい息のための第1歩、腹式呼吸です。 ここまでで「腹式呼吸をしましょう。」と生徒に言うだけでは、腹式呼吸はすぐにマスターすることは出来ないことは分かったと思います。まず、腹筋が十分動くようにしていき、次に上げる腹式呼吸のためのコツをひとつひとつ出来るようにしていきましょう。 そして、どれくらい、しっかり息を出せるようになってきたか、どれくらい腹筋が動かせるようになってきたか、を見極めながら練習内容や練習量を指示してあげる必要があります。 |
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5.腹式呼吸のためのコツ! | ||||
@ 横隔膜を下げる A お腹を膨らませる、けど、柔らかく B 肋骨を張る C 背筋もつかいましょう 「練習3」 以上がコツですが、直ぐ腹式呼吸を実感する方法があります。仰向けに寝てみることです。このとき、息を吸うとお腹が膨れ横隔膜が動くのが直ぐ分かります。 でも立ち上がると出来なくなります。普通に立っているときでもお腹が反応するよう、徐々に意識して動かせるようにしていきましょう。 |
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6.「ノドを開ける」には(三原則その2) | ||||
喉が閉まってると息がうまく通りません。当たり前の理屈ですが、喉が開いていることを、声を出しているときになかなか感じることができないので、自分でコントロールするのはなかなか難しいことです。 「練習4」 喉を開けているというイメージだけでなく、具体的練習方法を使ってノドが開いている状態を作りましょう。 |
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7.良く響かせる(三原則その3) | ||||
声という楽器の音は、声帯が弦で、それを息という弓を使って振動させ、人間の体という共鳴箱を使って共鳴させて出てくるのです。「良く響かせる」というのは、この共鳴のことを指しています。 日本人には特に、共鳴した音を聞く習慣が少なく、この感覚が分からない場合が多いことは前に述べました。その結果、知らず知らずのうちに、地声に近い声に戻って歌っている場合も多いので、基礎的な練習をしっかりマスターしておきましょう。 さて、共鳴するためには、しっかりした共鳴箱がいります。例えば、いろいろな弦楽器が相似形をしているのは、あのような形が良く共鳴するのに適しているからです。人間の体は、いろいろな場所を共鳴箱として使うことが出来ますが、特に大事なのは「頭」です。 「練習5」 これが、「頭声発声」と呼ばれるものです。これが基本の発声法です。 「練習6」 |
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V.いい耳作ろう | ||||
1.意識改革 | ||||
実は、自分の声というのは、自分で聞くことが出来ないのです。 「自分の声を録音したら、自分の声ではないように思える」という経験をしたことがあると思います。これには理由があります。 まず、録音した声、言い換えると、他の人が聞いている自分の声ですが、これは、空気を伝わって耳に届いた声です。ところが、自分が聞いている自分の声は、この空気を伝わって届いた声と、直接頭蓋骨などを伝わって聞こえてくる振動が混ざって聞こえる声なのです。 このため、自分が聴いている自分の声は、他の人が聞いている自分の声は違うのです。つまり、他の人が聞いている自分の声は、永遠に自分では聞くことが出来ません。 録音した声の方が、他の人が聞いている声に近いでしょう。このことをいつも意識しておく必要があります。 (ただし、録音も条件によっては必ずしも正しく再現されるとは限らないので注意が必要ですが。) |
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2.音の三要素 | ||||
音の三要素とは、音程・音量・音質です。 オシロスコープという器具を使うと、音がサインカーブのような波形として表示されます。その波形は、横幅が音程を表し、縦幅が音量を、そして波の形が音質を表します。 だから、ひとつの声を作るということは、どんな音程を出すか、どんな強さで出すか、どんな音色で出すかをいつもコントロール出来るように出していかなければなりません。音程と音量は割りと早くから意識しますが、音色を意識して音を作ることはなかなか出来ません。 同じ音程で同じ音量でも、音色を変えて音が出せるようになると演奏の幅が断然広くなります。この音色を作るためには耳が中心的な役割を果たします。 特に合唱の場合、楽器に比べて音色が少ないと思われがちで、音色の注意を払うことが少ないようです。 |
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3.練習場所 | ||||
意外に耳を作るのに影響を与えているのが、練習場所の問題です。いつも練習している所が、よく響くか響かないか、広いのか狭いのか、などといった点です。 響きがない場所だと、自分の出している声が吸い取られるようで、力の入った声を出す傾向になる経験は、誰にもあると思います。こんな場所は、基礎練習をするときなどには声の粗がよく聞こえて、そこを直すこと練習ができます。しかし、合わせる練習をする場合は、どう演奏しても音が交じり合わず、よく聞こえてこないので、曲のイメージを育てられない面があります。 逆に、よく響く場所では、響きが重なり合って、表現がうまく出来ているかなどの判断をするには好都合な面があります。しかし、それで満足しちゃんとして、発声をおろそかにしてしまう場合がみられます。 狭いところで練習していると、声に伸びがなくなる危険がありますし、だだっ広い場所では大きな声を出そうとして声が荒くなる危険があります。 同じ場所ばかりで練習していると、その練習場所の音に耳がなれて、偏った聞き方の耳になってしまう危険性があります。 |
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4.いろんな音楽を聴く | ||||
合唱が楽しくなると、合唱曲ばかり聴いて他のジャンルの音楽を聴かなくなります。合唱曲のみを聴いている合唱オタクでは、いい耳は育ちません。 2.音の三要素で、声の音色にあまり注意を払わないことを指摘しました。声の種類は同声合唱の場合、3から4。混声合唱の場合でも、声部は4から6ですね。このため、合唱をする人の中には声の種類イコール音色の種類と勘違いする場合が見受けられます。 人の性格は十人十色、みんな違います。それと同じで、声の音色も人それぞれで同じものはありません。それを、たとえばソプラノとひとくくりにしてしまうので、音色の微妙さに注意しなくなります。 その点、楽器はそれぞれユニークな音色を持っているので、音色に注意がよく行きます。 ですから、合唱の耳を育てるためには、オーケストラの曲やジャズやポップスなど、合唱以外のいろいろなジャンルの音楽も聴いて、耳を磨きましょう。特に、音色に注意してですよ。 |
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W.声を合わせよう | ||||
はじめに | ||||
第T章と第U章は、合唱のための声を作る練習方法の章でした。ここからは、いよいよ合唱を楽しむための章です。主に、第W章は合唱をするための基礎技術を、第X章は合唱での音楽作りのポイントをまとめていきます。 |
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1.母音を合わせる | ||||
最初に、部員に一人ずつ順番に「ア」の母音を発音させてみましょう。「ア」、「アー」、「アゥ」、「アッ」などと、いろいろな「ア」が聞こえるはずです。 日本語の母音は、基本的には5つですが、世界にはいろいろな母音が存在します。日本語でも「あかい」の「あ」と「あおい」の「あ」は、次にくる言葉の違いにもより、厳密に言えば異なっているといっていいでしょう。 まず、母音は5種類ではない。いろいろな母音があるということを認識することが第一歩です。 その上で、そのいろいろな母音が発音できるようになり、理想的には、それらの母音がきれいに合うようになれば良いのです。が、それには口の形をコントロールする、声が響く位置を変えるなどいろいろな技術が伴ってこないとすぐには実現しません。 だから、まず、例えば「あ」の母音が一つではないことを理解し、自分の出している母音がみんなと同じかどうかを聞きあう姿勢を作りましょう。 そして、練習のときに同じ母音をイメージして出す努力をすることが、母音を合わせる第一歩です。 |
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2.母音を混ぜる | ||||
これは、音色にも関わる問題なのですが、1の「母音を合わせる」とも関わっています。 「母音を混ぜる」とは、例えば、「あ」に「え」を、「お」に「う」を混ぜるなど、異なった母音を混ぜて声を出すことです。 これにより、たくさんある中間的な母音の理解が進み、母音を合わせる時に、イメージを合わせて練習できるようになります。また、声の音色を合わせることも、コントロール出来るようになります。 特に、外国語の曲を演奏するときには、必要になるテクニックです。 演歌歌手の練習にさえ、例に出した「あ」と「え」を混ぜた発音で歌うというような練習があるそうですので、合唱の練習でも、この考え方を取り入れて、いろいろな母音をうまく出せるようしていきましょう。 |
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3.子音を合わせる | ||||
子音を合わせるには、その一つ一つの子音について考えていく必要があります。ここでは、あわせにくい子音が出てきた時にどう合わせていくかを考えるポイントのみをあげて、一つ一つの子音についての細かい説明は別にします。 まず、一つ目の子音を合わせるためのコツは、息のスピードです。 しゃべる時と歌う時では、子音を出すための息のスピードは違います。たいていの場合、子音をきれいに歌うためには息のスピードを上げる必要があります。しかし、しゃべる時に使う息のままで発音している人や、一生懸命表情に工夫している人などの息の差が、子音のばらつきとなって出ます。 息のスピードを合わせる練習をするわけですが、具体的には、詩を読む練習です。単に読んで合わせるのではなく、息のスピードを合わせること主眼にしましょう。 次のコツは、唇の動きです。子音を合わせるための練習の時に、一生懸命唇を動かそうとして、かえって力が入り、うまく動かなくなっている場合があります。 すばやく動かす必要のある場合こそ、リラックスして唇のまわりの筋肉を柔らかく使うようにしないとうまく動きません。どんな子音の時にも、唇は柔らかく使いましょう。 |
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4.発音を合わせる | ||||
発音を合わせる時によく言われるのは、言葉を合わせるということです。 たしかに、合唱曲には歌詞があり、どんな言葉で歌い始めるのかによって合わせるタイミングの取り方は違ってきます。基本は、母音がオンビートで鳴らせることです。ということは、子音を拍の前に出すわけですが、これもそれぞれの子音によって検証しなければいけない問題ですし、また、少しぐらいなら、ずれた方がニュアンスがよく伝わる場合があります。ですから、発音が合って歌詞がクリアに聞こえてくるというのは、少し高度なテクニックになり、この点についても別の章にまわします。 ここでは基本技術として、ブレスの問題として処理できるようにしましょう。人の声は、出せば自然に合うように思いがちですが、案外、何も意識せずに声を出したのでは合わないものです。 それは、人によって呼吸の仕方や、どのように共鳴を得ようとしているのかで、声を出すための準備の仕方が異なっているからです。 ですから、声を出す準備の時から合わせる心構えが必要です。声を出す準備、つまり、同じブレスをして声を出すようにしましょう。 出だしを指揮者の動きに合わせようなどということに注意を払うより、みんなで一緒に同じ息をして音を出す練習で発音を合わせていきましょう。 |
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5.和音を合わせる | ||||
ピアノの音は平均率ですが、歌う声は純正調です。ですから、ピアノの音で正確な音程を取って和音を合わせても、きれいには響きません。 平均率と純正調の違いは項目を新しくして書きますが、ここでは基礎編としてピアノを使って長3和音(たとえば、ドミソの和音)の純正調の響きを得る方法を書いておきます。 よく、ドミソの順に音を重ねて和音を合わせようとしますが、この順ではソの音が入ってきた瞬間に、ミの音が不安定になります。問題になるのは、ミの合わせ方です。 まず、和音の構成ですが、ドミソのドにあたる音を、和音の基礎となる音ですので、根音と言います。それから、3音上のミにあたる音を第3音、5音上のソにあたる音を第5音といいます。 平均率での根音と第5音の関係は純正調になっても、ほぼ変わりません。ですから、まずこの根音と第5音を合わせましょう。これは、ピアノで音を取って大丈夫です。互いの音を取っておき、根音・第5音の順に音を重ねて合わせます。 その重なりの中に、第3音を入れます。この時、出来るだけピアノなしで音をはめて見ましょう。うまくいくコツは、少し根音や第5音より弱く音を出すことです。 数回、この練習を繰り返し慣れて見ましょう。どうしても、うまくいかない時には、第3音をピアノで取ってから歌えばいいのですが、この時きれいに合うためには、第3音を少し下げないといけません。(半音の約1割強ほど下げるといいのですが) 何度か練習して、コツをつかめば、とても気持ちよく、和音として響きます。 |
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X.音楽を合わせよう | ||||
はじめに | ||||
合唱は、楽器などと違って音を作り出すための練習などをあまりしなくても、すぐに声が出せ、しかもその気楽に出した声が、混じり合ったり溶け込んだりして、新しいハーモニーを作り出せるところがその楽しさの一つだといえます。そして、その楽しさを知ると次により美しくハーモニーさせることを求めるようになるのは自然の流れでしょう。 最初は、ずれてぶつかりあい、うまく合わなかった声が、練習によって整理され、ブレンドされて味のある音色や、表情豊かな音楽が作り出されていく時には、素晴らしい感動をともないます。そのブレンドされ、混ざり合った音のことを、ここではサウンドと呼ぶことにします。 ここからは、そのサウンド作りに役に立つノウハウです。みんなで合わせる練習するときのコツのようなものをあげていきますので、練習を楽しみながら合唱することがうまくなってほしいものです。 ここからの項目は順序を決めていません。随時、必要な箇所に追加していきますので、必ずしも、最後の項目が最新の追加項目にはなってないので注意してください。 |
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1.首振り歌い | ||||
歌っていると、いつの間にか力が入り体や首が堅くなっていて声が出にくくなっていることがよくあります。その時の特効薬です。 首を水平に左右に振りながら歌ってみましょう。 しかし、動かしながら歌おうとすると、動かせなかったり、動きが一様でなくぎこちなくなったり、途中で一旦止まってからまた回りだしたりします。これは全て、どこかに余分な力が入っていてリラックス出来なくなっているからです。この力みが声を出にくくしています。 声が小さくなったり、かすれた感じで出てもいいのでスムーズに動かしながら歌えるようにしましょう。 そうして歌えてる時のポイントが、いい声の出発点になります。 |
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2.糸を巻き巻き | ||||
伸びのない声への対処方法です。原因が、息の使い方が十分でない場合に大変効果があります。 まず、握りこぶしを作って、その握りこぶしが上下に重なるよう、腕を体の前に曲げます。そうしておいて、その握りこぶしを回してみましょう。これが、糸を巻き巻きです。 この運動をしながら、歌います。なんと、声が伸びていきますよ。これも体が硬くなってリラックス出来ない状態で、息の流れを阻害しているのを開放するものです。 ただし、これを行うときは、歌う本人は腕を回すことに気が集中して声が変わったか分からない場合がありますので、誰かに聞いてもらいましょう。 また、この方法で声を出すと、息を送り続ける効果があるので、息が少ししか出ない、息を出し続けるのが苦手な人にも効果を上げます。 |
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3.位置を変えると意識も変わる | ||||
いつもパート別に横に並んで練習するのだけでなく、たまには気分転換に並び方を変えてみませんか。 これは、ただ単に、パート位置を入れ替えるだけでなく、例えば、混声ならソプラノとアルト、ソプラノとテナーが向かい合って歌ってみるとか、という風にです。いつも横から聞こえていた音が真正面から聞こえてくると、その声に対して合わせる感覚が変わります。 さらにおもいきって「フルーツバスケット」をやってみましょう。つまり、完全に並び位置をばらばらにします。このとき、隣に同じパートの人がいないようにとか、同じパートの人と二人ずつ組んでばらばらになってみるとか、いろいろなバリエーションが考えられます。 この練習によって、他のパートの人と声を合わせる感覚が分かりやすくなります。 |
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4.発声と発音 | ||||
これは永遠の課題といえるでしょう。練習を始めたばかりのころは、特にこの二つのことは相反するような状態におちいります。 具体的に言うと、気持ちよく発声ができるようになると、発音が不鮮明になる。逆に言葉をちゃんと聞こえさせるように歌うと、声の出し方が変、と言う現象です。 かえって、初心者のうちに、きれいな発音で何の問題もなくちゃんと歌えてると感じるのなら、声の出し方が間違っているといっていいくらいでしょう。発音と発声をうまく両立させることが出来るようになるのは、もう少し発声が安定してからです。 これは、言葉をはっきり発音するために、しゃべっている時の声の出し方が出てきて、ノドが開かなくなるからです。ノドを開くと発音が悪くなる、発音を良くしようとするとノドが閉まるという、悪循環が断ち切れないからです。 これを解消するには、まず、発声を優先させましょう。ノドが開いた状態でちゃんと発音することは練習により出来ますが、日本語の発音を気にしすぎるとノドが開いた状態を作ることは出来なくなります。 発声が良くなったら発音に気をつける、すると、発声のバランスが悪くなるので、また発声の練習をする、というように、一歩一歩進んでいきましょう。 もう一度言いますが、この両者がうまくバランスが取れているかは、どんなに経験を積んでも常にチェックしなければいけない課題です。 |
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5.ハーモニーと母音 | ||||
発声練習で声の出し方がよくなり、音程の取り方がよくなってきても、「和音をハモらせてみると余りよく合わない」、ということが起こります。 ただ、合唱の場合は、練習しているうちに合ってくる場合もあるので、この現象は見逃しがちです。しかし、そのまま見逃していると、同じ和音なのに歌詞が違ったら合わなくなると言うようなことが起こるので、この現象はきっちり意識しておく必要があります。 この音程が良くてもハーモニーが合わない現象は、音色が合っていないことが原因です。そして、その音色を合わせるために大切なことは母音の歌い方です。 練習を重ねていると、知らず知らずに母音がそろってきて合うではなくて、本当の美しいハーモニーの得るためにも、また音楽作りのためにも、母音をきれいに合わせる練習を取り入れておきましょう。 第W章の1を参考にして練習してみて下さい。 |
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6.母音は色、子音はタッチ | ||||
油絵で合唱音楽に例えたとき、描いてある対象物がメロディーであるとすると、その絵の対象物の色合いを決めるのは母音で、筆使い・タッチを決めるのは子音です。 やわらかく描きたい時は、暖かな配色でソフト感触が必要でしょう。その時には、よく響いた深みのある母音に、子音の立ち上がりを少し抑えた発音が必要です。 力強く表現したい時は、目立つ配色に盛り上がるような絵の具のタッチが必要です。その時には、若々しい音色を持った母音を、鋭く子音を発音して表現する必要があります。 今まで項目は、声を合わせる場合に重点を置いていましたが、この項目は、メロディーを歌うときにも応用できる内容です。 いつもはできるだけ具体的に書くことを心がけているのですが、この項は、抽象的な表現をしましてみました。うまく伝わったでしょうか? |
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7.子音の長さ | ||||
子音には、個々の言葉の使い方によって長さがあります。 例えば、「ながいはな」(長い鼻)という文の、最初の「な」と最後の「な」は同じニュアンスでは発音しません。歌うときには、同じ「n」の発音でも、音符のどの時点で、「n」の発音を開始するのかによって、その言葉として生き生きとして語感が出てくるかどうかが決まります。 オンビート(拍の頭)に母音が来るように声を出すのが基本ですが、その母音のどれくらい前に子音をどんな長さで出すのかが、言葉の表情つくりに影響を与えます。 日本語という、子音と母音がほぼ1対1と言う特徴をもつ言葉でさえこれですから、子音のたいへん多い外国語の曲を歌う時はなおさらです。 |
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8.子音のスピード | ||||
「7」と同じ言い方をすると、子音には、個々の言葉の使い方によってスピードがあります。 例えば、「さっちゃんはさちこ」という文の、最初の「さ」とさちこの「さ」は同じニュアンスでは発音しません。この例では「s」の次に撥音がくるので、特にそのスピード感が異なります。 歌うときには、同じ「s」の発音でも、その子音によりスピードを変えて変化をつける必要があります。 もちろん、子音のたいへん多い外国語の曲を歌う時は、さらにその発音に注意が必要です。 |
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9.長くのばす音 | ||||
同じ音を長く伸ばしていると、音程が不安定に鳴る場合があります。これを安定させる方法です。 飛行機に乗ったことがあるでしょうか。飛行機に乗っていると、機体の前方を少し上げて飛行しているのが分かります。水平飛行をしている飛行機は、揚力が必要なので、機体の前方を少し上げて角度をつけて飛んでいます。機体を完全に水平にして飛ぶと、機体の重力で少しずつ高度が下がっていくのです。 長く音を保つ時はこれと同じ考え方をしましょう。つまり、のばしているあいだ、音程を少し高めにしようとする意識がないと音程が下がったりゆれたりしてしまいます。 音程を少し高めに感じ続けると、音程は安定します。す。 |
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10.中間母音を歌おう | ||||
W―1の「母音を合わせる」で、「母音は5種類ではない。いろいろな母音がある」ことを述べました。では、そのいろいろある母音のための基礎練習です。 日本語のアイウエオの母音から、他の母音に母音の種類を広げてみます。その練習方法として、アエイオウの順番に母音を歌っていきます。ただし、「アからエ」、「エからイ」….と、母音を変える時に、どこで母音が変わったのか分からないように歌ってみましょう。これが、中間母音の練習です。 まず、この2つの母音の間にあるいろいろな母音を試して見ましょう。練習のときの注意として、アエイはだんだん口を横にひきながら、オウはだんだん口を丸くしながら歌ってください。 これで、日本語のアイウエオ以外の母音のニュアンスをつかんで下さい。 |
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11.続、リラックスの方法 | ||||
X−1や2に書いたように、歌うために力が入り、体や首が堅くなると、声は出にくくなります。それを防ぐリラックス方法の続編です。 ノドが十分に開いていない場合などに、首の筋肉に力が入り、顎を必要以上に引き下げたり、反対に顎が上がっていく現象が見受けられます。 こんな場合には、歌っている時に、顎を引き過ぎるなら「おでこを押してやる」、顎が上がっていくなら「顎を押してやる」ことで、その緊張を解きほぐすことが出来ます。 つまり、力の入ってる逆の方向に、動かしてやるといいのです。このことで、自分がどんな風に力が入っているのかが分かり、力を抜くコツが分かります。 |
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12.続々、リラックスの方法 | ||||
上体に力が入っている場合のリラックス方法です。 といより、発声法に注意を払うようになると、その発声法を実践するために力を入れてしまいます。その力によって、上体に入っている場合はよくあることです。ですから、一度は、どこかで試してみるといいと思います。 その方法は、上半身の力も抜くために、体を前に倒し、前屈して歌う方法です。腹式呼吸のための腹筋も力を抜き、手もぶらぶらするくらい力を抜いて、前屈しながら歌ってみて下さい。これで案外、声がよく出てきます。 この力の抜けた状態を覚えて、普通の姿勢に戻した時に使ってみてください。 |
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13.歌詞と響き | ||||
「発音と発声」の項目で、「発声が良くなったら発音が不明瞭になり、発音を直すと発声のバランスが悪くなるので、両方に気をつけて」、と書きましたが、「歌詞」と「声の響き」にも同じようなことが言えます。 具体的には、歌っているうちに声の響きがだんだん薄くなってくる現象が起きます。これは、歌詞に表情をつけることに集中するあまり、母音がちゃんと響かないで歌っている状態がおこってくるからです。 こんな時は、歌詞を、「母音」や「La」や「Ma」で歌う練習を追加して、声の響きを元に戻す練習が必要です。 曲を仕上げていく場合に、クリアな歌詞とよく響いた声の両方に気をつけましょう。 |
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14. 階名唱をしよう | ||||
歌詞と響きの問題を解決する別の練習方法として、階名唱で歌う方法があります。 全員で同じ母音を歌うことになるので、有効な点は13と変わりありません。さらに、階名唱には別の効果もあります。まず、「La」や「Ma」で歌うよりリズムを合わせやすいという点です。幾つかの子音が入ることにより、一つの子音だけで歌うより、リズミカルに歌うことが出来ます。 さらに、「移動ド唱法」で歌うと、和音の流れや、他の声部との関係などもつかめてきます。 しかし、この練習の欠点は、ある程度練習時間か必要なことです。階名唱に慣れて歌うことが出来るという、技術を身に付ける必要があるし、歌いやすい固定ド唱法では、音程が取りにくい状態が起こります。また、「移動ド唱法」はかなりの練習をしないとうまく出来ません。 しかし、出来ると必ず効果の上がる練習方法ですので、少し、練習が進んでいる団への導入がお勧めです。 |
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15.外国語の歌を歌おう(1) | ||||
もちろん、コンクールを目指してではなく、いい響きの発声や発音を得る練習のために歌うのです。ですから、曲としては、良く知られた歌いやすい曲がいいでしょう。 ただ、この練習には注意が必要です。それは、決してカタカナ歌いをしないことです。カタカナ歌いをしてしまうと、日本語で練習しているのと変わりはありません。 ですから、出来るだけ、ネイティブの歌っている原語を聞いて、それの真似をしてみましょう。 その時のコツは、一つは、口のまわりの筋肉をゆるめて歌うことです。日本語の発声・発音の硬さを、この練習で緩めてみましょう。 もう一つは、口の内部をしっかり広げておきましょう。口腔内の共鳴を得る練習になります。 外国語の持っている、やわらかい響きのある声を、練習から身につけてください。 |
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16.外国語の歌を歌おう(2) | ||||
外国語の曲を歌う効果はまだあります。 まず、外国語には、子音を発音するときに、息を沢山使う場合が多いのです。このため、その息を使う発音をしようと、腹筋を使って歌う必要があり、息の練習になります。 次に、外国語はアクセントがハッキリしているので、言葉に息の流れを乗せやすく、この点でも息の練習になります。 また、日本語のように子音と母音の数がほぼ同じではなく、母音が少ないので、その少ない母音を丁寧に歌う必要があり、母音を大切にする練習にもなります。 いずれの場合も、原語の発音に気をつけて歌い、普段、日本語の歌詞で歌っている時には使っていない、お腹・口のまわりの筋肉などをしっかり動かしながら練習しましょう。 |
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17.純正率と平均率(1) | ||||
少しややこしい話です。でも、よく響いた音程を作るためには、とても大切な話です。 「音程」、言い換えると、音の高さの違いは、弦の長さの違いで表されます。弦を長くすると低く、短くすると高くなります。 これを、弦の長さに比で表すと、2本の弦を張り、その長さを1:2にすると、1オクターブ離れた音程が出ます。簡単に言うと、「ド」と「ド」の音が出ます。2:3は「ド」と「ソ」。3:4は「ド」と「ファ」という風になります。(詳しい証明は長くなるので、インターネットで「純正調」を検索すると、詳しく説明されたサイトが見つかります。) これを元に、「ドレミファソラシド」の音階を作ります。しかし、こうして作った音階の、それぞれの隣の音の幅を計算すると、「ド」と「レ」の音程幅と「レ」と「ミ」の音程幅が少し違ってくるのです。このことは、大変、困ったことを起こします。 つまり、「ド」から始まる音階と「レ」から始まる音階を比較すると、最初の音程幅が違った音階が出来上がることになります。 |
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18.純正率と平均率(2) | ||||
これでは、「ド」から始まるハ長調の曲を演奏する時と、「レ」から始まるニ長調の曲を演奏する時では、その調に合わせて調律を変える必要が出てきます。 ピアノで演奏する場合、曲の途中で転調した時には、2台のピアノでも使わない限り演奏できません。この現象を解決するために考案されたのが、平均律です。 つまり、オクターブの12個の半音がほぼ平均になるようになるようしてあります。このことによって、あらゆる調に対応できます。 しかし、声の響きは(1)で述べた弦の比で出来る音程(純正率)によって、初めてうまく響き合います。 ですので、伴奏で声を支えてくれるピアノの音程と、歌う時の声の音程は微妙な差なのですが、異なっています。 |
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19.純正率と平均率(3) | ||||
しかし、平均律のピアノの音に比べて、全ての音について、修正が必要な程ずれているのではありません。 和音を作るときに大切になる5度は、両者のずれはほとんどありません。 しかし、「W―5」でも書いたように、三度の音程には注意が必要です。ピアノの音より、長三和音の第3音は低めに、短三和音の第3音は少し高めすると、純正率の音になります。また、七の和音の第7音も低めにする必要があります。 その変化の割合を数字として表すと、ピアノの半音の約1割ほど、高低を変える必要があるのです。ただ、数字で理解できても音は合いません。 練習によって、合っているポイントに、純正率で和音をはめる耳を育てていって下さい。 |
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20.歌う位置 | ||||
X―3では、練習方法としてパートの並び方を変える方法を書きましが、ここで取り上げる歌う位置とは、舞台上での並び方についてです。 発表の時など、いつも練習している場所とは違った所、特に、初めての場所で歌おうとすると、環境の違いに、まごつく事がいろいろあります。他の学校の体育館など、始めて行く場所で歌うと、いつもとは違う感じで声が響き、その聞こえ方もいつもと違って、歌っていてとても不安になるのです。 ですので、もし、直前にでも演奏している様子を聴くことが出来るなら、どのように響くのか、他の団体の演奏を聞いておきましょう。よく響く会場なら、少し広がっても大丈夫ですが、あまり響かない会場なら、広がらず集まって歌ったほうが無難です。 とかく、幅広い舞台に立つと、会場の幅に合わせて立ち位置が広がってしまいます。しかし、このために声が散ってしまいがちになり、これでは、折角一生懸命に練習してきた成果をうまく伝えられません。 見た目、少しこじんまりした感じにはなりますが、会場の広さの雰囲気に飲まれないようにしましょう。 |
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21.言葉をそろえる | ||||
喋っている言葉のイントネーションは、人それぞれにより微妙に異なります。出身地の違いにもよりますし、話し方自体がゆっくりの人や早口の人もいます。それらの違いは、その人の個性を象徴するものですから、これを修正する必要はありません。 しかし、歌う時には、歌詞が不鮮明になる原因になります。歌詞をはっきり聞こえるようにするには、この微妙な違いを合わせる必要があります。 自分では、みんなと同じように歌っているつもりだが、他の人が聞くとその人の癖によってずれてしまっている、という点です。 これをそろえる練習方法の一つとして、音程を外して、言葉だけでリズムを取って歌う練習があります。音符のリズムどおりに、音程つけないで言葉の発音をそろえることに集中します。 この時に、発音をあわせるだけでなく、言葉のスピード感もそろえましょう。さらに、ブレスのタイミングをそろえると、より効果的な練習になります。 |
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22.口のあけ方 | ||||
基本的なことなのですが、勘違いをして、折角の声を駄目にしている場合があります。それは、「口を開ける」という意味と「ノドを開ける」という意味を混同してしまっている事です。 幼稚園や小学校の頃に、「口を大きく開けて歌いましょう」と教えられます。このことは、子どもたちのためには間違った指導方法ではないでしょう。しかし、これを過剰に行って、口を大きく開けすぎて歌っているのを見かけます。 大きく開けすぎるとかえって悪い影響が出ます。その悪影響の第一点は、あごのちょうつがいの奥にノドが位置するので、大きく開けすぎると口は開くけど、ノドはかえって閉まってしまいます。口を開けるより、ノドを開ける方が大事です。 また、二つ目の影響として、共鳴の響きを逃してしまいます。口を開けることによって、共鳴のための片一方の壁を無くしてしまっているのです。 ですから、ノドは開けますが、口は開けすぎないようにしましょう。 |
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23.ア・カペラを楽しむ | ||||
ア・カペラの曲を演奏できるようにするのは、音程を正し取れるようにしなくてはならず、発声法がちゃんとできて、声の質もまとまってこないと、発表会などで演奏するのはなかなか大変なことです。そのため、ア・カペラの曲はどうして選曲から外れてしまいがちです。 でも、ア・カペラは合唱の基本。純正率でハマった音の響きはとっても魅力があります。そこで、ときどきこのア・カペラを練習に取り入れましょう。 と言っても、一つの曲を完成させるのは大変です。そこで、簡単にア・カペラを楽しむ方法があります。練習中に伴奏を外して歌ってみましょう。 もちろん、最初のうちは、曲の中で和音がちゃんと鳴っている部分を取り上げる必要があるのですが、今まで伴奏に頼って歌ってしまっていた部分や、ちゃんとハマりきってなかった部分などが、伴奏が無くなることによってしっかりハメようとするいい練習になります。 そして、なにより、ア・カペラの美しさを体験するいい機会になります。 |
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24.伴奏の形を変えて練習 | ||||
前の項目で、伴奏を外してア・カペラで練習することを書きました。しかし、直ぐにア・カペラでちゃんとハモって歌うのは少し難しいかもしれません。 そんな時には、ア・カペラで歌えるようになるまで、伴奏の形を変えることによって練習してみましょう。また、この練習は、通常の練習に取り入れても、なかなか効果的ですので試してみてください。ただし、これには伴奏者の協力が必要ですが。 まずその一つの形は、楽譜どおりの伴奏を弾かずに、その伴奏で使っている和音だけを弾いてもらい、その和音の響きに合わせて歌う練習。 他には、伴奏が弾いている音の、ベースラインだけを取り出して、その音だけで歌ってみる練習。 その他に、伴奏の各小節の最初の音だけ鳴らして、それだけで歌う練習。などなど。 要するに、伴奏に頼らずに歌う練習をするのです。この練習により、自分たちが歌ってる声だけでハモる、という習慣ができ、そうなれば、合唱は一段と楽しくなります。 |
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25.カンニングブレス | ||||
カンニングブレスとは、一息では歌えないような長いフレーズの中途などで、ブレス記号のないところで行うブレスのことです。 これは、同じパートの演奏者が少しずつ場所をずらしてブレスをする方法で行われ、長いフレーズが切れずに繋がって聞こえてくるという利点があります。 同じ音を単に長く伸ばす場合には、カンニングブレスをする位置についてはあまり気にかける必要はないのですが、音の動きのある長いフレーズでカンニングブレスを使う時には、少しコツがあります。 絶対的な法則というわけではないのですが、次の2点は守ったほうが、いい歌い方になります。1点目は、小節線の上ではカンニングブレスをしないこと。 もう一つは、フレーズの中で他の音に比べて長い音の後では、出来るだけ避けること。後者は、多くの人がブレスをしたがるので、結局この位置でカンニングブレスをするとカンニングブレスにならない場合が多く生じるからです。 また、大人数で歌っている場合には割りと気兼ねなく、カンニングブレスの位置を決めることが出来るのですが、少人数で歌っているときは、あらかじめバランスを考えて、みんなが安心してブレスが取れるように、前もってカンニングブレスの位置を決めておくことが必要です。 |
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26人数とテンポ | ||||
演奏する曲のテンポは、本来は音楽表現上もっとも適したテンポを選ぶべきです。しかし、このテンポは演奏する人数を考えに入れて設定されるべきでしょう。 特に、合唱の場合は、歌う人の人数に演奏が大きく影響される場合があるからです。 それは、どうしても、人が増えると音程は濁り、発音は不鮮明になることが原因です。 これでは、音楽的には適したテンポでも、演奏するとその効果を挙げられないことになります。40名・50名を超える人数で歌う時には、少し遅めのテンポを設定して、この音程の濁りや発音の不鮮明さを解消ようにするほうが、いい演奏につながるでしょう。 |
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27人数とテンポ NEW | ||||
X-3の「位置を変えると意識も変わる」で、パートの並び方を変える練習を紹介しました。この方法は、練習段階において、声の色をブレンドし、よくハモった音質にすると共に、そうした音を聞く耳を育てるために効果的な練習です。 しかし、演奏会が近づいてきたら、並び方をちゃんと決めて練習しましょう。 特に、横に2・3列くらいで並ぶ時に、並ぶ順で声の質が変化する場合があります。それ以上の大人数になるとそんなに問題にはならないのですが、2・3列くらいの時には、前列に並んだ人の声の質が全体に影響を与えます。 演奏する曲の雰囲気に合わせて並びを考えましょう。 また、歌ってる人も、並びが一人分移動するだけで、声を合わせるバランス感覚がずれてしまう場合があります。その意味からも、演奏会前には、並びをちゃんときめてからの練習が必要です。 |
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指揮編 | ||||
(合唱版を作る予定ですが、いまのところ、吹奏楽の指揮者編をご覧ください。) | ||||