闇翼の黒き狼 もう一つのエピローグ


1「レジスタンス・生き残りし者」

彼らが気がついた時、街はボロボロになっていた。

周囲は今まで見たことの無い場所である。

彼らはそれを変わり果てた世界だと思った。

多くの同胞はいつのまにか姿を消していた。

だが生き残りし者らもいる。

巨人族、小人族、人間、人工魔獣、力を失いし神族……。

彼らは街を作り、大地を耕していく。

生きるために、そして同じ過ちを繰り返さないように。

生きているからこそ、未来を築くことができるから。

本当の争いのない世界。全てのものが望みし世界を求め、彼らは生きていくであろう。

 

それが、たとえ自分達がいた世界でなかろうとも……。

 


2「ロキ」

オーディンはなにもない場所を漂っていた。

肉体は滅びても、その精神は健在であった。

彼の前にニーズヘグに話しかけていた若者が現れる。

「ひさしぶりだね、オーディン。」

「お前か、お前が邪魔をしたのか!ロキ!!」

オーディンはロキにつめよろうとした、だがロキに近づく事ができない。

「いつまでも欲をかいているからこうなるのさ。さっさと滅んでおけば苦しまずにすんだのに。」

「うるさい、わしは全ての世界を支配する神の王なのだ、わしが世界を支配しなければ……。」

「別、あんたが支配しなくても誰も困らないよ。いや、支配したほうが困る人が多いんだ。」

ロキは今まで見せたことのない真剣な表情でいう。

「それに、僕はあんたのことを憎んでいる。僕を汚し、僕の息子達を殺し、屈辱を与えつづけた。」

「フェンリルらはわしが殺したわけでは……。」

「違う!ヴァーリとナルヴィのことだ!」

「お前がおこして来た騒動を思えば、あの程度。」

「僕が騒動を起こし、それでお前はかなりの得をしてきた。

 お前は何を得た?グングニルにスレイニプル、ドラウプニル。それに巨人族を攻撃する口実だ。」

「ならば、我が子を殺した罪はなんとする。光り輝くバルドルを殺した罪を!」

「彼は死んだからこそ、ヘラの宮殿に守られラグナログで消えることはなく。そして蘇るはずだったのさ。」

彼はそこで会話を区切るとオーディンを真っ直ぐ見据えた。

「お前は知っていたはずだ、彼が死んだ後よみがえることも、お前がフェンリルによって殺されることも。

 知っていたからこそお前は策略を用いた。自分が生き延びるために。

 ラグナログを起こさせないように。スルトを封じた。それが予言に変化を与えた。

 お前の予想通り、ラグナログで神も魔も滅びず、長き眠りについたのみだった。

 その代わり死んだバルドル達は蘇らなかったがな。」

ロキからは今まで感じられない迫力があった。オーディンは動く事ができない。

「お前は自分の息子を犠牲にして生き残ったのだ。」

オーディンはなにも言えない、それらは全て真実だったから。

「予言者であるお前が自分で予言を歪めたのだ。別それが悪いとはいわないよ。誰もが生き残りたいからね。

 けどね、笑えない冗談ほど許せないものはないんだよ。」

ロキが左手をオーディンにむけた。

「さよなら。」

次の瞬間オーディンは消滅した。

「さて、僕もこのままここで一生を終えようかな。もう道化でいるのも疲れたから。」

そう呟くとロキは瞳を閉じた。

 


3「緑樹、紫授、橙破」

彼女らは世界の狭間で漂っていた。

生と死の狭間で彼女らは漂っていた。

他の者らの魂はすでに消えていたが、彼女らは消えずに残っていた。

そこに金龍の翼を持った金の鎧をまといし騎士が現れる。

彼のそばには橙破の姿もあった。騎士は橙破となにか話している。

橙破が諦めたように頷くと、騎士は彼女らを連れて姿を消す。それを追って橙破も姿を消した。

やがて彼女らは魔創武具と呼ばれる力を得て、さらなる戦いに巻きこまれる事となる。

 


4「兵士」

どれだけの時が過ぎたであろう、一人の兵士が森の中で目を覚ました。

「なにがあったんや?」

彼が森から出ると、そこは荒野になっていた。

彼は生きている物を探しさまよった、だが彼の知る場所は1ヶ所もなかった。

「レジスタンスの街も、アスガートもヨツンヘムも無いのか。いったいなにがあったんや?」

彼の疑問に答えるものはなかった。

やがて彼は生き残っていた女性に出会う、そして新たな世界の始祖となる。彼の名はリーヴという。

彼は後の世のためにある書物を書き残した。

多くの争いが起こした災いと、人々をまとめし漆黒の狼のことを。

 


5「ヴァイスォード」

彼女は世界の狭間を飛んでいた。自分の作られた目的を果たすために。

ディウォルフを倒すために彼女は様々な世界を旅していた。

だがディウォルフを見つけることはできなかった。

やがて彼女は次元の狭間で眠りについている女性を見つける。

彼女の名は白雨、彼女との出会いがヴァイスォードに新たな目的を作ることとなる。

 


6「運命の記録者」

全てを見ていた男が目を閉じる。

自分は見ていることしか、記録することしかできない。

どのような結末が来るかわかっていても干渉できない。

記録者データニアは自分の境遇に溜息をついた。

「それでも、私は、記録を続けなければ……。」

彼は本を閉じた。

「できるなら、新たな世界が同じ過ちを繰り返さぬように……。」

 


 

こうしてある世界は終わり、新たな世界が生まれる。

それがどういうことか、重大なことなのか。それは自分にはわからない。

ただこれだけは言える。生き残りし者らは生きていくということ。

生きて新たな歴史を築いていくということ、それだけは絶対である。

それがどのような物語になろうとも。彼らは生き続けるであろう。

 

 

THE・END


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