君達は【世界は一つ】だと思っていないか?
いや、それは違う。
多くの可能性から世界はいくつにも枝分かれし、多重平行世界や多重次元世界をつくりだしている。
いくつにも存在する世界を行き来する技術を次元跳躍【D−リープ】と言う。
これ、またはこれと類似した技術を持った文明は他の次元への干渉をはじめた。
だが、それは他の世界に与える影響が大きく下手すると世界のバランスを崩す危険性があった。
そのため、多重平行世界の存在を知らない世界への文化に対する大きな干渉は禁止された。
そして他の世界に対する侵略や犯罪行為を取り締まる組織がそれぞれの世界で設立された。
だが、次元犯罪はなくならなかった。
世界は広く、その全てを把握する事はいまだできていなかったからである。
そして、ある世界にある蒼き星、太陽系第三惑星【地球】にも、その魔の手は迫っていた………。
第1話
「誕生・雷剣士」
「うわぁっ、寝過ごした!」
僕は慌てて飛び起きると服を着替える。
「おはよう!」
そして用意してあった朝食をとる。
「あまり慌てると喉に詰まるわよ。」
母さんがそんなこと言っているけど、ゆっくり食べてたら約束に間にあわないよ。
そうそう、自己紹介がまだだったね。
僕の名は月崎雄也。
スポーツも勉強も大体平均ぐらいの小学5年生。
父さんと母さんの3人家族だよ。
父さんはある研究所で新型の電気自動車の開発をしているんだ。って、急がないと遅れちゃうよ。
朝食を終えて、歯磨きもして愛用のリュックサックを掴むと玄関に出た。
「いってきまーす!」
家を出て、待ち合わせの場所に急ぐ。
遠くの方に数人の人影が見える。
「ごめん、遅くなって。」
「また、寝坊か?いつも寝坊しているよな。」
彼は風見翔護。僕と同い年なのにスポーツ万能、ゲームの天才、その上カッコ良くてクラスの人気者なんだ。
まあ、僕にとっては仲のいい幼なじみなんだけどね。
「そんなことないよ。」
「そうよね、雄也くん。」
僕の反論に同調してくれたのが雪塚真希ちゃん。僕と同じクラスで2年前この街に引っ越してきたんだ。
引っ越してきたばかりで道に迷っていた彼女を案内してあげた事が縁で知りあったんだけど。
まさか次の日に僕のいるクラスに転入してくるなんてね。
真希ちゃんも運命の出会いとか言って、そのままなし崩し的に付き合うことになったんだよね……。
「まあいいや、雄也も来た事だし行こうか。」
そう、今日はこのメンバーで電子博覧会を見に行くんだ。
「たしか、雄也の父さんが開発したって言う新型電気自動車のお披露目式もあるんだよな。」
「そうだよ。」
翔護に答える、まあ翔護の目的は新作のテレビゲームだろうからあまり興味はなさそうだけど。
「すごい人だな。みんなどこだ?」
すでに人ごみにまみれ、姿が見えなくなった翔護の声が聞こえる。
初日だと言うのに、いや初日だからか会場は混みに混んでいた。
「真希ちゃん、大丈夫。」
「うん、けどしっかり手握っててよ。」
もみくちゃにされながらも僕と真希ちゃんはなんとか人ごみから出ることができた。
僕と真希ちゃんは広場に出て、そばにあったベンチに座った。周囲に人はいない。
「おや、雄也じゃないか?」
急に後から声をかけられた。この声は。
振り向いた所に白衣姿の男性がいた。ただ、木から反対にぶら下がっていたけど。
「父さん…。」
そう、この人が僕の父さん、名前は智彦って言うんだけど……。なんでこんな所に……。
「こんにちは、おじさん。」
「おっ、真希ちゃんじゃないか。そうか、デートか。」
「はい。」
妙に気が会うこの2人を横目に僕は言った。
「なんで、こんな所に、しかも逆さまに。」
「ああ、この木の上で昼寝してたんだけど、雄也の声が聞こえたんでね。」
そう言うと、父さんは木から降りた。
「あの、新型の電気自動車の発表に行かなくて良いんですか?」
真希ちゃんが父さんに尋ねる。
「なあに、僕のやるべきことは終わったし、それにああいう場は好きじゃないんだ。」
そう言っていつものように笑ってみせた。
父さんはいつもそうだ、仕事を一番がんばっているのにその成果を他の人に譲り渡してしまう。
いつまでも現場にいたいからって言ってたけど、ようするに目立ちたくないんだろうなあ。
「おっと、もうこんな時間だ。雄也と真希ちゃんの邪魔しちゃいけないし、そろそろいくよ。」
そう言うと、父さんは向こうに歩いていった。
「ねえ、雄也くんのお父さんって、いつ見ても不思議な人ね。」
「うん。」
僕はただ頷くしかなかった。
建物に戻った僕達は翔護を探していた。
「まあ、翔護くんの事だから、ゲームコーナーにいるんでしょ。」
真希ちゃんが言う、まあその通りだと思うけど。
で、結局ゲームコーナーで熱中している翔護を見つけた。
「翔護、もう行くよ。」
僕の呼びかけに消護が気がつき、こちらに来た。
「で、その手に持っている紙袋は何かな?」
「ああ、ゲーム大会に飛び入り参加してね。その賞品。」
真希ちゃんの問いに翔護が自慢そうに言った。
「あれが、新型の電気自動車か。外見は普通だな。」
翔護が言った通りそこにあったのは普通のスポーツカーだった。まあデザインは結構良いと思うけど。
「たしか電気自動車って、充電とかが大変で、少しの距離しか走れなかったんだっけ。」
真希ちゃんが尋ねる。
「うん、だけど新開発のトールシステムによって、その問題を解消したんだって。」
「トールシステム?」
「トールシステムは電気エネルギーを増幅するシステムって父さんが言ってたよ。」
僕が父さんに聞いた事を真希ちゃんたちに話した。
「へえ、なんかすごいな。」
翔護が驚いたように言う。まあ、僕も聞いた時には驚いたけど。
なんで、電気自動車に取り付けたんだろう。色々理由があるんだろうけど。
「ねえねえ、外で走らせるみたいだよ。」
真希ちゃんが言った通り黄色の電気自動車が会場から外に出ていった。
会場の外にあるコースを電気自動車がスムーズに走っていた。
「なんだ、あれは!」
後ろの方で電気自動車を見ていた男性が空を指差している。
あれは……ロボット!?
宙から二体のロボットが落ちてきた。
大きさはビルより少し小さいぐらい、灰色のボディーカラーに目の部分は赤色、手には銃を持っている。
けど、あんな大きさの2足歩行できるロボットなんて知らないぞ。
って、なんでこっちに向かってきてるんだ?
ロボットはビルを破壊しながら真っ直ぐこちらに向かっている。
「みんな逃げるんだ!」
誰かの声があがると逃げ惑う人々によって会場はパニック状態に陥った。
僕達もその場から逃げる。
「きゃっ!」
となりにいた真紀ちゃんがころぶ。
「真希ちゃん!?」
振り向いた僕の目の前に巨大なロボットの影があった。
ロボットの手が建物を砕き、それが僕と真紀ちゃんに降り注ぐ………避けられない!
「雄也!真希ちゃん!」
翔護の叫び声が聞こえる。
「真紀ちゃん!」
とっさに僕は真紀ちゃんをかばった。
一瞬、光が走ったように感じた。
いつまでたっても瓦礫は僕達に降り注がなかった。
「なにが…。」
かたわらには倒れている真紀ちゃんの姿があった。怪我は無いようだけど。
「雄也くん…。私、生きてるの?」
「良かった……真希ちゃん。」
どうやら大丈夫のようで安心した。
なにがおこったんだろう。瓦礫はたしかに僕達に降り注いできた。夢なんかじゃない。
その証拠に建物は壊れているし、ロボットはまだいる、その前には………。
ここで僕は気がついた、そのロボットの前に金色に輝く光の獣がいる事を………。
光の獣はロボットに向かって走り始めた。
ロボットは腕を振るいその獣を殴ろうとしたが獣は素早くかわす。
あのロボットと戦っているのかな?
僕と真紀ちゃんはしばらく光の獣とロボットの戦いを呆然と見ていた。
「雄也、真紀ちゃん。ぶじか?」
翔護の問いに僕達は頷く。
その間にも光の獣とロボットの戦いは続いていた。
もう一体のロボットが獣に向かって銃を乱射する。
銃弾は獣をはずれこちらに…って。またか!
「あぶない!」
若い男性の声とともに光の獣がこちらに向かって来ると銃弾を体で受け止めた。
「くぅっ、大丈夫ですか。」
光の獣が尋ねる。
「しゃべってる……。」
真紀ちゃんが驚いている。まあ、僕も驚いているんだけど。
そうか、さっき瓦礫が消えたのもこの光の獣のおかげだったわけか。
「しかし、どうすれば……この地では僕の力が使えない。」
光の獣の輝きが少しずつ薄れてきている。
さっき銃弾をうけたこともあってか、光の獣のエネルギーが消費されているようだ。
2体のロボットが僕達に向かって来る。
「エレメントテクターがあれば……。」
光の獣がロボットを睨んでいる。
次の瞬間、黄色いスポーツカーがこちらに飛びこんで来た。
「乗って!雄也!!」
「父さん!」
僕達は父さんの運転する黄色いスポーツカーに慌てて乗りこんだ。
ロボットが銃を撃った時には、スポーツカーは猛スピードでその場から脱出していた。
しかし、真希ちゃんが無理やり光の獣も乗せちゃったんだよね。ちょっと狭い。
「ありがと、父さん。」
僕の声を聞いた父さんはバックミラーを見て言った。
「まだ、助かったわけじゃなさそうだぞ。」
後部座席に座っていた僕と真紀ちゃん、光の獣が後を見る。
「追っかけてきてる!」
ロボットがこちらにむかって走って来ている。今の所、差は開いているから安心だけど。
「はは、まいったなぁ。」
父さんの陽気な声が聞こえる。なんかすごくいやな予感がする。聞かないほうがいいような…。
「どうしたの?おじさん。」
真希ちゃんが父さんに尋ねる。
「電気がきれた。」
あっさり答える父さん。って、ちょっとまってよ!
「いやあ、テスト走行だけだったのであまり充電してなかったんだよねえ。」
そうこう言ってる間にがたんと言う音がしてモーターが停止した。
「降りて、走って逃げるんだ!」
僕達が車から出た時には、すでにロボットが目の前に来ていた。
「ここまでか…。」
翔護が諦めたように呟く。
ロボットの銃口が僕達に向いた。
「あの車は電気で動いているのでしたね。」
光の獣が尋ねる。こんな時になにを聞いてくるんだ?
「そうですよ。」
やけにのんきに父さんが答えた。
「なんとかなるかも…。」
光の獣がそう言うと、車に向かって走った。
ロボットはその獣に狙いを定める。放たれた銃弾が獣をとらえたかに見えた。
だが、獣の姿は消えてなくなっていた。
次の瞬間、車のヘッドライトが光り車が動き出した。
猛スピードで走る車はジャンプすると、ロボットの胸にぶつかった。
バランスを崩したロボットはそのまま後向きに倒れる。
「このメカを使わせてもらいます。」
車から聞こえる声は、間違いなくあの光の獣の声であった。
「フォーマット・リング!エレメントテクター!!」
車がジャンプすると同時に光の輪が現れ車を包む。
「モード・チェンジ!」
宙に舞った車のガラス部が不透明な黒色に変わると、リア部が上方180度回転して脚に、
左右に分かれたフロント部が肩に、ドアを含むサイド部が腕に変わる。
腕から拳が現れ、脚の先からつま先が出て、最後に頭部が現れる。
地面に着地したその姿は黄色の脚と肩、白い腕には黄色の盾。胴体は紺色に黄色のラインが入っている。
そして頭部は額の部分に緑色の宝石がはめられた黄色の兜、顔は人間に似ているが目は緑色で瞳はなかった。
「雷剣士、ライティ!」
そしてその声はやはりあの光の獣の声だ。あの光の獣が父さんの開発した電気自動車と合体してロボットに…。
「これは……力が……あふれてくる。」
ライティは驚いたように言う。
灰色のロボットは突然現れた黄色の剣士に一瞬動きを止めていたが、銃を構えるとライティを攻撃した。
ライティは両腕の盾でその攻撃を防ぐとそのロボットを殴る。
ロボットは大きく宙に浮かび地面に叩きつけられた。
「はやく、逃げるのです。」
ライティの声に我を取り戻した僕達は逃げ出そうとした。
けど別のロボットが僕達の逃げ道をふさぐ。
「邪魔をするなっ、スパークバインド!!」
ライティの声と同時にその左腕から雷撃の鞭が伸び、そのロボットに絡みついた。
「うおぉぉぉぉぉ!」
そのまま、ロボットをさっき殴り飛ばしたロボットのほうに投げ捨てる。
「サンダーソード!」
ライティが腕のシールドから剣を取り出す。
刀身がのび、ライティと比較するとショートソードぐらいの長さの長剣になる。
「スパークバインド!」
雷撃の鞭が二体のロボットを絡め取り宙に浮かべる。
「もらった!」
ライティは空中に浮かぶロボットを剣で斬り裂いた。
ロボットの身体が上下にずれ………。
ライティが着地すると同時に、二体のロボットは爆発四散した。
僕達は、たたずむ雷剣士の勇姿を見上げていた。
次回予告
僕達はライティから意外な事を聞かされる。
ライティの正体、そしてこの世界を狙っている存在がいることを。
とにかく、騒ぎにならないようにライティのことは秘密にしようってことになったんだけど。
町に再びロボットが現れた。
この前のより強いそのロボットに追い詰められるライティ。
けど、その時父さんの造ったシステムの真の力が開放されたんだ。
次回、雷勇者ブレイブライティ
第2話「敵の名はゼグル」
今、新たな伝承が刻まれる。
シークレットコード『トールシステム』