泡沫戦史研究所/ドイツ治安警察部隊史/警察装甲車/戦車部隊(1942年〜1945年)

増強警察装甲車小隊「ベルリン」
verstarkter Polizei-Panzer-Kraftwagen-Zug Berlin

 1944年10月20日付けの治安警察部隊の戦力概要によると、ベルリン防護警察司令官の指揮下に、増強警察装甲車小隊が配属されていました。この小隊の編成や装備の詳細はまったく不明ですが、1945年5月に旧総統官邸の正面玄関前に放棄された写真が残っている、旧式のダイムラーDZVR警察用装甲車とオランダ製クルップ装甲車が増強警察装甲車小隊「ベルリン」の装備車輌のようです。

 ダイムラーDZVR警察用装甲車 (Pol.-Sonderkraftwagen Daimler DZVR)は1924年から1928年にかけて合計33両が製造された警察用装甲車で、シュタイヤーADGZ装甲車の登場まで主力重装甲車として使用され、1939年のダンツィヒ占領にはまだ現役として出動しているようです。その後は順次引退してゆきますが、戦闘可能なあらゆる車両が動員されたベルリン攻防戦では再び警察部隊に編入されました。
 オランダ製クルップ装甲車 (Panzerkraftwagen Krupp,Hollandisch)はクルップ社で試作された警察用装甲車L2H43のシャーシを流用して1933年から1934年にかけてオランダのWilton-Fijenoord社で製作されました。当初はオランダ領東インドのオランダ軍に配備される予定で3両が完成し、装甲車は実際に現地に送られましたがこの計画はキャンセルされ、2両はブラジルに売却され残りの1両はドイツ軍の侵攻時に本国で接収されました。その後どのような経緯を経たかは不明ですが、戦闘可能なあらゆる車両が動員されたベルリン攻防戦では警察部隊に編入さ、旧総統官邸の正面玄関前でDZVR警察用装甲車とともに放棄された写真が残されています。

 グランドパワー2000年12月号別冊「ベルリン攻防戦U」の114ページに旧総統官邸正面玄関前の写真があり、左手奥にこの小隊の装甲車が写っています。また、不鮮明ですが89ページの中段右側写真でソ連軍のお偉いさんたちの背後に見える装甲車は同一の車輌で、この場所は写真解説のように「旧国会議事等」ではなく、「旧総統官邸の正面玄関前」が正解です。


2000.11.12 新規作成
2020.8.11 車両説明を追加

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