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              “ 夫婦 ”

 家のリフォームのために整理していますと20年前に書いた遺言書が出てきました。胆石手術の為に入院中のことです。
 当時は、高齢者問題の勉強を始め、シニアライフアドバイザーを取得し、勉強を始めて3年目でした。妻は、個室を提言したが、
敢て、8人部屋を選択。
 妻は、男性の部屋に入り難いといいましたが、入院中の多くの高齢者の会話や面会にくる家族との会話をそれとなく聴きたいと考えました。
 入院は、約1ヶ月。胆のうが炎症を起こし、炎症が治るまで点滴の日々でした。仕事人間が、1ヶ月も何もせずの生活です。いろいろと考えました。
 やはり、手術に関しては平気な様子をしていましたが、手術を怖れていたのでしょう。1ヶ月の間に気持ちを書きとめていました。全くそのことを忘れていたのですが、それが、出てきました。私の20年前の気持ちでした。




イラスト

 
 幸せってなに

  約1ヶ月も入院生活をし、手術後は7日間で退院することとなった。
 仕事人間が、何もせず過ごした1ヶ月。いろいろと考えました。(以下当時のメモ))

  「幸せって」何と初めて考える。結論等は出るわけがない。
 ただ、入院中で、毎日点滴の生活。健康の有難さが嫌と言うほど身にしみる。
  夜中に人に聴こえないほどの泣き声を耳にする。
 翌朝その方に話しかけてみると、脳腫瘍で手術するとのこと。
 手術に対する不安な気持ちが思わず夜中にこみ上げて、声がでてきたようである…。

  私も手術する旨伝え、不安であることを話し合った。
 大げさなほど私はほら的な話をし、心底とは言えないが、笑い合いながら話しをする…。
 彼の手術日には点滴をぶら下げて手術室前まで送って行く。

  幸せって、自分が困ったときや弱気になった時に最も信頼できる人が横にいてくれる
 ことだと思う。
 入院中には物質的な欲望や仕事関係は浮かばない。幸せの条件の中に。
 毎日妻が病院へ来てくれることが最高の幸せと感じている自分を発見。
  「幸せって」身近な小さなことかも知れない。
 身近な小さなことに幸せを感じとることが出来るこころが本当の幸せであろう。
 一番身近な妻との信頼関係が幸せの源と決める。

  これからの高齢者問題には多くの方々が安心できる活動を心がけよう。

2)私のメモ

  手術4時間前のメモがノートに書かれていました。
  当時(20年前)のままに転載します。

  神とか、仏教など、自分が信じられるものが神であり宗教であるとすれば、
 私には、宗教心もなく、不安な気持ちを静めるなにものも持ち合わせていない。
 私は相棒の妻が信じられる。祈りを黙って聴いてくれる宗教の対象といえるかも知れない。

  無事に退院すれば妻と二人で目標を決め、二人の理想、意思、意志を相合わせて
 創り上げてゆく理想像が私の神であり、宗教と言えるかも知れない。
 二人の自己実現に向って二人で協力できること自体が、妻と私の二人の信仰と言える。

  今何をすれば自己実現に近づくことができるか、自己実現に近づくために何をすべきか。
 自己実現を信じて頑張ることが正しい行動、自立。
 そしてそれらが社会のために役立てば、これは立派な宗教と言えるのではないか。
 夫婦二人で自信をもってお互いを信頼し合い社会貢献をこれからの人生の目標としたい。

  自己実現は、最終章はない。実現すれば、次の自己実現の目標が出て来ることであろう。
 夫婦二人の自己実現を神として信仰し、生きてゆきたい。

3)妻のメモ (妻のメモは、手術の時間中のこころを書きとめたものです。
           その一部分の要点です)
          
  ・13時30分 手術開始時間です。823号の病室にて待機する。
         手術が順調なようにお祈りする。夫と医師の相性がよく必ず成功する。
         だいじょうぶ、大丈夫。これからも二人して人生を送る。
  ・14時    今頃どのような状態なのだろうか。
         夫が生まれて初めての手術を今体験中。がんばれ、ばんばれ。
  ・14時30分 夫の様子を思い浮かべる。
         どうぞ無事に手術が進みますように心から祈る。
  ・15時    手術のことを考えると胃のあたりがグッと重たくなる。今太陽の光が
         窓から入ってくる。
  ・15時45分 手術終了の連絡あり、先生の連絡を受ける。胆石が3個あり、その一つ
         が管を塞いでいたとのこと。
  ・16時10分 集中医療室へ面会に。靴、上着、マスクして消毒し入室。
         酸素マスク心電図その他色々と管を身体につけている。
         「だいじょうぶ」と声を掛けると、かすれた小さな声で「ただいま」と。
         「石が三つ、ウズラの卵くらい」君に「あげるわ」「痛い」と言う。
         大仕事頑張った本当によく頑張ったね」明日も来ます。

  手術前と後の記憶がどのようになっているのか、手術室より、出てきた最初の言葉を
 「ただいま」と言うことを妻に約束して、手術をする。
 
4) 遺言書
  何故か遺言書を書く。もしものことを想定して。胆石位でと笑う人もいるが、初めての
 経験であり、そしてもう二度と経験したくないこと。
  遺言書は、妻に対するラブレターである。自分にもしものことがあれば、後に残る妻の
 幸せを願うこころでもある。
  以下退院後の想い(20年前)
 今までの生活に対するお礼と感謝の念を込めて書いたつもりであるが、
 病床で書いたもの今見ると恥ずかしいような文面である。でも、
 その時は本気で書いた遺言書である。私が、書いた最高のラブレターと言える。
 

   終りに
   20年前の入院時に暇に任せて考えたことであるが、今でもその考えをもち続けて日々
 を過ごしている。夫婦二人の関係は変わらない。年はお互いに20年とり、高齢期にはいり、
 メモ以上の深みが出てきたような気がする。
  最終章までメモのように生きてゆきたいものだ。これからが、大切な人生の締めくくり。

                    シニア ライフ アドバイザー 岡島 貞雄

                            


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