私は、天童よしみと河内家菊水丸をま近に見たことがある。
天童よしみは、小学生の頃だ。私の住んでいた市は、市というよりも村の寄せ集めだった
近隣の市も、市というより同じようなものだった
夏、といえば盆踊りだった。大昔は、各村で勝手に盆踊りをやっていたが、
音頭取り(河内音頭や江州音頭を歌う歌手のこと)も少なくなり、掛け持ちするようになり、
日程的も調整がつかなくなり、町内会の世話役が集まり、
日程を調整し、重複しないようになった。
プロの音頭取りは、夏が稼ぎどきで、夏以外はアマチュアの弟子を取り、生計を立てていた。
その弟子は、理髪店の店主だったり、八百屋のオヤジだったりした。
盆踊りになると、プロも歌うが、合間に弟子の、理髪店の店主や、八百屋のオヤジが
歌うのだった。
大阪の八尾市に歌の上手い、天才少女がいるという噂が流れた。
それが天童よしみだった。「珍島物語」で最近ブレイクした演歌歌手だ。
近所に盆踊りの大好きなおばちゃんがいて、近隣の町の盆踊りには、必ず行っていた。
天童よしみは、盆踊りの合間に、都はるみや美空ひばりの歌など唄い大喝采だったのだ。
そんな噂話を、近所のおばちゃんは、母親に話をしていた。
その天童よしみが、私の町の盆踊りにやってきた。背の低い、小太りの少女だった。
噂どうり唄が上手で、噂どうりブスだった。回りの人は盛んに誉めていた。
でも、ほとんどの人が「あれで、もうちょっと別嬪(美人の意味)やったらな」
と口々に言っていた。 (べっぴん)
「しゃあけど(それでも)レコード出すらしいで」と言っていた。
出したレコードは、アニメ「いなかっぺ大将」の主題歌だった。
河内家菊水丸にあったのは、私が講師をしているときだった。
夏休みに、校区内で生徒が集まるような所を巡回するのだった。
(生徒も解っているので教師が巡回するような所にはいない)
最後に校区内にある、大きな公園に行った。
そこで、菊水丸が太鼓、電源のない、エレキギターの3人で河内音頭の練習をしていたのだった。
その頃、村から町へ転換していたので盆踊りをする町内会も少なく、生活は苦しかったと思う。
練習をするスタジオさえ借りるお金を惜しんだんだろう。
時事ネタを河内音頭の節で歌うのが当たり、現在は結構売れている。