献血


私が、初めて献血をしたのが高2の時だった。
同じ、ラグビー部の父親が、手術をすることになり、献血したのだった。
その手術に必要な血液は、保存した血液は使うことができず、鮮血が必要なのだった。
昼休みに部員全員に、集合がかかった。
まず、父親と同じ血液型でないといけないので、A型以外は除外された。
次に、化膿しているもの、1週間以内に薬を服用したものも除外された。
私を含め、7〜8名の部員が残った。
監督に、献血を頼まれ全員承諾した。
放課後、練習免除になった。献血者は指定の病院まで行き、献血をした。
練習を休めるのが嬉しくて、私達は手術をする家族のことなども考えず、病院に行った。
その後、献血者に監督を通じて数千円分の図書券が配られた。

2回目は、大学4年の時だった。
午後からの、英語の授業を受けようと、教室のある建物に行けば、献血車が来ていて
大学生を献血に誘っていたのだった。
私は、本当にふらふらと献血車に入って行き、献血をしたのだった。
看護婦が、私の体付きを見て、「400CC大丈夫ですよ」と言い、400CC採血
された。
私は、献血が終わり、缶ジュースを2本もらい教室へ行った。
英語の講師は、アルバイト講師で、京都大学の大学院を出て、研究室にいたと思う。
年は、27〜8で若かったために学生とも親しくなり友達みたいな感覚だった。
その授業は、1年生の授業で、単位を落としていた私は、1年の授業を受けていたのだ
そんな、4年生が10名ほどクラスにいた。
最後尾が4年生の指定席だった。
私は、90分授業を受けるのがおっくうになり、献血カードを手に持ち、講師の前に行った。

「先生、さっき下で献血をして気分が悪くなりました帰らさせてください。」
「そうか、仕方ないな、帰ってもいいわ」
「ところで、先生公欠にしてほしいんです。」
「それは、できん」
「先生、僕は善意で献血したのです。僕の献血のおかげで僕の知らない人の命が助かる
 のです。この善意でした献血が、私の不利益になるようだったら、ここにいる学生は
 誰も、献血しなくなります。善意でした献血で気分が悪くなり公欠が認められないと
 なると世の中から、自分だけがよければそれでよい、と言った風潮がはびこります。
 ですから、公欠を認めてください。」
 そう言って私はふりかえり、学生に同意を求めた。
 1年生は黙ったままだったが、4年生は「そうや、そうや、先生帰したれ」と
 援護射撃のことばが出た。
「先生は、笑いながら解った、公欠にしたる」と言って出席に丸を付けてくれた。
私は、4年生の1団に手を振り教室を出た。
3回目は、5〜6年前だった。
会社から、営業に出よう最寄りの駅に行ったとき、その駅前のターミナルに献血車が来ていた。
その献血車の横に大きな文字で「11歳の少女が、手術のために輸血を待っています。
10名分のA型の血液が足りません!!」年配の男がハンドマイクを持って懸命に通行人に
呼び掛けていた。
私は、数年前に見たテレビドラマを思い出した。

ある男が、やむにやまれぬ事情で銀行強盗をし、銀行に立てこもったのだ。
同じ頃、少女が交通事故に遭い病院に運ばれる。
少女の血液型はRHマイナスで。特殊な血液だった。
偶然に銀行強盗の血液型も、RHマイナスで同じ型だった。
主役の刑事は、銀行強盗に呼び掛けるが犯人は応じない。
時間が迫ってくる。少女の命は風前の燈だ。
警察との銃撃戦が始まり撃たれた犯人。駆け寄る刑事。犯人は苦しい息の下から・・・
「俺の血を少女に・・・・」都合よく看護婦と医者があらわれ、死にかけている犯人から採血。
犯人は、採血終了後満足な顔をして死んだ。
主役の刑事は、覆面パトカーで病院に急行少女は一命を取り留めた。

私は、ふらふらと献血車に入って行った。
またもや、400CCを採血され、「これであと8人か」と思いながら営業に出掛けた。
夕方、会社に帰るために駅についた私は、目を疑った。あれから数時間が経っていた。
献血車がまだいて、年配の男がハンドマイクで「11歳の少女・あと10名ぶん・・足りません」
その後2度と献血はしなくなった。