読解指導における発問の役割
大阪府立八尾東高等学校 教諭 西嶌 俊彦
0 はじめに
1970年代以降の認知科学という新しい学問領域の発達は、リーディングという知的活動に対する見方を大きく変えることになった。つまり、リーディングは書き手がテクスト内に明示的に示した情報を読み手側が単に受け取る受動的行為ではなく、読み手が先行知識を基に、そのテクストによって書き手が表そうとしている内容を積極的に予測・評価しながら理解していく一種のコミュニケーションの過程であると考えられているようになったのである。このようなリーディング観の変更は、リーディング指導にも多大な変化をもたらすことになる。優れた読み手が、読解という認知プロセスの中でテクストに対してどのように働きかけその内容を理解するのか。それを解明し、そのストラテジーあるいはスキルを学習者にどのようにして獲得させるかについて考えることが、今、リーディング指導にとって必要であるといえる。今回の発表では、このことに関して、教師側の学習者に対する発問が重要な役割を担うという視点で論が進められる。
1 Irwin(1991)の読解における5つの認知プロセス
- (1) Microprocesses
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- (2) Integrative Processes
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- (3) Macroprocesses
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- (4) Elaborative Processes
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- (5) Metacognitive Processes
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2 発問のレベル
田鍋(1994)は上記のIrwin(1991)の5つの認知的プロセスに即した発問による指導を提唱している。
3 発問のストラテジー
There are many ways to classify what kind of questions are effective in the classroom. Perhaps the simplest way to conceptualize the possibilities is to think of a range of questions, beginning with display questions, that attempt to elicit information already known by the teacher, all the way to highly referential questions that request information not known by the questioner; often the latter resonses involve judgement about facts that are not clear or a statement of values.
Brown (1994, p.165.)
4 リーディング指導における3つのインターラクション
- (1) 教師(指導者)と生徒(学習者)
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- (2) 書き手(テクスト)と読み手(学習者)
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- (3) 生徒(学習者)と生徒(学習者)
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- (1)のインターラクションにおける教師側の発問が(2)と(3)のインターラクションのキューになる。
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5 かつての文法・訳読式授業における発問
予習→生徒(正しい訳)の確認⇔明示的文法知識の補充
- 一文の理解の積み重ねはテクスト理解の必要条件であるが十分条件ではない。
- テクストの内容が読みとれないことに関して、語彙・文法以外の要因に対する視点が欠けている。
6 スキーマ理論
学習者側のスキーマの欠如や不活性に対して、いつどのように働きかけるか。
- 形式スキーマと内容スキーマ
- 形式スキーマのスキル化を促し、内容スキーマを活性化させるキューとしての発問の役割
- pre-reading, while-reading, post-readingにおける発問の種類と役割
7 メタ認知的読み
自分は何が分からないから読めないのかについての気づき
8 まとめ
以上、リーディングを学習者の認知的活動として捉え、その過程における様々の発問の果たすべき役割と有効性について見てきた。ここでは、リーディング指導における教師側の適切な発問が、最終的に生徒(読み手)のテクストに対する自発的発問ひいてはメタ認知的読みに転移することが期待されているのである。
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