小1の頃

 探検ごっこが好きで、自転車でもよく探検をした。
 小1の冬のある祝日、学校区域はほぼ制覇していたので草津川沿いに区外へ自転車で行きたくなった。実家は草津の南部で、草津川は琵琶湖に流れ込んでいる。 名神高速を越え、新幹線を越え、国道1号線を越え、草津の町を越え、しばらく走って帰ることにした。草津川沿いに帰れば良い。再び、草津の町を越え、国道1号線を越え、新幹線を越え、名神高速を越えたら自宅が見えるはずだった。
 ところが、どこにも見あたらない。というのか、そこは自分の記憶にない景色だった。同じ川を下って上ってどうして別の場所に出るのか不思議だった。人に聞こうかと思ったが、校則に違反しているので怒られそうだったし、第1、なんて聞けば良いのか分からなかった。来た道を引き返すのも探検家のプライドが許さず、名神沿いを走れば家が見つかると思った。
 しかし、名神のどっち方面に行けば良いのかは分からない。適当に走れば、大きな川に出た。橋まで迂回して川を渡り、名神まで戻ると、ますます知らないところに来ている気がした。やや不安になってきた。名神沿いに帰ることをあきらめ、橋を引き返して草津の町まで戻ることにした。ということは琵琶湖に向かえば良いわけだ!!
 あたりは、暗くなってきた。ヘッドライトの光で雨が降っているのがわかる。夢中で自転車を走らせていると、琵琶湖大橋のアーチが見えてきた。ここは守山か!?
 近くにいたおばさんに「草津はどっちですか?」と尋ね、教えられた方向に走り出そうとした。おばさんは驚いて、「今からひとりで帰るの?とにかく家に上がりーよ。」と家に入れてくれた。家の人は親切で、差し入れてくれた3色団子はうまかっ た。
 その後のことはよく覚えていないけれど、親戚らしきオジサンが車で迎えに来てくれた。家に帰ったら叱られるだろうなと思ったが、それほど叱られた記憶はない。
 これ以来、自転車で探検する遊びは禁止になり、いつの間にか20年以上が過ぎた。

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