2007年3月下旬

2007-03-16「タイムマシーン・ラブ」
さて、金曜である。
長い一週間だったな。
結局、葬儀の後1日休んだだけでがっつり働かさせてもらってますよ。
…あーシンド。
ここ何週か、咳が全然止まらない。
線香の煙でやられちゃったのかなと思いつつ、いつまでも止まらないのでさすがに咳止め薬を買って飲む。
でここ数日、聴き倒してるのが(はい、久々の音楽話っす)、流線型「TOKYO SNIPER」。
もう既に10回以上リピートしています。
素晴らしいアルバム。
全くノーマークだったんだけど、今読んでる文化デリック(川勝正幸+下井草秀)の「ポップカルチャー年鑑2007」で06年ベストアルバムに選ばれてて、聴いてみたらこれが見事にビンゴ!
さすが信頼する目利き(耳利き)が絶賛してるだけある。
70年代後半〜80年代のシティポップを見事に再現したサウンドと言葉。
帯びには「都会派に贈るアーバンでクリスタルなメロウ・グルーヴ」。
まさに都会派、まさにアーバン。
シティポップの愛あるパステーシュ。
とにかくこれ、まだまだ絶賛しちゃいます。
続きは後日。
でしばしパラレル進行、popholic版「お葬式」。
シーン2。(伊丹十三に捧ぐ)

荷物を車に積み込んで、僕も家に帰る。
長く緩やかな坂道。
なかなか青に変わらない信号をぬけて真っ直ぐに車を走らせる。
この一年、何往復したかな。
時には泣きながら、時には母と話ながら、通り抜けた道もこれで最後だな。
家に着くと、既に父は布団の上に寝かされていた。
葬儀社の人が手際よく白木の祭壇を組む。
ろうそくに灯がともり、線香をあげる。
1週間前はこの部屋で二人でテレビ見てた。
それから早速葬儀の打ち合わせ。
お寺さんの都合も聞きつつ、会場の空き具合を確認。
明日3月10日18時から通夜、翌11日14時葬儀で決定。
祭壇や会葬品をバタバタと一気に決めていく。
その間にも親戚達が続々駆けつけてくれる。
電話もひっきりなしだ。
とりあえず急ぐものは一通り決めて、次は会社関係に連絡。
父は高校卒業後、京都の繊維会社に就職。
真面目で誠実だった父は、それゆえに仕事人間でもあった。
確かに小さい頃、父に遊びに連れて行ってもらった思い出は少ない。
家での父はテレビ見てゴロ寝してるイメージ。
あの世代のお父さんはどこともにそうだったんじゃないかな。
父は仕事は出来たのだろう、同族会社の中で、唯一の外部役員にまで登りつめ65歳で定年になった後も相談役として会社に籍を置き給料を貰っていた。
それがいかに凄いことかは、僕もサラリーマンやってるからよくわかる。
なにせこっちは万年ヒラのボンクラ社員だから。
でも確かに会社でも頼りにされてきたんだろうな。
会社に電話して1時間も経たないうちに、社長さん筆頭に数名の方が父の顔を見に来てくれる。
さすがに驚いたな。
それからもかって父の部下だった方や同僚だった方が来てくれる。
その後も親戚、ご近所さんと続々。
母と二人で対応に追われバタバタ。
夕方、お寺さんがきてくれて枕教をあげてもらう。
それにしてもこんなに忙しいもんだとは思わなかった。
考えたら朝起きてすっ飛んできたから喪服も何も用意できてない。
落ち着いたところで一旦大津に戻る。
妻と娘には明日改めて来るように言い、僕は喪服に数珠に着替えをもってすぐにトンボ帰り。
夜遅く父のPCを調べてみる。
定年になってから日記をつけてるのは知ってたので探してみる。
マイドキュメントの中に数個のファイル。
本人はこうなることをわかってたんだろうな。
一つには自分自身の略歴がまとめられ、別の一つには預金や所有する株などが詳細にまとめられている。
その上、葬式の時に連絡すべきところや香典は辞退するようになどと葬式の段取りまで書かれている。
そして机の中には一冊のノート。
…なんだよ、こんなことまで書いてたのか。
そこには母、兄、僕、僕の妻、そして娘に宛てられたメッセージが記されていた。
感謝の言葉と家族仲良く暮らすようにとの言葉。
まったく。
僕には「お前は頑固で偏屈」だって。
その通りだけど。
「でも責任感とやさしさがある」。
それはあなたから僕が受け継いだものなんだ。
妻へは「頑固で偏屈な息子に仕えてくれてありがとう」だって。
「頑固で偏屈」ってそう何回も書かないでいいよ。
そして娘への言葉。
僕はほんとに親孝行なんて何もできなかったけど、たった一つ出来た親孝行がある。
父に孫をみせてやれたことだ。
娘と遊んでる時の父の顔、あんな嬉しそうな顔は見たことがなかった。
父は意識が薄らいでいた時でも娘の名前を聞くぱっと目を開いたんだと母が言う。
最愛の孫娘。
1月に高山に旅行に行った時のお土産。
娘が選んだ緑色の「さるぼぼ」ストラップは、今も父の指につけられている。
娘への言葉、最後はこう記されている。
「おじいちゃんが一番大好きなサオリちゃん」


2007-03-17「心ごころ」
8時起床。
食パンに昨日の残りのカレー、その上にチーズをたっぷりのせて焼く。
なかなか、イケルね。
で娘と朝から実家へ。
途中、父と最後に食べたロールケーキを買って。
葬儀後1週間、兄が居てくれたので事後処理随分助かった。
銀行の手続きやら何やらこれがなかなか一筋縄ではいかない。
印鑑証明とったり戸籍とったりで大変。
特に兄が香港在住なのでイチイチ面倒くさい。
銀行ごとに必要な書類が違ったりで結局1週間ではほとんど片付かず。
兄から引継ぎして書類に目を通す。
うー、こういうの苦手なんだよなー。
金の計算は全てCD換算で!というサブカル小僧ゆえに、お金の管理は自分のお小遣いで精一杯。
大体、自分の家についても、今いくら貯金があるか、通帳がどこにあるかすら知らないのだ。
ま、元銀行員の妻から一切教えてもらえないということでもあるのだが。
明日、兄、香港に帰るので皆でご飯。
母、相変わらず動きまくっているが一人になった時がちょっと心配。
とりあえず忌が明けたら、父がしきりに娘連れて行きたがってたこともあるし皆で香港旅行しようなどと話。
でまだ続く、個人的な記録。
popholic版「お葬式」、シーン3です。

深夜12時、兄が婚約者を伴い帰宅。
風呂に入って一段落した後、忙しい中駆けつけてくれた従兄弟や今日は泊り込んでくれる伯母と思い出話。
父も聞いててくれてるかな。
その夜は父を挟んで母と3人布団を並べる。
この家で過ごす最後の夜なんだな。
ずっと小さかった頃、日曜の朝起きると決まって父と母の寝室に行った。
いつもは朝早い両親も日曜は寝坊。
二人の布団にもぐりこむ。
父の布団は暖かくて独特の匂いがした。
それは「お父さんの匂い」だった。
今、娘が僕の布団に入って言う「父ちゃんの匂いがする」。
単なる加齢臭かもね。
でも嫌いじゃなかったな。
そして翌朝。
新聞に父の死亡記事が出てる。
もちろん地方紙だけど、思った以上に凄い人だったんだと改めて知る。
父が勤めた会社の会長(先代社長)がお見えになる。
父と母の仲人を勤めてくださった方で、父は生前、自分は会長についていくんだと母に語っていたそうだ。
会長さん自身も胃を摘出されていて、術後の父に様々なアドバイスや参考文献なんかを毎月毎月送ってくれていた。
国交回復前に中国に二人で何度も何度も出張したことなどを話して頂く。
そうだった。
父は昔、しょっちゅう中国に出張に行っていた。
お土産に鉛筆とか持って帰ってきてくれたっけ。
質の悪い鉛筆。
今でも持ってる。
長年、父の部下を勤めてくれていた方がゴルフの手袋(よく二人で行っていたらしい)と父への手紙を持って来てくれる。
手紙を読ませて頂く。
僕の知らない会社での父。
そこでの父も真面目で誠実で、みなに頼りにされていたことを知る。
愛情に溢れた手紙、胸が熱くなる。
昼過ぎ、葬儀社の人が来る。
手際よく父に着物を着せ草鞋を履かせる葬儀社の人。
皆で棺に父を入れる。
愛用していた帽子、数枚の写真、先週この場所でじっと眺めていた娘の絵の白黒コピー-今朝、娘は一生懸命色鉛筆で着色した-などを棺に納める。
さぁ出発だ。
毎朝あなたが通った道だ。
駅前の葬儀会場に向かう。
会場に着いて早速、通夜の段取りを打ち合わせ。
花やお供えが続々届く。
外は寒く、雨が降り始めた。
祭壇に飾られた遺影。
いい写真だな。
父らしい穏やかな微笑を浮かべた写真。
が感慨にふけっている余裕はない。
すでに多くの人たちが来てくれている。
ありがたいことだ。
事前に決めておいた親族席の席順に親戚達を座らせ、バタバタと通夜が始まる。
兄とともに立礼。
ほんとに多くの人。
焼香の列がずっと連なっている。
父の為に涙を流してくれている多くの人がいる。
父にとって父の人生はどんなものだったろう。
満足いくものだったかい?
僕にはわからないけど、こうしてあなたのことを想い、さよならを言いに来てくれた人がこんなにもいる。
僕は息子として、あなたの人生を誇らしく思うよ。


2007-03-18「休日」
日曜。
さすがに今日は寝坊。
ここんとこ、ゆっくり休んでなかったから今日は完全休暇を決め込む。
朝のうちに、駅まで散歩がてら切符を買いに行って、後はソファでネコといっしょにゴロゴロ。
HDDチェックは「アメトーーク」(サラサラおかっぱ芸人+ワンポイント芸人)、「リンカーン」。いきなりお笑い番組ばかりかよっ!
昼飯食って、昼寝してまたHDDチェック。
内村光良監督「ピーナッツ」観る。
教科書通りキッチリ作ってある映画。
奇をてらったとこがなく好感は持てる。
がその反面、可もなく不可もなくって感もあるのだが。
三村、大竹、ゴルゴにレッド、そしてふかわ、それぞれの好演を引き出したのは内村監督ならでは。
芸人仲間への愛ある視線、優し過ぎるとも思うがそこが持ち味だろう。
そんな訳で今日は一休み。
早く寝よう。


2007-03-19「Frou Frou」
早く寝たのに、月曜は眠いもんだ。
午前中、黙々と仕事を片付け、午後は会議の為、神戸まで。
快速電車でのんびり寝ていく。
神戸に着いて遅いランチをとり長い会議。
うーまだ眠い。
なんとかこなして帰り道。
通りがかった映画館で山下敦弘監督の新作「松ヶ根乱射事件」やってる。
おっ、上映時間10分前。
行っちゃう?
これも何かの縁、映画館に突入。
時は90年代の終わり、何もない田舎町で暮らす警察官の光太郎、双子の兄・光はいつもニヤニヤしてる典型的なダメ男。
そんな町に、訳有り丸出しな男と女がやってきて…というお話。
わー、めちゃめちゃおもろかった!
不器用にも程があるダメ人間達が繰り広げるどうしようもない悲劇、なのに笑うしかない喜劇。
傑作「リンダリンダリンダ」はゆる〜い青春物語だったが、こちらはゆる〜い独特の「間」で描かれる残酷物語。
人間の情けなさ、ダメさ具合がてんこ盛り。
悲劇が悲劇を呼びどこまでもずるずると落ちていく。
そこから抜け出すんじゃなくて、そこに浸かりきっちゃうことでなんとなーく、乗り切っちゃう感じがまたダメでいいなぁ。
それにしても山下監督の「間」好きだなぁ。
受けの演技から一転して静かな狂気を見せつける主人公・光太郎を演じた新井浩文、最高に情けなくてダメな双子の兄を最高に情けなくダメに演じた山中崇ともに素晴らしいが、何と言っても訳有りカップル、木村祐一と川越美和が凄い。
木村祐一の不気味でどこか笑える圧倒的な存在感は、はっきり言って助演男優賞もの。
そしていきなり全裸で登場し、木村祐一とタメをはる不気味なコメディエンヌっぷりを見せた川越美和!
この化けっぷりには驚いた。
そうそうまたまた光石研が出てた。
ほんとにこの人、観る映画の9割に出てるな。
最多助演賞を贈りたい。
でまた電車に揺られて帰宅。
うーちょっと酔ったか、それとも風邪か。
今日は風邪薬飲んで寝ます。


2007-03-20「ムーンライダーズの夜」
今日はフルスピードで仕事片付けさっさと退社。
京都みなみ会館まで映画観にいく。
白井康彦監督「MOONRIDERS THE MOVIE PASSION MANIACS」。
京都ではたった4回だけの上映。
これ見逃しちゃうともう2度とスクリーンで見ることは出来ないだろうと急いで観にいく。
サントラは去年から聞き込んでいたが、映画館で大音量で聞くムーンライダーズ、やっぱかっこいい!
映画は野音での30周年ライブの模様、メンバーを始め、細野晴臣、高橋幸宏、PANTAといったミュージシャン仲間や歴代のレコード会社ディレクターのインタビューで構成されている。
インサートされる羽田の風景。
工場の煙突、電線の上に飛んでいく飛行機、それはまさにムーンライダーズのイメージだ。
ライブはカーネーション直枝・太田両氏を迎えた「ボクハナク」やあがた森魚が熱唱する「大寒町」など現場に行けなかったものには涙モノのシーンが満載。
また白井良明による「ギタギドラ」の演奏や岡田徹が語る「9月の海はクラゲの海」の「ドーン」という音の秘密などもおもしろい。
ムーンライダーズの音の歴史を辿りながら、図らずも音楽ビジネス、音楽業界における、まさに「マニアの受難」が浮き彫りにされる。
ムーンライダーズはいかにして「ヒット」を生み出さなかったのか?この逆説的な伝説が、ムーンライダーズという怪物の肝である。
東芝時代のディレクターをして「最大のチャンスを逃しましたね」と言わしめる、ムーンライダーズの東京シャイネスな魂、譲れないマニアの一分。
やっぱライダーズ好きだわ。
映画見終わって、京都駅まで一人歩く。
「スカンピン」口ずさみながら。
でここからはpopholic版「お葬式」最終回。
永らくお付き合い頂きありがとう。
ご覧のように僕はもう大丈夫。
っつーか、すでに遊びすぎだろっ!

バタバタとお通夜が終わり、控え室で残ってくれた親戚達と軽く食事。
父方の親戚達も母方の親戚達も様々な面で父を頼りにしてきた部分があった。
客観的に観てそう思う。
父は家庭的という訳ではなかったし、特別情に厚い人情家でもなかったが、誠実に人と向き合うことができる人だった。
それは母も同様で、お互い末っ子同士でありながら結局は親戚付き合いも含め、両家の面倒も主として見てきた。
様々な要因があって、そうならざる得なかったとも言えるが、彼らはそれをごく当たり前のこととして受け止め、ごく自然な形で実行していた。
僕は一度たりとも二人が文句を言っているのを聞いたことがない。
それが簡単にできることではないことを、僕は社会に出て、自分の家庭を持って、はじめて知った。
親戚達が一人一人帰っていく。
その夜は母と兄と3人で残る。
いやーそれにしてもちゃんとお風呂までついてんだな、葬儀場。
ちょっとした旅館並みの設備。
父の前で家族3人で話。
1時間、2時間、結局夜中まで。
布団を並べてからも話。
これまでのこと、これからのこと。
当たり前のことだけど、あぁやっぱ家族なんだなと思う。
通夜の後、翌日の打ち合わせを葬儀社の人を交えてやったのだが、打ち合わせ終わったときに、葬儀社の人が「いやぁチームワークいいですねぇ」と言った。
変な話だけど、僕もそう思った。
そしてこのチームの監督をずっと勤めていたのは間違いなく父だった。
目が覚めると母はもういない。
父が好きだったおはぎを作りに帰ったのだ。
僕も髭を剃りに一旦帰る。
今日は日曜の朝だ。
ちょうど一週間前の日曜の朝も、こうしてこの町を散歩した。
シャツ一枚で大丈夫なぐらい暖かだったが、今日は随分寒い。
強い風が吹いている。
さぁ今日はお葬式だ。
しっかりせねば。
コンビニでアリナミンを買ってグイッと一息。
午後2時。
葬儀が始まる。
昨日に続き今日も多くの人が来てくれる。
メロウないい声で、お経が唱えられる。
そしてお別れの時間だ。
棺の中の父は、遺影から比べると随分やせている。
この1年、苦しかっただろう。
ゆっくりと身体が動かなくなっていく。
病院のベッドの上で、哲学者のような目でカーテンの皺を見つめていた父。
その先に、何を見ていたのだろうか。
苦しかっただろう、痛かっただろう、しんどかっただろう。
本当にお疲れ様でした。
花に囲まれた父の姿を、こんなに早く見ることになるとは思ってなかった。
それでも、これで良かったんだと僕は思う。
彼はきっとみんなにとって最良のタイミングで逝ったんだと思う。
父はそういう人なのだ。
わかってる。
だから安心して欲しい。
ほら、兄貴の堂々とした喪主の挨拶を聞いたろう。
安心して欲しい。
棺が閉じられ、素早くエレベーターまで運ばれる。
その後ろを位牌を持った兄、遺影を持った母、そしてお骨箱を持った僕が続く。
多くの人が見送ってくれる中、父を乗せた霊柩車が走り出す。
火葬場でもう一度お別れをする。
これが父の肉体を見る最後だ。
兄が嗚咽をあげ、泣き崩れる。
葬儀の間、喪主としての責任を果たし、決して涙を見せなった兄。
多少頑固ではあったが、父は口うるさくはなかった。
学生の頃から僕は父に何か言われるようなことはほとんどなかった。
僕もわりとなんでも自分で決めて、相談することもしなかったし、そんな僕に父もとやかく言うことはなかった。
男の子は男親との確執とかイロイロあるもんなんだろうけど、その点僕は割りと早くから客観的に父を見ていた。
結婚を決めて、家を出たのが24歳の時。
その時から逆に父との距離がぐっと縮まったような気がする。
改めて父の人間性を知り、素直に尊敬できるようになったのだ。
で兄は僕よりやんちゃだったし、心配かけるようなことも僕よりずっとあった(いや、兄からするとお前の方がって言うかもしれないが)。
でも僕にはない、父との強い結びつきが兄にはあったと思う。
特にこの一年、遠くに離れているだけに心配も大きかったろう。
毎日のように国際電話を母にかけていた兄の優しさを僕も知っている。
父の顔を見るのもこれで最後になる。
僕はずっと小さかった頃、いつも父の耳たぶを触って寝ていたんだと何度となく母に聞かされていた。
さようなら。
そっと父の耳たぶに触れる。
ありがとう。
僕はあまりツいてる方じゃない。
いつも貧乏くじばっか引いちゃってるなんて思うこともある。
でも最高に運が良かったことがある。
それはあなたの息子として生まれてきたことだ。
今、心からそう思う。
ありがとう。
いつかどこかで、また会えたら嬉しいな。
伊丹十三監督の「お葬式」のラストは、たしか火葬場の煙突から青空に煙が昇っていくカットだったっけ。
残念ながらそんなシーンは用意されていないけど、これでpopholic版「お葬式」は終わり。
もちろんこの後も人生は続く。
むしろ葬式後にすべき様々な届出やら銀行での手続きのドタバタを書くほうがHOW TOモノとしても重宝するかもしれない。
でも、まぁ、こうして父のことを書くことが僕にできる唯一のことのような気がして。
実に全く、個人的な文章にお付き合い頂いてありがとうございます。
変な言い方だけど、清々しい気持ちでいます。
父の人生に関わってくれた全ての人に、僕の人生に関わってくれた全ての人に、今はありがとうと素直に言いたい。
とかなんとか。
明日になったら文句タラタラかもしれないけどね。
ま、とにかくLIFE GOES ONです。


2007-03-21「カミナリ食堂」
休日。
朝から実家へ。
さすがに今日は道が混んでるな。
車中のBGMは加藤千晶「おせっかいカレンダー」。
ここで宣伝。
明日3/22(木)京都・拾得で「ふちがみとふなとと加藤千晶」開催!
久々の関西ライブになる加藤千晶さん。
そりゃ楽しみだって!
一人でも多くの人にお聴き頂きたい。
もちろん私も仕事そっちのけ、終業時間と同時に会社飛び出し駆けつけるつもりっす。
で翌23日(金)は大阪・marthaでもライブ。
おっかけしたいとこだが、東京出張。
marthaもいい雰囲気だし、絶対加藤さんの音楽と合うはず。
お近くの方は是非!
関西私設応援団からのお知らせでした。
で1日実家で過ごす。
事後処理は書類が揃わずなかなかはかどらない。
銀行、めんどくせーよ。
母は相変わらず動き回ってる。
ほんと、休むことを知らない。
ま、あえてそうしてるんだろうなってこともわかる。
みんなでご飯食べる。
一人の食事は寂しいだろうしね。
食事って家族が家族である基本なんだなって思う。


2007-03-22「マカロニスコープ」
そんな訳で、忙しい年度末にも関わらず5時半ダッシュで拾得へ。
駅から遠いよ、拾得。
「ふちがみとふなとと加藤千晶」@拾得。
実に2年ぶりの加藤千晶さん関西ライブ。
これ観とかないと次いつ観れるかわからんからね。
でもう、チャーミングにも程がある加藤さんの歌声にクラクラっときたね。
そして初体験の「ふちがみとふなと」に大感激。
ということで明日、出張で早起きしなきゃならないので詳しくは後日!


2007-03-24「マニアの受難」
そんな訳で昨日は東京出張、深夜バスで今朝帰宅。
それから今日も1日実家で諸々、夜になってなぜか強力な花粉症の症状が出て、顔が変形するぐらい目が腫れ、鼻は完全密封状態でドえらいことになっとります。
加藤千晶さんの楽しかったライブ話、東京での寄席話などネタはあるのですが、今日はひとまず寝ます。
っつーか寝るのもキツイんですが…。
遊びすぎて罰が当ったのか。
苦しいよー。


2007-03-25「歌う人」
朝起きると、顔が朝潮太郎みたい(例えが古いね、どうも)になってた。
鼻こそ通ったものの、目の腫れはひかず。
娘は春休み突入で昨日からおばあちゃんのとこにお泊り。
母もこれで少しは気が紛れるだろう。
頼むよ、娘。
で今日は朝のうち買い物。
薬局で花粉症の薬をイロイロ買っておく。
午後からはテレビひたすら見てHDDの整理(録画しすぎてすぐいっぱいになっちゃう)。
とおとなしく過ごす。
で遅くなりましたが、先日23日の「ふちがみとふなとと加藤千晶」@拾得のレポートです。
会社をダッシュで退社して電車乗り継ぎ拾得へ。
うー駅から遠いぜ。
で拾得へ到着。
定席にやはりMr.一番乗りことけすいけさんが、その横にはめんちかつさんが。
いやいやどうもと席につく。
梅酒のソーダ割り&煮干で開演を待ちつつ、「西村哲也さん来やはるかもねぇ」などと話してると、ホントに西村さん登場。
どうもどうもと合い席。
来るべき新作は4/8の拾得ライブに向け、鋭意CDセット詰め中とのこと。
楽しみですぜ。
その他、メトロトロン話などしつつ。
しかし西村哲也さんの横で、加藤千晶さんのライブ観ることになるとは、メトロトロンレコードの追っかけしてた学生時代の俺に教えてやりたいよ。
で加藤千晶さん登場!
前回の拾得ライブはちょうど2年前。
アルバム「おせっかいカレンダー」(名盤!)発売後初関西ということでどれだけ楽しみにしていたことか。
ギターに鳥羽修さん、パーカッションに高橋結子さんという前回と同様のトリオ編成。
加藤さんの歌とキーボードは、コロコロと笑うように響いたかと思うと、ふとメランコリックな一面を見せる瞬間があって、なんというか女の子らしいキュートさがある。
とてもいい表情をした音楽なのだ。
フリーキーでありながらチャーミングな音。
CDも相当良く出来てるが、こうしてライブを観ると、CDには収まりきらない彼女の魅力がまだまだあるのだなと思う。
五線譜からもはみ出してしまうラディカルな無邪気さ。
そうだ、彼女の音楽って絵本みたいだな。
理屈を越えて届く力がある。
ライブは「おせっかいカレンダー」からの曲を中心に旧曲、新曲織り交ぜて。
鳥羽さんのギターがまたいい音してんだ。
コクがあって加藤さんの音楽を下から支えるような。
で高橋さんのパーカッションは変幻自在。
フリーキーでチャーミングな音楽にさらに彩りを添える。
実に楽しいな。
グダグダなMCもまた可笑しくっていい。
それにしても彼女の歌声はチャーミングである。
いやチャーミングにも程があるだろうってぐらい。
歌姫なんてものでもないし、天使の歌声なんてものでもない。
もっとありのままで素直な声。
無添加って言っていいような。
特別個性的ではないのだけれど、彼女のような声を他に知らない。
声がポンと投げ出された瞬間、すっと入ってくる。
不純物がないから、おいしい水を飲んだときのような清々しい心地よさだけが残る。
ずっと聴いててたいな。
で続いては「ふちがみとふなと」の登場。
噂には聞いてたし、大体ライブハウスのスケジュール見るとどっかしらにその名前がのっている。
いつか出会うことになると思ってたが、今日がその日。
で驚いた。
驚愕した。
凄い!
真にオリジナルな音楽とはこういうことを言う。
渕上さんの声は男の子のようでもあり、女の人のようでもあり、なんだかとにかく凄い瞬発力がある。
船戸さんのウッドベース!スゲー!としか言いようがない。
歌とベースだけ。
でもこれ以上、何も入れる必要がない。
こんなにも豊かな音楽がここにある。
素晴らしい。
正直、泣きそうになった。
そして最後は「ふちがみとふなとと加藤千晶」だ。
みな揃って歌われる「ホットケーキはすてき」の楽しかったこと!
加藤さんと渕上さんの声は対照的だが、どちらも凄く魅力があるし、相性がいい。
もうね、この二人常田富士男と市原悦子に替わって「まんが日本昔ばなし」やってもらいたい。
アンコールは三木鶏郎の「僕は特急の機関士で」。
今日のライブを締めくくるのに相応しい曲。
音楽の楽しさがここにはある。
「誰が音楽をつまらなくしたか」ここのところ考えていたが、つまらなくない音楽はある。
音楽の楽しさ、生命力に満ちた音楽が、間違いなくここにある。
諦めずにそれを伝えていくことが音楽を愛するものの使命だ。
でライブ終演後、ちょこっと加藤さんにご挨拶。
イロイロ話たいことはあったが、チャーミングにも程がある加藤さんの前で緊張して目も合わせられなかったよ。
中学生か、俺。
そしてけすいけさんとめんちかつさんといっしょに、どうすればこういう魅力的な音楽の裾野を広げていけるかをグダグダ話つつ帰る。
僕らに出来ることって何だろなぁ。
こうして書くことの先をそろそろ考えたいな。
でここで宣伝。
西村哲也「ハンナと怪物達」レコ発記念ライブが4/8(日)拾得にて行われます。
ゲストにはついに大久保由希さん(レムスイム)が登場。
実は前のライブの後、西村さんに「誰と演ったらいい?」と聞かれ「大久保由希さん!」と即答。
それがついに実現となったのだ。
そんな訳でこれは必見のライブ。
関西の音楽ファン集合のこと!


2007-03-26「家路」
先週遊びすぎたので、今日は黙々と仕事。
あー耐え切れないや。
で遡って金曜の話を。
久々の東京出張。
今回は若干朝早くて6時過ぎに家出る。
快適な新幹線。
居眠ってるうちに東京着。
そこから6時間ばかり缶詰になって講演やらなにやら。
ぐったり力尽きそうなとこで終了。
地下鉄に乗って新宿へ。
東京出張のお楽しみ、末廣亭へ一目散。
相変わらず楽しいな寄席は。
今日は晴乃ピーチク師匠に三笑亭笑三師匠、そして我等が昔々亭桃太郎師匠が出演。
嬉しい。
楽しい。
大いに笑う。
そしてまた一人爆笑王を発見。
三遊亭笑遊師匠がそう。
人懐っこすぎるオモロ顔から繰り出される、爆笑トーク。
なんとも愉快なオーバーアクションに大爆笑。
いやぁまだまだ発見があるなぁ。
でやはり昔々亭桃太郎師匠は凄かった!
演目は「金満家族」。
CDで何度も聞き返してる大好きな噺。
ポーカーフェイスと朴訥とした喋りで、徹底的にナンセンスで乾いた笑いがこれでもかと繰り出される。
小さな笑いが次々生まれ、最後にはとんでもない笑いのグルーヴが生まれる。
場内爆笑の渦!
参りましたよ。
で新宿から東京駅に戻り、深夜バスで帰宅。
しかしなかなか俺もタフだな。
翌日の朝7時過ぎには家で朝飯食ってんだから。
ま、その晩ぶっ倒れることになるのだが…。


2007-03-27「知らない顔」
それにしてもコロッケの物真似、20年以上観てるのにまだ笑っちゃうなぁ。
「面白い顔」には勝てないねぇ。
つーか、コロッケの顔は世界最強なんじゃないか。
「森進一」の顔をしたコロッケを見て、笑わない奴が人類の中にいるとはとても思えない。
BSでやったムーンライダーズの特集。
録画しつつちょこっと観る。
うわぁスゲー音。
週末の楽しみにとっとこう。
DVDボックスもまだ封開けてないし。
で今週はド仕事週間。
ま、年度末だしね。
はぁ〜っ


2007-03-28「Urban Cowboy」
にゃー。
月末、年度末でそりゃもう…にゃーという状態。
ま、先週遊びすぎたね。
それにしても未だ咳が止まらない。
どーなってんだ。
で今日はなぜか無性に聴きたくなって白井良明(from ムーンライダーズ!)の88年ソロ作「City of Love」聴く。
昨日から頭の中にずっと一曲目のイントロ、伸びやかなギターの音が鳴り続けてて。
88年ってもう19年も前かよっ!これも高校時代よく聴いたなぁ。
今聞くと多少音の古さはあるが、それ以上に名曲揃いだな。
原色のポップサウンド、心地よい懐かしさだ。
あー、今日はもう疲れた。
音楽だけが微笑んでくれてるぜ。


2007-03-29「レインボー・シティ・ライン」
今日も働いたよ!
で今日聴いてたのは、流線形「TOKYO SNIPER」。
前にもチラと紹介したんですが、これ名盤!
「流線形」とはクニモンド瀧口氏の一人ユニットで、ここではもう「シティポップ」ど直球なサウンドが聴ける。
70年代後半〜80年代の、あのメロウでグルーヴィーな音を忠実に再現。
バッキングはティンパンアレーか!ってなそりゃもうカッコイイんだ。
で全編のヴォーカルを勤めるのは「江口ニカ」となってるのだが、実はその正体は「一十三十一」嬢!
大貫妙子のしなやかさと、吉田美奈子のファンクネスを兼ね備えた素晴らしいヴォーカルを聴かせてくれるのだ。
とにかく気持ちいい。
既に何十回とリピートしてるが恐るべき耐久性。
全く聞き飽きず。
また「ハイウェイ」「ダンスホール」「カセット」「ネオンライト」などの単語が散らばる歌詞もまた堂々の「シティポップ」ぶり。
めちゃめちゃお勧めしまっす!


2007-03-30「薄紫色の彼方」
長い一週間だったが、とりあえず金曜。
黙々と仕事して、鍵閉めて会社出る。
車高を下げたいかにもな車が電柱にぶつかってる。
こんな時、大丈夫かな?とは思わない。
「バカがっ」とちょっといい気分になったり。
閉店間際のパルコに滑り込んで、タワーで長見順「クーチーク−」、ムーンライダーズのDVD「LIVE9212」を。
紀伊国屋で「TV Bros」誌と吉田豪「元アイドル2」購入。
サブカル小僧丸出しの買い物だな。
ぼんやり歩く帰り道。
今日は空気がやけに澄んでいる。
藍色の空にジェットが3機。


2007-03-31「スパークリング・ジェントルマン」
妻はバイト、娘は義母、義父と遊びに、で僕は実家へ。
母と今週届いた書類チェックし、署名したり捺印したりとなかなか片付かないもんだなー。
昼ごはんいっしょに食べて、近所に住む伯父もいっしょに買い物行って、おやつにロールケーキ食ったりして過ごし、夕方には帰宅。
で先日NHK-BSで放送した「ムーンライダーズ30年のサバイバル」見る。
いい!素晴らしい!
ライブ&トーク、6人のみでがっつり。
愛のある構成、演出。
理想的な番組だな、これは。
マニアも納得の内容だが、これでムーンライダーズ初体験ってのもいいんじゃないか。
ムーンライダーズの歴史をコンパクトにまとめつつ、しっかり音楽で聴かせていく。
メンバーそれぞれのヴォーカル曲(くじらさんが朗々と歌い上げる「帰還」には痺れたなぁ)、アヴァンギャルドからメロウな名曲まで、ムーンライダーズの懐の深さがわかる心憎い選曲。
中学生に聞かせたいなぁ。
ラストで上着をカメラに放り投げる鈴木慶一。
この感じ。
16歳の時、「ライブジャック」という番組で「動く」ムーンライダーズを初めて観た。
「何だ?この、ユーウツは!」で新聞を放り投げる鈴木慶一に「カックイー」なんて思ったよ。
それから20年だからねぇ。
衝動とユーモア。
これだ。


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引き続きお楽しみ下さい。