弦の張り方
今回はここ数回のマニアックな内容とは打って変わって基本の基本『弦の張り方』についてお話させて頂きたいと思います 「なんや、そんなん知ってるし〜」と思われるでしょうが、ベテランさんでもきちんと弦を張られていない方意外といらっしゃいます 今回は確認のつもりでご一読お願いします で、今まで色々と見た中でここまで間違うか!?と云う弦の張り方1位がこれだ! |
上から見ても横から見ても惚れ惚れしてしまうほどの間違えっぷり! 正解が一つもありません!! 直接ご来店されたお客様がこんな風に張られていると正しい弦の張り方をお教えするのですがこれは量販店から入った下請け仕事でしたので出来ません 黙って張り直してお返ししましたが、普段お客様にご説明させて頂いている「簡単でチューニングが狂い難い弦の貼り方」をここから種類別にご紹介したいと思います (後日追記:本来ブリッジから張らないといけないところペグ側から始めてしまいました(^_^;) 次の記事でブリッジ側の張り方をご紹介しております) |
まずこの様に弦を巻く軸(ポスト)の横にある穴に通すタイプの場合 画像に5mmとありますがこれは弦を通す穴からブッシュまでが5mm有るギターを例にとってご説明いたしますがこの距離はギターのモデルによって異なります |
ポストの弦を通す穴からブッシュまでの距離が5mmくらいのギターですと張る弦のポストから次の弦のポスト、画像の場合6弦を張ろうとしていますので5弦のペグポストのところで弦を曲げます ポスト穴からブッシュまでの距離が短い場合は曲げる位置を短くします 例えばギブソンヒスコレシリーズはヘッドの厚みがレギュラーシリーズよりも厚いためポスト穴からブッシュまでが1oほどしかない事がありますがそう云った場合は次の弦ポストとの真ん中辺りで曲げるようにします |
弦を曲げたところまでポスト穴に通したら出てきた弦をヘッド先端に向けて曲げます あとはここから弦を下向きに巻き取るだけです これをお客様にはZ字掛けとかN字掛けとご説明していますがポスト穴を弦が通っている様子をイラストにしますと |
こんな感じです 弦(赤線)がポスト穴の2点(青矢印)の角に引っ掛けられる事で弦が引っ張られた時(緑矢印)に緩み難くなります 弦がZ字になるのでZ字掛けと云う訳です (ヘッド正面から向かって左側のペグに巻く場合は画像のように逆Z字になりますが右側のペグに巻く場合は正Z字になります) で、このタイプのペグの場合好ましくないのは↓ |
この様にUターンして巻いてしまう事です こうするとポスト穴の中で弦が湾曲して青矢印部分の引っ掛かりが緩くなり、チューニングする事で緑矢印方向に弦が引っ張られるとピンク矢印方向に弦が動き弦が緩み出します ここでもう一度最初の酷い巻き方の画像を見てください 6弦を見て頂くと分かり易いと思いますがこの巻き方がされていて弦が緩んだのでしょう、その先でぐるぐる巻きにして緩まないように苦労しています 弦をZ字掛けにしたらあとは下に向かって巻いて行くだけです |
弦は重ならないように上から下に綺麗に巻きましょう 酷い巻き方の例で出した画像のように重なったりしているとその部分でタワミやズレが出てチューニング狂いの原因になります なぜ、上から下に向けて張らないといけないかは長くなりますので次回にでもご説明させて頂こうと思っています |
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正しく弦を張ると、このようにヘッド左右にペグがあるタイプの場合、左右対称にヘッド中央側から外に向かって弦を巻くようになります (極希にですが特殊な張り方を標準とする機種もあります 例えばチューンのヘッドが小さな機種は小さなヘッドの中にペグを配置するためにあえて逆に外から中に向かって巻くのが標準となっていますが、分からなくなった時は弦を張った時に指板上の弦から延長線上にペグまで真っ直ぐに近いように張られるのが正解です) 後のナイロン弦の張り方で紹介する「弦自身の張力で弦をロックする張り方」もありますが金属弦の場合、Z字掛けするだけで十分です このZ字掛けですがロック式のペグにも有効です |
スパーゼルやグローバーのダイヤルでロックするタイプのロックペグはダイヤルを回す事でペグポスト内部のプレッシャーピン(矢印部分)がせり上がり弦を挟み込んでロックしますがご覧のように先端が丸くなっています 一方、右側のゴトーマグナムロックはピンの先端が平らです 先端が丸くなるっている事で適当に弦を通してロックするとこの様になります↓ |
ピン先端が丸いと弦はピンの脇に逃げてしまいピン先端で挟み込む事が出来なくなります この状態でも弦が太ければロックできますが1弦など弦が細くなるとピンの脇とポスト穴の隙間に逃げ込み十分にロック出来ずに弦が滑ってしまいます これをZ字掛けにする事でペグへの弦の引っ掛かりを補助する事が出来ますのでロック機構が十分に発揮できなくても弦の滑りを回避できるようになります |
張り方としてはロックペグはポストに沢山弦を巻く必要がありませんので、ポスト穴に弦を通したらそのままグイッっと引っ張りZ字に曲げ、片手で弦をひっぱたまま反対の手でロックさせます 通常のペグではポストに巻かれた部分で弦がタワミを起こしチューニング狂いの原因になりますがロック式ペグはポストに弦を巻かない事でタワミを最小限に抑えチューニングの狂いを少なくしています 次にフェンダータイプに良く使用されているポストに溝が掘られているタイプですが |
この場合は張る弦のポストから3個目、画像の場合6弦を張ろうとしていますので3弦のポストのところで弦を切り、弦の先端をポストの中央にある穴に差し込みます ベースの多くもこのタイプのペグを採用していますが多く採用されている分、機種が多く弦を差し込む穴の深さが機種によりまちまちでどの長さで切ればちょうど良いかが断定出来ません 申し訳ございませんがお持ちのペグでポストに3週ほど弦が巻かれ尚且つブッシュに当たらない長さを探して頂く様お願いします ちなみにもっともオーソドックスなフェンダーベースの場合、張る弦のポストから2個分くらいが目安になるでしょう |
差し込んだらしっかりと弦を曲げ溝の角に引っ掛けます↓ |
このタイプの場合ここでしっかりと引っ掛けることが重要です これでそのまま下に向けて弦を巻いて行けばOKです 弦の先端が飛び出ないのがこのタイプの利点ですが、その構造上引っかかっている部分が溝の角1箇所だけですので1弦のように柔らかい弦ですと引っ掛かりの部分で滑りが生じがちです どうしても毎回滑りが出るようでしたらこのタイプのペグでもZ字掛けにしてみられてはいかがでしょうか? 次にナイロン弦の場合です ナイロン弦は滑り易く、曲げてもすぐ元に戻ってしまいますのでZ字掛けは効きません そこで昔のヤマハ弦のパッケージに書かれていた弦自身でロックする方法をご紹介します |
ナイロン弦は非常に良く伸びますので私の場合巻き代は取りません この様にポスト穴に弦を通したらロック式ペグの時のようにグイッと引っ張ります ここからが少し難しいのですが↓画像のように弦をくくり付けて行きます |
ポスト穴を通した弦を黄色矢印のようにナット側の弦の下を通して輪っかを作り、輪っかの中を通し緑矢印方向に引っ張ります |
グイッと弦を引っ張ると、この様に「結び目」が出来ます このままチューニングしていくと |
ポスト穴に結び目がハマり(矢印部分)弦自身の張力で結び目を締め付ける事でロックされます ロックされますがナイロン弦は伸びますので伸びが安定するまで何度もチューニングする必要があるのは仕方ありません ただ、この様に巻き数を減らす事で伸び代が減りますのでチューニングの安定は早くなります (この画像撮る時だけ5弦で撮ってしまいました、2〜5弦ではこの様に結び目の内側に弦を巻き取って行きますが1、6弦はこの逆に結び目の外側(矢印がある方)に巻き取って行くと綺麗に張れます) 弦を張り替えた後、2,3回弦を引っ張る事をお勧めしておりますが、一般的にもこれを「弦を伸ばす」と言ってよくやられています しかし、「弦を伸ばす」と言うのはナイロン弦のように伸び易い弦での話で金属弦の場合、本当に伸ばしてしまうと弦が死んでしまいます 昔、張ったばっかりの弦をぐいぐい何回も引っ張って気が付いたら死んだ弦のように鳴らなくなってしまっていた事がありました その時、弦は錆びてだけじゃなくて伸びる事でも死んでしまうんだと気が付きました 金属弦の場合、伸ばすと言うよりも引っ張る事でポスト部分でのタワミを取る作業をする訳で2,3回軽く引っ張るだけで十分です 今回は基本の基本をご紹介しました タイトルもストレートに「弦の張り方」として検索エンジンに引っかかる事を期待しているのですが、初心者や修理に関心が無い人でもこのページに辿り着いてくれないかなぁ〜と思っています 楽器の修理専門店なんかがある事自体知らない人が多いのでどっかで取っ掛かりにならないかな、なって欲しいなと。 初めてここを訪れた方 こちらのページも覗いてみて下さい→「初心者歓迎!」 |