女優


私の中学時代の友人に、ロックミュージシャンを志していたKがいた。
Kは、中学3年の時に近所のお兄さんに、エレキギターを貰い、手ほどきを受けたのが始まりだった。
そのギターは、相当な年代ものでKは、すぐに飽き、親に高価なエレキギターを買ってもらった。
Kは、学校にまでギターを持ち込みバンド仲間を募った。
放課後、音楽室で、「ベンチャーズ」のダイヤモンドヘッドやパイプラインの曲が流れてくるよう
なり、文化祭で演奏すると練習にも熱が入りちょっとしたブームになった。
中学卒業後、Kと再会したのは大学の寮に入寮する、少し前の自動車教習所であった。
Kは、その後もバンド活動を続けており、私には、訳の解らないロッカーに変身していた。
私が大学卒業後、講師の職を求めて、アルバイトをしているときにKは、ハーフの美人モデルと
同棲していた。相変わらず、食えないロッカーで生活は苦しく彼女の稼ぎが生活を支えていた。
私のアルバイト先を紹介し、何回か同じアルバイトをした事もあった。
彼女は、テレビのカバーガールや、モデルでも結構有名な存在で、関西出身のミュージシャンとも
交遊関係があり、えっーーて言うほどの芸能人とも交遊があった。
色々、芸能界裏話も聞いたが、あまりにもヤバイので書けない。
ある日、私はKのマンションへ遊びに行った時のことだ。
彼女の友人の女性が、2人遊びにきていた。
1人は、目の腫れぼったい、小柄な女性だった。もう一人はタロット占いの大好きな女性で自然と
オカルトな話題になっていった。
私は、よく金縛りにあっていたのでそのことを話すと、タロットの女性はこう説明した。
「精霊があなたの体の中で遊んでいるのよ」なんとロマンチックではないか?
私は、「それでも、そんなんかなわん」と言うと、その彼女は「遊ばないようにしてあげる。」
と言って、窓を少し空け、私の背に回り込み両肩を押さえ、膝で私の背中を押した。
おいおい、マッサージじゃないのか?と私は思ったが、されるがままになっていた。
そうすると、目の腫れぼったい小柄な女性が不意に顔を窓に向け「あっ出ていった」と呟いた。
私は、苦笑いすると、Kもモデルの彼女も悪戯っぽく笑った。
その後、色々話をしていて、2の女性の素性が少しずつ解ってきた。
タロット好きの女性は、既婚者で旦那さんは、遠くに勤めていて月に1度しか会えないそうだった。
職業は、「ヒットマン」だった。
小柄な女性は、芸能界にデビュー願望があり、準備しているとの事だった。
私は、外交辞令にしても「美人」「かわいい」から程遠い小柄な、目の腫れぼったい彼女が芸能界
向きとは思わなかった。
夜も遅くなり、帰ることになった。
彼女たちは、電車で来ており終電もなくなっていたので、私の乗ってきた車で送ることになった。
30分も行けば着ける距離だった。

その後しばらくして、Kのマンションに遊びにいった時に、不意にKがあの夜の事を言い出した。
「2人のこと覚えてる?」
「ああ、タロット好きの姉ちゃんと、目の腫れぼったい姉ちゃんの事やろ」
「うん、あの目の腫れぼったいほう最近テレビに出ているやろ」
「えっーーウソーー、全然知らんわ」
「なんでーー、芸名 Mって言うねんけど」
「えっーーーM!!???全然顔違うやん」K、もモデルの彼女も笑っている。「ホンマ?」
「それが芸能界やねん」
女優Mは、セクシー女優で話題になりかけていた。現在もドラマに出ている。
恐るべし芸能界である。