一年間橿原高校で英語の授業を受け持って


奈良県立橿原高等学校 辻 智子

  1. 学校紹介: 橿原高等学校 奈良県橿原市 (橿原神宮前駅下車)
    教職員65名 (内 講師5名,ALT1名)  [英語教諭9名,常勤講師2名]
    平成10年度入試の合格者数  (延べ人数) (かっこ内は昨年度)
    4年制大学
    短期大学
    専修学校
    合計
    国公立
    私立
    28
    370
    92
    24
    514
    (29)
    (313)
    (121)
    (27)

  2. 学校のカリキュラム:
    1年英語T(3単位)OC-A(2単位)
    2年生(文系)英語U(4単位)Writing(2単位)
    2年生(理系)英語U(3単位)Writing(2単位)
    3年生(文系T)英語U(2+選択)Reading(4単位)、Writing(3単位)
    3年生(文系U)Reading(4単位)Writing(3単位)
    3年生(理系)Reading(4単位)Writing(2単位)
    なお、Team TeachingはOC-A/Writingの時間に行っている。 Writingの授業は文法学習の時間のように指導しているようだ。 3年生は早朝・放課後に(2年生は毎週木曜日[90/350名])希望者を集め、充実講座を開講。)

  3. 一年間を通してのReading指導目標:
    (明るく),(生き生きと),(嬉しそうに),(笑顔で),(おもしろく)

            

  4. 実践報告:さあ、私はこの一年何をともに学び、彼らに何を伝えられたでしょう。
    私の橿原高校での位置− 2年 英語II 3クラス,Writing 3クラス (18時間)
    2年9組 副担任, 卓球部顧問, ESS主顧問, 充実講座(43名)
    季節ごと/Lessonごと

  5. 反省点:体調・感情に左右されるという大きな欠点あり。
    全てを出し切ってしまうのではなく、相手に考えさせる機会をもっともつ必要あり。

  6. 感想:

  7. その他:資料(生徒に配布したプリント)
    アンケート / コメント

  8. 各月の報告:
    4月
      毎日の通勤・雑務に慣れるのに大変。 生徒が想像以上に素朴なのに驚きと感動。
      (感)笑顔を忘れない。謙虚に。心に余裕・ゆとりを! 十人十色。完璧主義からの脱却。
      自分の中に誰にも負けない自信があって、初めて相手を受け入れられる。
    5月
      修学旅行に引率。それまでに自分の担当生徒の名前を覚える。5月病になる暇なし。
      誰に対しても誠意を持って、相手の可能性を信じること。Communicationが大事!
      (感) すべての人が「わかる!」というのは不可能か? 生徒の気持ちをしっかりキャッチ。
      不信感?先入観?! 疲れると余裕がなくなる。 考える時間をあげる。
      私:生徒=1:240、でも、生徒:先生=1:1。 一束にせず個人として。
    6月
      生徒とも随分交流がもて、放課後などもおしゃべりなどで忙しい。
      大ピンチ発生! 「強く、たくましく、優しく、そして温かく」の再認識
      (感) 相手への誠意忘れない!忙しさに甘えない。忙しい時こそ心にゆとりと笑顔を!
      自分の目指すものをしっかり相手に伝えておかないと!「わかってくれている」では通用しない。自分を見失わない! 相手を信じる以上に自分を信じるのは大変。
    7月
      苦しみ抜いてできた期末考査。コメントに書くことも随分個人情報が書けるように。
      (感) 物静かな生徒の心をどう掴み、英語の嫌いな生徒をどう指導するか。が今後の課題。
    9月
      少しゆとりができ、プリント作成や、伝えていきたい事にも時間がかけられる様に!
      授業外での交流盛んに。しかし、それが甘えにつながり提出物滞納者続出!
      (感) 更に楽しく教材研究が、授業ができるように。しかし、ゆとりがないと空回りする。親しき中にも礼儀あり!! 生徒との距離の保ち方に悩む。
    10月
      お互いを尊重し合う関係が随分できてきたように思う。やはりテスト作成に泣く。
      生徒の英語に対する意識も随分変わってきたように思う。1叱って9誉める。
      (感) 人間関係の大切さをひしひしと感じた。私が笑えば生徒も笑う。クラスの雰囲気を掴み取るPowerが必要。自然体で接すること。化けの皮はすぐ剥れる。
    11月
      授業も結構準備するのに慣れてきて、かつ、濃い話ができるようになる。嬉しい。
      生徒からの反応も返ってくるようになるが、授業の中ではまだ難しいし、時間がない。
      カンニング発生!信頼関係の大切さを!
      (感) 英語が苦手な生徒の反応が少しずつ好転。こっちがいかにケアしているかを伝える。誉めて誉めて、少しアドバイス。(難しい)。期待はかけすぎず。こっちから歩みよる。
    12月
      「情熱を注ぎつつ、クールに自分を見つめ、全体が見渡せるようにしておかないと。」と悟る。授業に適度の緊張感とリラックスを。学期末テストにまたもや泣く。
      (感) 心のゆとりの大切さ。相手に気持ちを伝えていくことの難しさ。言葉を指導しているが、言葉の奥の深さを改めて実感。 Take it easy!!!
    1月
      心新たに仕事に取り組んだが、自分の将来への不安が心の奥底でドロドロしていた模様。 一所懸命にやっても空回りで第3のスランプ。生徒の気持ちに目を向ける余裕なし。
      (感) 一年間で一番嫌な時間だった。この時にできなかったことを学年末までにしたい。戸惑いを感じた生徒もいるようで、大いに反省している。すごくピリピリしていた。
    2月
      「なんとかなる。先のことより、今の時間を大事にするほうが先決。」肩の力抜けた。
      (感) また、自然に笑え、自然に人と接し、相手のことを考えれるゆとりが戻ってきた。情熱が才能!でも、心にいつもゆとりが必要! 自然と出たものしか見てくれない。
  9. 各課の授業報告
    Lesson1 Australia
      オーストラリアについての知識。 時差について。 Working holiday
      (指) ノートは提出用に作らない。自分でわかるものを。訳だけを書き取るのはだめ!板書をたくさんする。 訳に頼りきらず、段落ごとに話の流れを追う。A,B,and C。英文の特徴をつかむ。 ( Topic Sentence 機能語など)
    Lesson2 Girls VS Boys
      男女観について。 「あなたらしさが大切」ということ。
      「自分」というものは、他の誰かに値打ちをつけてもらうのではない。自分が「自分」という人に満足しているかが大切。
      (指) 板書を工夫する。 絵を書く。頭で話の内容がビジョン化することが大切。男(のこ)/女(のこ)の対比で文が展開。 (対比文で出てくる語句)
    Lesson3 Body Language
      自分たちがいかに身振りを使っているか。心地よい距離の文化差。言葉以上に身体の動きが感情を伝えている場合があること。言葉がわかっていても価値観や文化の違いでうまく相手に伝わっていかない場合がある。
      (指) 絵で話の流れを理解させる。 国と国との対比によって話が展開。例文は何のために?−筆者の主張・考えを裏付け、きっちりと読者に伝えるため。
    Lesson5 Stephen Hawking
      本文全体の構成を理解する。 Hawkingの人生観。人はどう生きるべきか。 支えてくれている人の存在のありがたさ。人と比べるから自分がちっぽけに見える。"自分の人生の値うち"は自分が決める!
      (指) 話の流れをしっかり掴めるような板書を。(生徒の中に訳にこだわらない者出現。また、絵がいっぱいなので、次の先生が何の授業かと生徒に聞いたことも。)このLessonの最初に各段落の最初と最後の文だけをみて内容をつかむ試みを。機能語 (接続詞,Howeverなど), 時間表現, Thatの働きについて。
    Lesson6 Itadakimasu!
      内容よりもこの課は文の基本構造に注意を払ったようである。食べ物に対する感謝の念。 ううむ。あまり記憶に(記録にも)ない。
      (指) 基本文の構造:5文型。 品詞の働き。 句と節について。文が長くなる。ややこしい文。‐接続詞がKeyを握っている。
    Lesson7 The Pace of Life
      スピードの速さが、進化だとか発展を本当に意味するのだろうか。時間をどんな風に使うといいんだろう。本当の幸せって?自分のやり方に疑問を持つ生徒がいる。自信をなくす。随分悩んだ末、自分のやり方を信じようと決める。生徒ときっちり向き合う。ノートの取り方の参考としてプリントを作成して配布。(大いに前進)
      (指) 話の内容をしっかりまとめる力が必要なことを伝える。実験文 (論文) の典型的な書き方として学習。問題提起‐実験 (観察) 方法‐観察と実験結果‐結論(筆者の主張)
    Lesson8 100 Handkerchiefs
      後悔すること。また、それとうまくつきあっていくには。お年寄りを大事にしよう。(接してみるとおもしろい。)人の死について。
      (指) 主人公などの心理を深く読み取ろう。時間の空間を行き来していることを意識する。‐時制の使い分けが見えてくる。また、すんでしまったことに対する願望・思い‐仮定法過去完了
    Lesson9 Sounds We Don't Hear
      なじみにくい話なのでプリントを作って文の構造の理解の助けとし、内容理解にはできるだけ自分の体験例などをいれて授業を進める。時に物理の授業のようだった。英語は雑学と本当に実感。
      (指) Part 1, 2で、プリントで話の流れのつかみ方を指示。Part3はそれぞれで考えさせる時間を取る。文が長くなる。−接続詞で結ばれていく。/ , ,で具体的説明が入っている。Writingのテスト範囲と重なったので、分詞構文について詳しくやる。
    Lesson 10 Is Japan Unique?
      筆者の思う日本人・日本文化。日本とは、日本人とは。自分の国をどのように思うのか。見る角度が違えば同じものごとでも違ったもののように見えてくる。
      (指) 文の構造をしっかりつかませるため、本文に入る前に文章の構造を確認。話題 (問題) 提起 / 筆者の主張‐その主張をSupportする例文‐筆者の再主張‐結論 日本と外国との対比により、明確に主張を伝えようとしていることを確認。今回の文法テーマ:倒置,強調構文について学習。(ただ暗記で文法を覚えるのではだめなことを伝える。)
    Lesson 11 Disappearing Species
      今世界でどんなことが起こっているのか。(生物の時間)「熱帯雨林を伐採してはだめ!」というのは簡単。では、あなたは何をしている?人の非を非難するのは簡単。だけど、あなたは非難できるほど偉いのだろうか。相手の幸せがやがて自分の幸せにつながるということを意識できたらどんなにいいだろう。きっと、もっと笑顔で暮らせると思う。
      (指) 各段落がどのような働きをしているかしっかり確認させる。( Topic Sentence )いままで学習してきた文の読み方の総まとめになるよう意識して授業を!
    Lesson 12 In the Name of Civilization
      文明という名のもとに人は何をするのだろう。同じものを見て、理解しあえたと思っていても、根本的な価値観が違うと、同じものを見ていない,理解しあえていないということが起こる。そこでお互いが歩み寄れればいいけど、それができない場合衝突が起こる。それでもおさまりがつかないと、終には戦争になってしまう。人は偉大な権力をもったとき、つい、間違った行動をとってしまうことがある。それはいつの世でも、どんなところでも同じようだ。では、私たちがそこから学ぶべきことは?
      (指) Ameirica 先住民の歴史を追いつつ学び取ってほしい事柄を表に出しすぎず,彼らが考えてくれるように展開する努力を。時代の流れをおって内容理解を。(段落ごとに読むことの重要性を再認識!)

  10. 1年を終えて:
    自分自身が様々なことに関心を持って取り組めたので楽しかった。
    浪人したときに勉強する楽しさを学んだが、今年度は楽しんで仕事をする
    楽しさを学べ、その上、自然体でいるのが一番無理がなく、しかも一番力が発揮できることを学べた気がする。私にとって貴重な一年になりました。

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