FZ10・FZ20情報集積所 パンフォーカス写真を撮るには

※このページで使っている数値はあくまでもFZ10、FZ20に当てはまる数字であって、他の12倍ズームのカメラ(たとえばFZ1、2、3やコニカミノルタのZ3など)には当てはまりませんのでご注意下さい。
 FZ10・FZ20で風景写真などを撮ろうとする場合、FZ20では風景モードというモードを使ったり、風景モード以外では遠景にピントを合わせることで普通に風景写真を撮ることが出来ます。風景モードのないFZ10でも遠景にピントを合わせることで、同様に普通に風景写真を撮ることが出来ます。しかし、それでは厳密には、手前から奥までピントが合ったように見えるパンフォーカスにはなりません。また、FZ10、FZ20には簡単に無限遠(大)にピントを合わせるモード、ダイヤルもありません。そこでこのページでは手前から奥までピントが合った(ように見える)パンフォーカス写真を撮るにはどうしたらいいかを考えてみました。

 理論はどうでもいい、結論だけを知りたいという方はこちらをご覧下さい。
フィルムカメラ(35mm)の過焦点距離
 『過焦点距離とは、「無限遠が被写界深度内に入る」という条件のときに、最もカメラに近いピント位置からカメラまでの距離のこと』(学研「図解 写真の基礎知識」67頁)です。そして、この「過焦点距離にピントを合わせると、後方は無限遠までシャープに写り、手前は過焦点距離の半分までがシャープに写る(同)」ということです。つまり、この距離がわかれば、いわゆるパンフォーカス写真が取れる距離の範囲がわかるわけです。その計算式は以下のようになります。
過焦点距離=(焦点距離)2/絞り値/0.033
具体的に計算してみると、焦点距離が35mmでF2.8の時は、
過焦点距離=352/2.8/0.033=13257.575mm
となり、13.2mのところにあるものにピントを合わせると、その半分約6.6mより無限遠までピントが合う(合ったように見える)ということがわかります。これがF8.0なら4640.1515mmとなり、4.6mにピントを合わせれば、その半分の約2.3mより遠くのものにならピントが合うということになります。焦点距離が420mmの場合、絞りがF2.8なら約954m、F8.0なら約334mということになります。
デジタルカメラの過焦点距離
 ところで、FZ10の場合はデジタルカメラなので、フィルムカメラの計算式をそのまま当てはめるわけにはいきません。フィルムカメラとデジタルカメラで違うのは「焦点距離」と「0.033という数値」です。ここで、FZ10のレンズの「焦点距離」はカタログに書いてあるとおり6-72mmです。残る問題は「0.033」という数値です。実はこの数値は許容錯乱円という数値を表していて、人間の目で見て35mmフィルムの場合直径1/30mm以内なら焦点が合っていなくても(ボケていても)判別できないという数値なのです。(厳密には、キャビネサイズにプリントした写真を明視距離(センチ)で普通の目の分解能(角度の秒)を持った人が見る(フォーマットサイズによる被写界深度の変化から引用)ことを前提としているそうです。
 さて、デジタルカメラでいうところの許容錯乱円というのがいったいいくつになるのかです。こちらのサイトにその計算式が載っていました。それによると、以下の式から導き出すことが出来ます。
許容錯乱円径=フィルムやCCD・CMOS画面の対角線長さ/許容錯乱円径用の定数
 また、許容錯乱円径用の定数は1300とされている(同サイト)ので、それらをすべて加味すると、デジタルカメラの過焦点距離の計算式は以下となります。
過焦点距離=(焦点距離)2/絞り値/許容錯乱円
但し、許容錯乱円径=フィルムやCCD・CMOS画面の対角線長さ/1300

 

FZ10の過焦点距離
 さて、上の式からFZ10の過焦点距離を求めてみたいと思います。まず、許容錯乱円を求めなくてはなりません。FZ10CCDの縦横のサイズは4.44*5.92(こちらのサイト)なので、それらを加味したFZ10の許容錯乱円の値は、
√(5.922+4.442)/1300=0.0056923
 となります。よって、過焦点距離の計算式は以下のようになります。
過焦点距離=(焦点距離)2/絞り値/0.0056923
 上の式に基づいて実際に計算してみると、FZ10の過焦点距離は、焦点距離が6mm(35mm相当)の場合、F2.8で約2.3m、F8.0で約0.8mで、焦点距離が72mm(420mm相当)の場合、F2.8で約325.4m、F8.0で113.9mとなります。よって、実際にピントが合って見える範囲は、ワイド端F2.8で1.15m-∞、F8.0で0.4m-∞、テレ端F2.8で162.7m-∞、F8.0で57m-∞ということになります。このようにして求めた答えを主な焦点距離と絞りについて表にしたのが以下です。 ピントを下の表の過焦点距離に合わせると、それより後方には無限遠までシャープに写り、手前は過焦点距離の半分までがシャープに写ることになります。()内の数字がピントが合う範囲となります(いずれも小数点以下2桁を四捨五入)。
  35(6)mm 70(12)mm 105(18)mm 175(30)mm 280(48)mm 420(72)mm
ワイド端 2倍 3倍 5倍 8倍 テレ端
F2.8 2.3m(1.1m-∞) 9.0m(4.5m-∞) 20.3m(10.1m-∞) 56.5m(28.2m-∞) 144.6m(72.3m-∞) 325.4m(162.7m-∞)
F4.0 1.6m(0.8m-∞) 6.3m(3.1m-∞) 14.2m(7.1m-∞) 39.5m(19.7m-∞) 101.2m(50.6m-∞) 227.8m(113.9m-∞)
F5.6 1.1m(0.5m-∞) 4.5m(2.2m-∞) 10.2m(5.1m-∞) 28.2m(14.1m-∞) 72.3m(36.1m-∞) 162.7m(81.3m-∞)
F8.0 0.8m(0.4m-∞) 3.2m(1.6m-∞) 7.1m(3.5m-∞) 19.8m(9.9m-∞) 50.6m(25.3m-∞) 113.9m(56.9m-∞)
過焦点距離と被写界深度を計算できるページ
撮影現場で携帯電話などの電卓機能を使って簡単に過焦点距離を求める数式
焦点距離(35mm換算)*焦点距離(35mm換算)/F値/193.69=過焦点距離(m)
被写界深度を一気に計算できる便利なサイト
 こちらの被写界深度の計算というサイトでは、被写体までの距離を入力し、カメラのところでFZ10を選択し、焦点距離を入力すると、各絞りの時のピントが合う範囲が一気に表示されます。その名の通り被写界深度を求めることができます。たとえば、被写体までの距離を0.8mと入力し、35(6)mm、F8.0のところを見ると、「0.397m-∞」と表示されます。
実際にはどうか?
 上の数字が正しいかどうか、実際に撮影してテストしてみました。テストの条件は、焦点距離35(6)mm絞りF8.0で、ピントを合わせる被写体の距離を約0.8mと約50mとしました。下の写真の赤丸がピント位置です。
F8.0でピントは約0.8m先 F8.0でピントは約50m先
 下の2枚は、F8.0で、約0.8mのところにピントを合わせた時の、それぞれ約0.8mと約50mの部分をピクセル等倍で切り出したものです。下の2枚は、同じくF8.0で、約50mのところにピントを合わせた時の、それぞれ約0.8mと約50mの部分をピクセル等倍で切り出したものです。
F8.0でピントが約0.8mの時の約0.8m位置のピクセル等倍写真 F8.0でピントが約0.8mの時の約50m位置のピクセル等倍写真
F8.0でピントが約50mの時の約0.8m位置のピクセル等倍写真 F8.0でピントが約50mの時の約50m位置のピクセル等倍写真
 これをご覧いただくと、右側の写真2枚がピントの合い具合としてはどちらも同じような感じになっているのに対して、左側の2枚は上の写真はピントが合っていて、下の写真はわずかにボケていることがおわかりいただけると思います。つまり、焦点距離が35(6)mm、F8.0の時は、カメラから約0.8mのところにピントを合わせれば、奥のほうまでピントが合うのに対して、約50m先にピントを合わせた場合は、手前のほうはピントが合わないということがわかります。

 

まとめ
 これらから、FZ10、FZ20でパンフォーカス写真を撮りたい時は、過焦点距離にピントを合わせて撮影すればよいことがわかりました。過焦点距離の計算式は以下です。
過焦点距離(m)=焦点距離(35mm換算)*焦点距離(35mm換算)/F値/193.69
数字を入力するだけで計算できるページはこちらです。撮影現場で計算したいときは携帯サイトをご覧下さい。
なお、露出の具合や光線の状態などによってもシャープさの印象が変わりますので、ピント操作以外にも気をつけなければならないこともあります。
参考にしたサイト
猫、将棋、凧-カメラの被写界深度の比較
被写界深度の計算
吉川本舗-被写界深度と過焦点距離について
Naney's Web Site-Naney 所有のカメラ - オリンパス Pen D -
PHOTO Q-光学の基礎知識・用語
PHOTO TAKEMOTO-13.被写界深度とパンフォーカス
デジ’s ギャラリー-フォーマットサイズによる被写界深度の変化
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2004/4/13作成
2004/4/15追記
2004/4/20追記
2004/8/17改定
2005/1/7追記