写本の画像を得る
概説
ルネッサンスになって、活版印刷が普及するまでは、書物は筆写されるものでした。羊の皮を薄くのばした羊皮紙と呼ばれる紙に、写字生と呼ばれる人々が作
品を一文字ずつ書き写したのです。恐ろしいほどの手間ですから、作られた書物そのものの数が少なかった上に、長年の間に消失してしまった書物も少なくあり
ません。そのようなわけで、中世においても写本は高価なものだったわけですが、現在となっては、貴重な文化遺産です。貸し出してもらえることはまずないで
しょう。ですから、多くの研究者が接するのは写本の実物ではなく、それらの写真です。マイクロフィルムといって、写本を一頁ずつ、あるいは見開きで写真撮
影した、一つながりのフィルムをリールで巻き取ったものを、通常はマイクロフィルムリーダという専用の機械で読みます。これは恐ろしく巨大な装置で、冷蔵
庫ほどのかさはあるでしょう。個人では到底所有できないものです。
研究者が写本を読む場合、図書館や研究室に備え付けのマイクロフィルムリーダーを利用するか、あるいは、そのフィルムを印画紙に焼いた、プリント写真を
読むか、いずれかの方法をとったものでした。現在でも、これらの方法をとっている研究者も多いと思います。最近、もう一つの選択肢が加わりました。電子画
像です。いくつかの機関では、マイクロフィルムだけではなく、CD-Romを提供するようになっています。おそらく、今後はこれが主流になっていくでしょ
う。とはいえ、現段階では、全ての写本が電子画像になっているわけではないし、また、CD-Romを入手するのも、それほど簡単ではありません。そのよう
なわけで、マイクロフィルムを手に入れ、それを電子画像化するという、いわば亜流の選択肢が生じます。マイクロフィルムをリールにはめ込めば、後は自動的
に電子画像化してくれるような便利なマシンも、たぶん、存在するかと思います。しかし、そうした機器は高価で、多くの研究者は、最初から利用をあきらめな
ければなりません。以下で紹介するのは、自腹を切ったとしても、何とか我慢できるような出費で、写本を電子画像化する方法です。
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