親父(おやじ)と呼ばれた教師


(なんだぁー、どうして此処はこんなに暗いんだー)
(いい匂いがするじゃねえか?)
(急に明るくなってきやがった。坊主がなんでいるんだぁーー)
(アレ、ギンタじゃねえか?、クマもデカも、ハルもリュウにサブにモトキにタケにエイジにムロ・・・)
(どうしたんでぇー、みんな泣いていやがる。)
(あっ、そうか俺ぁー死んだんだ。じゃなにかい、今日は俺の葬式か?、あっなるほど)
(思えば、この40年ラグビーと酒ばっかりだったもんなぁーー)
(早死にして当然だ。でもよ俺ぁー悔いは無いよ、オメェー達みたいなやんちゃくれとラグビー出来たからよ)
(なんだぁー黒塗りのベンツが止まったぞー、俺ぁーベンツ乗るような奴知らねーぞ)
「親父(オヤジーーー)どうして死んだんだーーー」
(なんだ、ヒロじゃねえか?みっともない大の男が泣きじゃくりやがって)
(おめぇーもベンツ乗る身分になったのかい)
(そういやー大学卒業して、俺のとこやってきて{やくざになりたい}なんてほざくからよ、4年ぶりにヤキ入れたら)
{裸になったらもう刺青入れていたもんな、俺ぁー親御さんの顔思い出したらよ、申し訳なくてよ}
{折角、4年間大学努め上げてよ、学士様もらって{やくざ}かと思ったよ。}
(なんだ、指2本ねぇじゃねえか?良い女抱いて、いい酒食らったらそれ位のことは、せなあかんな)
(おめぇーもよ、贅沢している分、誰かが、泣いてんだぜ、肝に命じておけよ)

(おう、ギンタ何を厳い顔して泣いてんだ。オメェー等の時は本当に全国制覇狙ったぜ)
(しかしよ、ベスト8で負けたな、運、不運も実力のうちって言うじゃねえか、実力が無かったんだな)
(よく殴ったが、みんなついてきたな。ありがとうよ)

(ハル、オメェー見所あると思ったからよ、俺の母校に放りこんだのに、寮長殴って退学しやがった。)
(社長になって、今儲けているんだって、それもまた人生じゃないか。)

(モトキ、オメェー田舎の暴走族解散させたんだって?殴らずに)
(俺なら、殴ってるよ。殴らずに事を済ますのが一番さ、オメェーも苦労して大学卒業したもんな)
(その気持ちがありゃー生徒はついてくるよ)
(花園目指してんだって、オメェーなら近いうちに来るだろうな、頑張れよな!!)

(デカ、オメェーも高校のとき苦労したよな、家庭がメチャクチャになってよ)
(泣きながら、学校やめるって言ってきたときわよ、びっくりしたぜ)
(卒業までの半年、俺の家から通ったもんな。気疲れしただろう)
(なのによ、大学入ったのに、オメェー1年から、使ってもらっただろうが)
(なのによ、お○○こ覚えて、結婚するなんて言いやがって大学やめたよな)
(その女とは、離婚したんだって、4年間努め上げていたら、大きな会社にでも就職できたのによ)
(また、これも人生だわな)

(クマ、中学の教師なったんだって、ラグビー部も作ったってな)
(オメェーの教え子、俺が教えたかったよ、残念だな)

(おいサブ、オメェーも芸が無かったな、合宿の時、バカの一つ覚え見たいな歌ばっかり歌いやがって)
(今、歌ってみろよ)

「おい、サブ、先生が好きだったお前のへたな歌、歌えよ」
「ギンタさん、今歌うんですか?」
「おう、はなむけに歌え」
「ハイ!」
(おっ、サブ歌ってくれるのかい)

              俺が死んだらよーー

               三途の川でよーー

               鬼を集めてよーー

               ラグビーする  ダンチョネー


(おうおう、その下手な歌だー、うれしいぜ)

(おう、女房じゃねえか、泣きもしやがらねぇー、お前にも苦労ばっかりだったな、感謝しているぜ。)
(後の、事は任したぜ。息子が気係だが、なんかあればよ、今日集まった奴らに相談しな)
(力になってくれるぜ。)(しかし、相変わらず気丈だな、お前は、だから俺の女房つとまったんだがな)

(みんな、時間だ、ちょっくらよ一足先に、あの世とやらへ行ってくらー)
(鬼にでも、ラグビーをおしえてよ、地獄と天国の定期戦してよ、勝ってやらあな)
(もちろん、鬼チームの監督は、俺だがな)

「監督っーーーーーーー」
「親父(おやじーーーー)」

数百人の教え子達が、雄叫びとも、怒号とも聞き分けられない、声を発した。

静かに霊柩車は滑りだした。