泡沫戦史研究所/ドイツ治安警察部隊史/警察連隊について

第3SS警察連隊
SS Polizei Regiment 3

 連隊は1942年7月、既存の第66警察大隊、第68警察大隊を連隊の第1及び第2大隊として編入し、オランダにおいて編成されました。連隊本部は少し遅れて1942年9月2日、第22警察通信中隊とともに編成が完了し、連隊本部と通信中隊はデンハーグに駐屯しました。


第3警察連隊
Polizei Regiment 3

連隊本部
第1大隊(第66警察大隊:1943年1月よりセルビアに派遣)
第2大隊(第68警察大隊)
第3大隊(第105警察大隊:第12警察連隊第3大隊より1943年3月編入)
第14(重装備)中隊:1943年1月より
第22警察通信中隊


 1943年1月に連隊の第1大隊(第66警察大隊)はセルビアへと派遣され、入れ替わりにやはりオランダに駐屯していた第12警察連隊の第3大隊(第105警察大隊)が連隊の第3大隊として編入されました。また1月からは第14(重装備)中隊も編成され連隊に配属されました。
 1943年2月24日からは各警察連隊の名称に「SS」が追加されて一斉に「SS警察連隊」(SS Polizei Regiment)と改称され、これに伴い第3警察連隊も「第3SS警察連隊」と改称されました。
 1943年3月時点で連隊本部はティルブルフ(Tilbulg)に駐屯しており、第2大隊(第68警察大隊)はアムステルダムに、第3大隊(第105警察大隊)はデンハーグに駐屯してオランダでの占領任務に従事しました。また1943年11月から12月には新しい第1大隊として第16警察連隊の第1大隊(第56警察大隊)が連隊に配属され、連隊本部とともにティルブルフに駐屯しました。【補足ー1】

 1944年6月連合軍がノルマンディーに上陸し、8月から9月にかけて連合軍はセーヌ河から一気にベルギーへと進撃しました。オランダは後方地域から一転して最前線となり、補充訓練部隊、東部大隊、警察部隊はもとより、後方司令部要員、外国人労働者などあらゆる兵員がかき集められて防衛体制がとられました。
 第3SS警察連隊 の第14(重装備)中隊は1944年9月にベルギーに送られ前線後方での警戒任務に従事しましたが、前進してきた連合軍部隊との戦闘に巻き込まれて中隊の重装備を全て失い、以後は歩兵として戦闘に投入されました。
 1944年9月17日、連合軍の「マーケット・ガーデン作戦」が開始され、アイントフォーフェン、グラーヴェ、アルンヘムの各地にアメリカ・イギリスの空挺部隊が降下しました。この危機に際して警察部隊も次々とオランダでの防衛戦に投入され、第3SS警察連隊の第1大隊もティルブルフからオランダへと移動しました。なお、このころから第3SS警察連隊は連隊指揮官のベーメル都市防護警察大佐の名前からSS警察連隊「ベーメル」(SS Polizei Regiment “Böhmer”)とも呼ばれていました。

 1944年10月、オランダにある各種警察部隊をかき集めて警察旅団「ノルトヴェスト」(Polizei Brigade“Nordwest“)の編成が開始され、ベーメル都市防護警察大佐は新編成の警察旅団「ノルドヴェスト」の旅団指揮官として転出し、後任としてワルター・カステン都市防護警察少佐が連隊の指揮を執ることとなり、連隊はSS警察連隊「カステン」とも呼ばれました。また10月にはドイツ人警察官の将校及び下士官とオランダ人義勇兵により編成され警察義勇大隊「ネーデルラント」が連隊の第4大隊として編入されました。【補足ー2】


第3SS警察連隊/SS警察連隊「カステン」(1944年11月)
SS Polizei Regiment 3/SS Polizei Regiment“Kasten“

連隊本部
第1大隊(第56警察大隊)
第2大隊(第68警察大隊)
第3大隊(第105警察大隊)
第4大隊(警察義勇大隊「ネーデルラント」:兵力約750名)
第14(重装備)中隊
第22警察通信中隊


 第3SS警察連隊は1944年秋から警察旅団「ノルトヴェスト」に編入され、SS警察連隊「ノルトヴェスト-1」と改称されました。また第22警察通信中隊は警察旅団「ノルトヴェスト」の通信中隊として抽出抽出されたほか、第2大隊(第68警察大隊)は新編成のSS警察連隊「ノルトヴェスト-3」の第2大隊として編入されました。


警察旅団「ノルトヴェスト」(1944年秋)
Polizei Brigade “Nordwest“

旅団司令部
  第22警察通信中隊
SS警察連隊「ノルトヴェスト-1」(第3SS警察連隊より)
SS警察連隊「ノルトヴェスト-2」(第3警察武器学校より)
SS警察連隊「ノルトヴェスト-3」
警察砲兵大隊「ノルトヴェスト」


 警察旅団「ノルトヴェスト」はその後も様々な警察関係部隊を編入して改編され、1945年4月の時点でSS警察連隊「ノルトヴェスト-1」も含めて次のような編成となっていました。


警察旅団「ノルトヴェスト」(1945年4月)
Polizei Brigade Nordwest

警察旅団司令部「オルデブロク(Oldebroek)」
  第22警察通信中隊
SS警察連隊「ノルトヴェスト-1」
  第1大隊(第56警察大隊):警察戦車猟兵小隊「ネーデルラントー1」を含む
  第2大隊(警察義勇大隊「ネーデルラント」):警察戦車猟兵小隊「ネーデルラントー3」を含む
  第3大隊(第105警察大隊)
  第14(重装備)中隊
SS警察連隊「ノルトヴェスト-2」
  第1大隊:4個中隊
  第2大隊:4個中隊
  警察義勇大隊:3個中隊
  警察砲兵大隊「ノルトヴェスト」
    第1中隊(兵力約40名):フランス製155mm歩兵砲×1、ロシア製122mm歩兵砲×1
    第2中隊(兵力約60名):ドイツ製105mm歩兵砲×3
SS警察連隊「ノルトヴェスト-3」
  第2大隊(第3SS警察連隊第2大隊)
  第3大隊(第2SS国家地方警察大隊):3個中隊


SS警察連隊「ノルトヴェスト-1」

連隊本部:将校×6名、下士官・兵×22名
通信小隊:将校×1名、下士官・兵×32名
  第1大隊:将校×14名、下士官・兵×331名
  第2大隊:将校×16名、下士官・兵×332名、補助員×2名
  第14(重装備)中隊:将校×3名、下士官・兵×107名
合計:将校×40名、下士官・兵×824名、補助員×2名 連隊計:866名


 警察旅団「ノルトヴェスト」は「オランダ要塞」地帯に展開して終戦を迎え、1945年5月9日にイギリス軍に降伏しました。



【補足ー1】
 第3SS警察連隊の第1大隊(第66警察大隊)は1943年1月にセルビアへと派遣され、3月の時点でクルサバク(Krusavac)に駐屯しており、以後セルビア各地で対パルチザン作戦に参加した後、1944年に第5SS警察連隊の第3大隊として編入されました。(出典:Police Battalions of the Third Reich)
 一方で北方軍集団の後方地域で活動していた第16警察連隊の第1大隊(第56警察大隊)が1943年11月から12月にかけての時期に第3SS警察連隊の新しい第1大隊として配属され、連隊本部とともにティルブルフに駐屯しました。しかし「The German Police」には『1944年3月31日現在のOKWの記録に第3SS警察連隊の第1大隊はセルビア南西部のRask東方で作戦中との記録がある』との記述もあり、編入時期ははっきりとしません。もっとも「The German Police」の記述が1944年でなく1943年の間違いであれば辻褄は合います。
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【補足ー2】
 警察義勇大隊「ネーデルラント」はドイツ人警察官の将校および下士官とオランダ人義勇兵により1944年10月に兵力750名により編成されました。当初はワルター・カステン都市防護警察少佐が大隊長を勤めましたが、少佐は新編成のSS警察連隊「カステン」の連隊長に転属となり、10月20日付けでシュッツェ都市防護警察大尉と交代しました。大隊は1944年11月よりSS警察連隊「カステン」の第4大隊として編入され、1945年3月以降はSS警察連隊「カステン」の第2大隊となりました。

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2001.8.16 新規作成
2004.6.17 改訂版
2007.10.21 改訂2版
2008.8.15 改訂3版
2009.3.1 全面改訂4版
2018.6.28 改訂5版
2020.6.29 一部修正

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