プールサイドはリゾートホテル


俺は、この荒れた中学校に赴任してきて、3カ月が過ぎようとしていた。
もう、俺は、「教師」ではなく「調教師」だった。
そして、俺は授業のことでの悩んでいた・・・・・・・・
自分が生徒でも、「おもしろないやろなーーー」と感じていたからだ。
授業を、「成立」させるためにおもしろくない授業をしていた。
ただ、傍目から見れば「成立」しているように見えるが・・・・・・・
内容は御寒い内容の授業だった。
俺は、体育の授業には、4つの成立条件があると思っている。

1、体育学の知識を教える。
2、運動することの喜び(楽しさ)を教える。
3、運動能力を高める。(実技、スキルの向上)
4、限られた時間内で、より多くの運動をする。

元々、荒れた学校なので、俺のことが恐いために授業が成立しているように見えるだけで、
俺の考えている、体育の授業からほど遠い内容だった。
これから夏に向かって「水泳」の授業がある。
どうしょうか?と考えているときに体育の女教師から相談があった。

その、女教師は、短大卒で2年目のまだ、若い教師だった。
教師としては、俺より先輩だったが、俺の方が年上だった。
内容はこうだった。
水泳の授業は、男子と女子が同じプールで授業をするのだが、去年は女子の方が殆ど授業が成立しなかったのだ。
女子生徒は、第2次成長期に入り、女性特有の体に変化する。
そして、思春期に入り、水着になりたくないのだった。
そのために、水泳の授業は、嘘の理由を作り休むのだった。
おいおい、1カ月間に何日生理日があるねん。というほど「生理」の見学者が多く出る。
次は、体調不良だった。
保護者に、生理証明の届け出がなければ、評価に影響すると言っても全然平気だった。
「忘れた」の一言で終わった。
まさか、パンツを脱がして確かめる訳にはいかない。
とにかく女子の体育参加者が少なかった。
また、俺の学校は、女子生徒も男子に負けず荒れていたのだった。

そこで、男子、女子の垣根を取り払うことにした。
まず、授業に参加させるために第1週の授業は捨てることにした。

今日から、水泳の授業だ。
半数以上の女子生徒は「生理」になっていた。
俺は、ビーチサンダル・レイバンのサングラス・パナマ帽子といういでたちで、手にはラジカセを持っていた。
テープは、サザンを用意していた。
サザンのテープを流す・・・・・・・・生徒はびっくりだ。
「ヨーシ好きなことして遊べーーーーーーーーー」
それで授業は終わった。
「先生、次の授業もこんなん?」
「おお、今度はチューブのテープ持って来るわーーー」
「先生、ビキニ持ってきてもええかー」
「アカン、ビキニはアカンぞーーーーー」
水着は、ビキニ以外自由にし、プールサイドはリゾートホテルの様になってきた。
あっという間に噂は広がり、翌日の水泳の授業は、本当に体調不良の生徒だけの見学になった。
2週目・・・・・女教師はカリキュラムに沿った授業をすることになった。
生徒に選択させたのだ。
やはり何人かは、そちらの方に流れた。
今週からは、プールを使ったゲームを取り入れた。
当然罰ゲームも取り入れた。狙いはここにあった。
チームを作り敗けたほうが、罰ゲームとして50M泳がした。
泳げない生徒は、泳げるまで女教師に泳法を「教えてもらえーーーー」
「できるまで帰ってくるな」と言って女教師に預けた。

普通、こんな授業をしたものなら管理職からクレームが来るのだが、学校の現状を知っている、
管理職は何にも言わなかった。
現状を打破するために、教師も試行錯誤しているからだ。

この年数年ぶりに、ひと夏中プールから生徒の歓声が絶えることはなかった。