イント・ナットが実際どのくらい効果がある物なのかデータを取り表にしてみました
まず、取り付け前と取り付け後の画像を見ていただきましょう
イント・ナット取り付け前(ノーマルナット) イント・ナット取り付け後
イント・ナットを取り付けることでサドルの位置も変わってきます
ノーマルナットの場合0フレットと1フレット(開放弦音と押弦音)のピッチ差までサドルで調整しているために
弦長は計算上のスケール(12フレットから324o)よりも長くなり
(このギターの場合1弦で約+1o、6弦で約+5o)
また、サドルの並びは通常は左画像のようにN字型になりますが
イント・ナットで0フレットと1フレットのピッチ差を無くすことによって
右画像のようにサドルが全体に前進し計算上のスケールにより近づき(1弦で約0o、6弦で約+3o)
サドルの並び自体もほぼ一直線になります。この辺りが目で見える効果と言えます

実際にどの程度ピッチに表れるかデータを取ってみました
◎データ取り状況
◇ギター:O2 Factoryストラトキャスター
弦:アーニーボール・ハイブリッドスリンキー、009/011/016/026/036/046
弦高:1弦1,3o〜6弦1,6o(12フレット頂点から弦底点間)
オクターブピッチ調整:12フレットでジャストピッチに調整
◇チューナー:SEIKO・ST777
チューナー精度:±1セント
◇データ取り方法
開放弦音と各音を交互にチューナーに入力し相互のピッチ差を出し
この作業をポジションごとに5回行いその平均値を表に書き入れる
(例:5弦8フレットのピッチを調べた場合
まず5弦開放弦音(A)を弾きチューナーに入力→A±0セント
次に5弦8フレットを押さえて弾きチューナーに入力→F−1セント
ピッチ差は−1セント
この作業を5回繰り返し平均値を表に書き入れる)
※ピッチ差はチューナーのデジタル・セント表示でチェック
 数値は一定しないがもっとも長く表示された数値をデータとする
※表内の数値単位はセントです
※チューナー自体に±1セントの誤差があります

イント・ナット取り付け前

弦\フレット 1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
   1  3 2 2 2 2 1 1 1 1 0 0 0 0 2 3 5 5 7 7 10 10 10
   2 5 6 6 5 3 3 2 1 2 1 0 0 0 3 4 4 6 6 8 10 11 10
   3 5 4 4 4 3 1 0 0 0 1 0 0 0 -1 -1 0 1 0 1 4 5 7
   4 3 2 1 1 0 0 1 0 1 1 1 0 0 2 5 3 5 6 5 12 8 6
   5 5 4 3 0 0 0 0 -1 -1 0 0 0 1 2 1 1 2 2 3 4 6 3
   6 8 8 7 5 4 4 3 0 1 0 0 0 2 5 8 10 10 10 8 5 5 8

イント・ナット取り付け後

弦\フレット  1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
   1 0 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 1 1 1 3 3 3 6 7 8
   2 0 0 0 0 0 -1 -1 -1 -1 0 0 0 1 0 1 2 2 4 5 10 10 8
   3 0 0 0 0 0 0 -1 -2 -2 -1 -1 0 0 2 2 3 2 4 6 4 5 8
   4 0 0 0 -1 -1 -1 -2 -2 -1 0 0 0 -2 -2 0 2 4 5 5 7 7 8
   5 0 0 1 0 -2 -2 -2 -1 0 0 0 0 0 1 3 5 4 4 1 7 7 7
   6 0 0 0 -1 -1 -1 0 0 0 0 1 0 0 1 3 3 4 3 6 4 6 7

イント・ナット取り付け後、5フレットから9フレットにかけてはノーマルよりも微妙に♭していますが
ローポジションのピッチが明らかに良くなっているのが分かっていただけると思います
ハイポジションに関しても少しですがピッチが良くなっています
数値的にはこの様な結果ですが7フレット辺りでコード弾きをした場合でもノーマルよりも綺麗に響き
特に歪ませてコードを弾いた時は音の濁り、うねりが少ないのがハッキリと分かります
欠点として考えられるのはコード弾きでうねりが出ない分ロックな音楽には向かないかも?
音のうねりや濁りが迫力になることもありますからねぇ(^_^;)

上のデータからイント・ナットはローポジションを多用するアコースティックギターに
よりうってつけなのが予想されると思いますが
ほとんどのアコースティックギターが固定式のサドルの為、完全な調整をするのは困難です
エレキよりも太い弦のアコギではサドル位置が前進しすぎて
3o厚程度のサドルでは調整範囲を越してしまう可能性があり
完全な調整をする場合一旦サドル溝を埋め、適切な位置にサドル溝を入れ直す
と云った作業が必要になる場合があります
そう云った場合サドル加工工賃は別途かかりますのでご了承下さい

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