奈良教育大学英語教育研究会平成16年度7月例会 2004.7.31

日本の高校生の英文読解に関するプレリーディング活動の効果について


奈良教育大学大学院・奈良県立高田高等学校
徳永 憲昭

発表の概要

本発表のテーマは「日本の高校生の英文読解に関するプレリーディング活動の効果について」である。「生徒に対して英語の読解力をつけさせるために、授業の中で何か工夫できる方策はないか」という日頃の疑問と経験から、Readingの研究をテーマとしてこれを設定した。

まず、実際に、「読むこと」とはどういう活動であるのか。定義として、Reading(読み)について述べるならば、それは「読者とテキスト(著者)の相互的な活動であり、また積極的な対話である」と言える。その際、読者が積極的にテキストに働きかけるという意味においては、読者自身の背景知識をフルに活用していくことが必要である。そのために、「推測や予測を積極的に行う姿勢をもつことが大切である」と考えられる。(この考え方は、第1言語における読解過程を研究したGoodmanやSmithの理論に基づく)

Coadyはこの理論を第2言語習得の理論に応用し、「背景知識によって文法的知識が補えるのではないか」と考えた。つまり、読解過程における『背景知識の重要性』を示唆した。のちに、その読解過程における『背景知識』は、もとは認知心理学の分野で生まれた用語だったスキーマという言葉に置き換えられ、Rumelhartらによって、読解過程の理論として『Schema Theory』に受け継がれた。

さらに、読解処理過程は、Carrellらによって、Top-down Processing(一般的または概念的スキーマから情報を引き出し具体的なスキーマへと情報処理を進めていく)とBottom-up Processing(下層部の具体的スキーマから情報を引き出して上層部の一般的または概念的スキーマを引き出す)に整理され、「効果的な読解は、トップダウンとボトムアップの適切な相互作用である」と考えられ、L2読解ストラテジー研究の理論的基礎となった(Carrell and Eisterhold)。〔⇒SchemaはPrior-background Knowledgeとも言われる。実際にスキーマの活性化と言う場合、主にTop-down処理のことを言う。〕

しかし、第2言語習得・外国語習得(ESL/EFL)の場面では、未知語を意識し過ぎて、とかくボトムアップに頼りがちな読み方になってしまう。実際、読解活動とは第1言語の中でも示されているように、もっとトップダウンを利用した予測や推測を行う積極的な活動である(Goodman and Smith)。

それを具体的に「第2言語(ESL/EFL)の読解においても応用できないものか」と考えられてきた。つまり、生徒はボトムアップには長けていても、トップダウンをうまく利用できていない場面が多々ある。それゆえ、過去の先行研究においては、教室における読解指導の応用として、Pre-reading活動の中で、スキーマを活性化させるために「トップダウンを利用した読みを考えていく方法」を中心とした研究・実験が行われてきた。

過去の先行研究では読解処理に対しては、『Top-down Processing』が、『Bottom-up Processing』より圧倒的に有利であるという実験結果が、多く見られる。そこで私は、今回の研究においては、Pre-reading活動におけるトップダウン式とボトムアップ式についての効果を再度検証したいと考えた。特に、過去の論文の中で批判された条件がなるべくfairになるように工夫するとともに、過去比較されなかった実験群を作り、新たな活動も視野に入れながら、研究を行いたいと考えた。具体的な研究方法については、被験者をTB(TopとBottom)/BI(Bottomのみ)/TG(Topのグループ活動)/TI(Topのみ)/CT(統制群)に分け、実験を行いposttestの平均値は、次の順番となった。⇒TB>BI>TG>TI>CT

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