勉強になる白神山地の動画ビデオ 分かりやすく解説してくれてます。



世界自然遺産 「心の情景、白神山地」 (歌手、グレッグ・アーウィンの出会い)

2003年に放送されたTV番組です。感動の大作です。


広大なブナ林がおおう白神山地は東アジア多山地にかろうじて残された最後の原生自然である。
その由来がよくわからない固有の高山植物をもち、谷には日本の多雪山地を代表する美しいシラネアオイの紫の花が咲き、春には山菜の宝庫となり人やクマが集う。
また、ここには天然記念物のヤマネ、クマゲラ、ニホンカモシカ、イヌワシが生息する希少動物の住みかでもある。
この世界遺産を守る為には、入山規制しかないのだろうか?今一度、考える時にきている。


守られた自然の森
みなさんは日本の山の木というと,どんな木を思いうかべますか? スギ・サクラ・マツといったあたりでしょうか。現在,日本の山の多くは人工的に植林されたスギやヒノキの森になってきています。しかし,本来の日本の森は,もっとさまざまな木や草が生え,たくさんの生き物がすむところでした。そのような自然の森が広い面積で残っている貴重な自然遺産が自神山地です。

 日本地図を広げてみてください。本州の日本海側をどんどん北に進むと,いちばん北の青森県とその南の秋田県の県境に,標高1,000メートル前後のあまり高くない山地があるのがわかります。これが自神山地です。このあたりは開発から取り残された地域でしたが,それが幸いして貴重な森林が残されました。

ブナの恵み
みなさんはブナの木を知っていますか? 
北海道南部から東北にかけて広がっている落葉広葉樹林と呼ばれる森の中心がブナの木です。昔は中国やヨーロッパにもブナの大森林が広がっていましたが,いまはほとんどが失われてしまいました。そして現在残っている世界最大級のブナの大森林が,自神山地なのです。ブナは,きびしい寒さと雪にたえてゆっくりと成長します。実をつけるまで70〜80年,寿命は300年以上で,200年をこえる頃には直径1メートル近い大木になります。木肌は白くなめらかで,日本海側ではその上に茶・黒・青の苔がついて美しくなります。葉はたて長で,ふちが波をうっているのですぐわかります。
 ブナは,材木にすると腐りやすく曲がりやすいので,江戸時代は役に立たない木とされていました。しかし,ブナは多くの恵みを生き物にもたらしてくれます。冬の間,きびしい寒さにたえてきたブナの木は,春になるといっせいに若葉をしげらせ,大地を美しい緑でおおいます。夏の太陽をいっぱいにあびた木は,秋には実をつけます。脂肪分をたっぷりふくんだ実は,冬眠にそなえるクマなどの,貴重な栄養源です。
 そして,秋の終わりに黄金色に紅葉した葉は,やがて落ちて地表をおおいます。ブナの葉は分解されにくいので地面にあっくつもり,深い腐葉土となって,スポンジのように水をふくみます。たくわえられた水が川となって下流の土地や海をうるおすので,ブナの森は「緑のダム」とも呼ばれるのです。

 ブナの大木
ブナ林では,栄養ゆたかな土が多くの草や低い木をしげらせ,その恵みを受けたたくさんの動物や昆虫が育ちます。年をとって枯れかけたブナの木は,キノコの苗床となり,さらにカミキリムシの幼虫のすみかとなり,それを食べるキツツキがふえます。絶滅の危機にひんしている日本最大のキツツキ,クマゲラが,本州で唯一生息しているのも,白神山地なのです。

 クマゲラ
体が黒くて頭のてっぺんが赤い,体長46センチほどの大型のキツツキ。とがったくちばしで木をつついて,昆虫の幼虫などを引きだして食べます。枯れ木や地表の甲虫頬やアリも食べます。日本では,白神山地と北海道の原生林に生息しています。

 青秋林道反対運動
自神山地にすむ人びとは,昔からクマやウサギやイワナなどをとり,山菜やキノコ・薬草をとり、自然と共存しながら暮らしてきました。しかし,東北のなかでも秘境と呼ばれたこの地域の人びとは開発を強く望みました。
 1973年,その願いを受けて,自神山地を東西につらぬく弘西林道(現在の自神ライン)が開かれました。
しかし林道が開通すると,広大なブナの森は次々に伐採され,くずれた土砂が川をよごしました。また,都会から山菜とりの人や釣り人がはいりこみ,山を荒らしました。住民は,林道ができても自分たちの利益にはならないことを知ったのです。
 1982年,こんどは秋田県から青森県にむかって,自神山地中心部を南西から東北につらぬく「青秋林道」(せいしゅうりんどう)の工事がはじまりました。

最初に自然保護団体による反対運動がおこりましたが,その力は小さいものでした。しかし,工事が自神山地から流れる赤石川の上流にまで進んだとき,その下流にすむ住民たちが反対に立ち上がりました。この地域の人びとは,弘西林道ができてから,赤石川の水量が3分の1にへって名物のアユがとれなくなり,流れこんだ土砂が海の藻を死滅させて海の魚もとれなくなってきたことを肌で感じていたのです。「命の水をはぐくむ森を守れ」という運動は,ついに青森県を動かし,1987年に林道工事を中止に追いこみました。

 身近な自然保護運動
こうして守られた自神山地中心部の森は,1993年に世界遺産に登録され,日本が永久に守っていく義務を負うことになりました。しかし,保護しなければならないのは,白神山地ばかりではありません。いまも多くの貴重な自然が,破壊か保護かの瀬戸際に立っています。

 最近注目されているのは干潟の問題です。長崎県の諫早湾(いさはやわん)では,政府による干拓工事が強行され,広大な干潟が死の海と化しました。しかし,名古屋湾の藤前(ふじさき)干潟ではゴミ処分場の建設が中止され,東京湾の三番瀬では埋め立てか保護かの議論がつづいています。
また,お金をだしあい,自然の残る土地を買って保存する「ナショナルトラスト」運動が,日本でもはじまりました。
埼玉県と東京都にまたがる狭山丘陵(さやまきゅうりょう)では,森を買いとって「トトロの森」として保護する運動が,地道につづけられています。

わたしたちの身近なところにも,危機にひんしている自然があるかもしれません。
身近な自然をこれからも守り,次の世代に伝えていきたいものです。



                    Copyright (C) 2007 世界遺産.com All Rights Reserved
白神山地
(青森県・秋田県・1993・自然遺産)

世界的に減少傾向にあるブナ林が奇跡的に残された地域。人為的な影響も少なく クマゲラやイヌワシなどの天然記念物の住む地域でもある。
備考 白神山地はスタジオジブリの映画「もののけ姫」の舞台になったと言われている。

ブナの森の四季 / 白神山地の動画ビデオ
 

ブナ林

青池




日本の自然遺産へ戻る