女教授


私の通っていた大学に年配の女の教授がいた。
何の科目かは忘れてしまった。なぜならその先生は、講義を受けなくても単位を出して
くれると評判だった。
私達、学生には有り難い教授だった。
容姿が、映画評論家の小森のおばちゃまそっくりで、学生は小森のおばちゃまと言っていた。
その女教授の講義は、半期だけの講義で、私は前期に取らず、後期の講義を取った。
いくら講義に出席しなくて単位をくれるといっても、履修カードは提出しなければならない。
当時4年になっていた私はもう、大学構内は我がもの顔で歩いていた。
履修カードを提出しようと思い最初で、最後の講義に出席した。
少し教室に遅れて行ったために、教壇の一番前の席しか空いていなかった。
私は、仕方なくその席に座り講義が始まった。
講義と言っても履修カードを集めるためだけなので30分ぐらいで、終わるのが通例だ。
「女教授は勉強をしなければいけない」、と私達に言い出した。
私は、その話に、突っ込みを入れたくなり、突っ込んだ。
「先生、俺ら、勉強しにきてくださいなんて言われてないでーーー」
「ラグビー部に入ってくれ」と言われたんやでーーーと突っ込んだ。
教室は、大爆笑ほとんどがスカウトで大学に来ているからだ。
つづけて「先生、顔見てみーかしこそうなん誰もいてへんやろーー」
「あんな練習して、勉強なんてでけへん(できない)」とつづけると
その女教授は、「私の高校時代にラグビー部のキャプテンがいて、その彼は授業中、
集中して勉強し、東大へ入ったのよ」と言った。
「そんなん、最初から頭の出来がちがうねん」とまたツッコミを入れてしまった。
女教授は、話題を変え、夏休みどう過ごしたか、学生に尋ねた。
またしても私、「合宿にきまってるやん」と言った。
女教授は、「そう、私はヨーロッパに3週間一人旅をしてきたの」と言った。
私は、またツッコミを入れた。
「先生、旦那ほっといて!!」
女教授は、一瞬顔がこわばった。教室から「あーあっ」という声が・・・・・・・
女教授は独身だったのだ。
私は、後悔した。(これで単位パーや)(ほんまに私は、なんちゅうやっちゃ)
それ以後、講義には出なかったが、構内でその女教授に会うと、必ず挨拶をするようにした。
単位は、「可」だったがもらった。