しまなみ海道

 開通したときから一度は行きたいと思っていた。車を尾道にデポして、往復するのが一般的だろうがちょっと芸がない。どうせなら周回コースにしようと淡路島経由を考えた。とすると、車をどこにデポするか?しばらく悩む。
 そうだ!車で行かなければいいんだ!和歌山からならフェリーで徳島へ渡れるし、四国は「ツールド空海」を見て走りたいと思っていた。徳島と今治にホテルを予約してソロツーリングを計画した。

5/1

 午前8時30分、薄曇りの中、奈良を出発。和歌山に向けてR24を南進する。自転車はシクロクロスレースに使っているクロスバイク。これでまともなオンロードを走るのは3年ぶりだが、タイヤをスリックにすれば結構軽い。紀ノ川沿いの単調なR24には飽きたが1時前には和歌山港に到着。予定より2時間早く、午後1時5分発のフェリーに乗る。
 3時過ぎ、徳島に到着。旅の安全を祈願して1番札所の霊山寺を経由して、ホテルに向かう。
 本日の走行距離140km。

5/2

 降水確率は100%。さすがにこの予報は外れそうにない。マジで今治まで輪行しようかとも考えたが、まだ小雨なのでとりあえず走り出すことにする。ゴアテクスでなく薄手のウィンドブレーカを持ってきたことが悔やまれる。トラックの水しぶきを受けないように歩道の隅を走る。当然スピードはあまり出ない。今治まで150kmはあるが果たしてたどり着けるのか?R192はJR徳島線と並行に走っているので、いつでも電車に乗れるのが唯一の救いである。
 学駅の標識をみつけた。ここの入場券(「入学」と記載されている)をお守りに貰ったことを思い出して寄り道してみた。駅前には自転車置き場以外に何もない。駅ではカッパを着た中年夫婦ハイカーが駅員に行き先の相談をしている。この天気で歩くことを断念したらしい。僕も一瞬考えたが、全身びしょぬれで電車に乗ることにためらいがあり走り続けることにする。
 その後、駅前を通るたびに風呂屋を探すようになる。
道の駅「貞光」でトイレ休憩。天気予報は変わりそうにない。今治まであと100kmあるが、とても走り切る自信はない。池田なら風呂屋はあるだろうから、そこまで頑張ることにする。
 池田まであと20km。鈴鹿なら30分なんだけど・・・
江口駅の前を走り抜けようとした途端、前輪がパンクした。これは神様のおぼし召しかと勝手に解釈して駅へ向かう。幸い20分後に阿波池田行きの電車があり、輪行の準備と着替える余裕があった。
 阿波池田で岡山行きの特急に乗り換える。デッキに輪行バッグを固定して座席に座った途端、金髪の女性が話しかけてきた。よくわからなかったのだが、要するに「6日間、自転車でキャンプツーリングしてきたが、この雨であきらめて電車で帰るところ」のようだ。僕は「奈良から自転車で和歌山まで走って、フェリーで徳島に渡り、今治からしまなみ海道で尾道まで行く予定。パンクしたので仕方なく電車に乗っている。」と言いたかったが、残念ながら英語が出来なかった。
 彼女はほぼ一方的に話した後、「サヨナラ」と言い残して自分の座席に戻った。よっぽどバイク乗りを見て嬉しかったのだろう。その直後、別の日本人女性が話しかけて来た。「彼女は伊予西条まで行くんだけど、乗り換えをガイドしてくれない?えっ?あなた今治まで行くの?それじゃ同じ特急に乗り換えるのね。ちょうど良かったわ。」と、これもまた一方的に話して自分の座席に戻って行った。
 多度津駅で乗り換えようとすると、さっきの日本人女性はすでに下車したようで金髪女性だけだった。彼女も通りすがりに助けを求められたんだろうか?それにしても1人でキャンプツーリングとは元気なものだ。
 伊予西条まで緊張と楽しい時間が過ぎ、今治駅に着いた時はまだ雨が降っていた。予約していた今治ステーションホテルにチェックイン。こういう時は、駅前のホテルに限る。
 本日の走行距離60km。

5/3

 いよいよ、しまなみ海道を走る。天候は絶好のサイクリング日和。
今治城で記念撮影の後、サイクリングマップを貰うために糸山サイクリングターミナルに行く。しまなみ海道の四国側の観光拠点で、宿泊客で賑わっていた。比率的にはレンタサイクルでお気軽サイクリングする人が多いが、キャンプ道具を満載した人も目につく。
 まず、通行料200円を払って、全長4.1kmの来島海峡大橋を渡る。この橋は世界初の3連吊橋としても有名らしい。歩行者自転車道と原付道が分離されていてのんびり走れる。長くて美しい橋と景色を見ながら自転車で走れるのは気持ちいい。にこやかに挨拶していく人が多いのも他の観光地にない独特のものと感じた。
 大島に渡ると、自動車道はまっすぐトンネルに向かっているが、自転車歩行者道は海岸沿いまで降りることになる。島内では一般道を走って次の橋に向かうことになるが、これがまた風情がある。標識が完備していて迷うことはないが、わざわざ遠回りしたくなった。
 次の大三島の道の駅で昼食休憩。多々羅大橋の景色が美しいのでセルフタイマーでポーズを撮っていると、中年夫婦と目が合って照れくさかった。結婚30周年の記念に神戸から旅行に来ているとのこと。
 生口島には耕三寺博物館や平山郁夫美術館などの名所がある。どちらも門前で写真を撮るのみにした。車で来ていれば入館していただろうが、観光客が一杯のところにあえて行く気がしない。
 因島には水軍城跡があるが、以前に来たことがあるのでパス。
 因島大橋は自動車道と歩行者自転車道が上下2段の構造になっていて、頭上をゴウゴウと車が通りすぎていく。
 尾道に渡る尾道大橋は自転車用のレーンがなく危険なので尾道渡船を利用した。ひっきりなしに往復しているので待たずに乗れる。その後、新幹線新尾道駅から輪行して帰路につく。
 本日の走行距離130km。
 
 しまなみ海道は、自転車乗りには最高のコースだと思う。こんどはキャンプ道具満載で走ってみたい。

お薦めコースへ