基本的な形を観ます。
身構えずに、リラックスして下さい。自然体でものと向かい合いましょう。できればテーブルに
ガムテープをひとつ乗せてみてください。
ものは寡黙ですが、こちらが観てやれば様々な物語を語り始めます。
そのときあなたは、そのものと一体になります。ものを通じて心が拡がるのです。
ガムテープを観る
3枚の画像を見てください
これはガムテープをスケッチブックに載せて撮影したものです。
まずあなたは、これを見て何を感じたでしょうか。
何かしら、ガムテープの存在感みたいなものを感じませんか。普段見ているものとは違った感じを自分の中に発見出来たら、そこが「観る」事への出発点です。
普段私達は忙しく心を使っています。見ていても観ていないことが数多くあります。
ガムテープなどそのよい例でしょう。
それはガムテープを単なる道具としてしか見ていないためです。
心はそんなものより梱包するものの方に向けられ、自分の目的を遂げる事に忙しいのです。
まず観るとは、
そんな忙しい心を捨ててゆっくり座り、ガムテープを友達のように見て向かい合う事だと
理解してください。
1・遠近を観る
↑
↓
真っ先にどこが一番近くで、
どこが一番遠いかを観察します。
この図で一番手前にあるのは「↑」の部分です。
デッサンでは、最もコントラストの強い部分となります。
そこが自分と一番かかわりの深い部分だということを意識の中に留めてください。
心の中でアリになったあなたは、そこからガムテープの世界の探検に出かけるのです。
ふちを巡って、あるいは下に滑り降りて、ガムテープの感触を体験します。
アリが移動して遠ざかるにつれて、その姿は薄れていきます。
ガムテープの世界はそれ一つが広大な宇宙なのです。
やがてアリは最も遠いい地点にたどり着きます。
写真の「↓」の部分です。
デッサンでは最微弱のコントラストで成り立つ部分です。
2・自分の位置を観る
◎
↓
◎
↓
ものを観るということは、自分を観るということにつながります。
ものの姿は、自分を映し出しているのです。
右の写真で、◎印は見る人(あなた)の目の位置を表しています。
ものの姿は、その見え方によって確実にあなたの立っている場所を示しています。
つまりデッサンは、ものだけを描くというのではなく、ものと自分の関係を描いているのだと理解してください。
ものを描くとき、必然的にそれを眺めている自分の場所がそのものの形に現れてくるのです。ものとかかわる自分の心を見つめることで自分がものと対話している事に気付きます。
3・ものの形を観る
同じガムテープですが、高い位置から見たものと
低い位置で見たものとでは著しい形の変化があります。
→
→
↑
↑
「→」の長さは変わりませんが、「↑」の部分は上と下の図では
6倍も違っています。
実際に測って見ると、想像よりもはるかに大きな差があって
ビックリする事もあります。
また上の図で、「←1」の円の直径は
8対7の割合で下「←2」の円の方が小さくなっています。
しかし下の図ではほとんどその差はありません。
←1
←2
正しくものを観ることがデッサンにとって重要です。
上の図は立って見た形、下は寝転んで観た形ですが、
ものの形は、見る人の姿勢にによって、生き物のように変化している
事を理解してください。
←
←
4・光と影を観る
光と影は互いに補完し合っている
あるいは、光の不在が影だということも出来ます
影は光の位置と
その性質を現す
↑
ア
↑
イ
エ
↓
←オ
アの部分はテープの面を反射した光が地との境界をさらに明る照らしています。
イの影は光がどこにあって、どんな光なのかをはっきり示しています。
つまり光は左斜め上からやって来て、おぼろな影は柔らかな光を暗示しているのです。
ウ→
ウの部分はテープと地が互いに反射しあって、光を最も多く受けている場所です。
エは筒の内側に現れた影です。手前の影と比べてコントラストが弱いですね。
これは手前と奥の距離の差を現しています。
オの部分は影の中に現れたかすかな光です。ここには地から反射した光の物語が感じられます。
5・自分の心を観る
lrsson1はこれで終わりです。
自分とものの係わり方には
様々な形があります。
そしてそれはあなたの心そのものなのです。
ものに対する深い愛情が感じられたら、
100点を差し上げます。