インダクタンスの簡易測定

 コイルのインダクタンスを簡易に測定します。この測定法ではコイルの直流抵抗が少ないことが条件になります。正弦波発振器、交流電圧計、可変抵抗器、それに被測定のコイルの構成になります。最近では、マイコンを使ってワンタッチで液晶表示するものがありますが、測定の原理を知って原始的な方法を使ってみるのも面白いと思います。

測定器で実証

 実数部VRと虚数部VLの値が同じですので、Fig.4のようにVL,VR,Vsは、直角2等辺三角形の高さ、底辺、斜辺に相当しますから、斜辺に相当するVsを√2=1.41Vにすれば高さ、底辺に相当するVL,VRは1Vになります。これがVL=VRとする理由です。
一例として22Ωの抵抗では、220μHになるはずですので、V
L、VR、Vsを実測して検証してみます。

Fig.2:
可変抵抗器Volumeの両端の電圧V
Rを読取ります。インダクタンスを測るのが目的ですので、電圧計は交流電圧計です。
Fig.3:
コイルLの両端の電圧V
Lを読取ります。
 V
L=VRになるようにVolumeを調整します。このときのVolumeの値はコイルのリアクタンスXLです。 XL=ωL ですので L= XL/ω となります。
 ω=2Πf に f=15,900Hzを代入するとω≒100,000=105 となります。
すなわち Volumeの値を100,000(=105)で割った値が求めるコイルのインダクタンスになります。L=R・10
-5=10・R・10-6
インダクタンス L の単位をμH(マイクロヘンリー)で表すために(Volumeの値)を10倍することになります。

 オーディオジェネレーターの周波数を15.9KHzに合わせます。

Fig.3

Fig.1:
@ 信号発生器SG、可変抵抗器Volume,インダクタンスLを直列に接続します。
A SGの周波数は15,900Hz(正確には15,915Hz)にします。この周波数にする理由はωを切りの良い数字にするためです。
B 出力レベルVsは1.5V程度にします。

Fig.2

Fig.1

トップページへ戻る

 電圧計を見ながら、オーディオジェネレータの出力Vsを1.41Vに合わせます。電圧計はアナログなら0.5級以上が望ましいです。針式のテスターは2.5級です。ここではHPのマルチメーターを使いました。

Fig.4

 VLは0.919Vでした。 1Vに対して−8.1%
使用したインダクタの表記は221でしたので220μHで誤差20%のものですから、妥当な値と思います。

 VRは0.958Vでした。 1Vに対して-4.2%
使用した抵抗は22Ωで誤差5%のものですのでこれも妥当な値です。

 インダクタンスのより小さいものに関しては、測定周波数は高くする必要がありますが、リード線やクリップ等のインダクタンス及び浮遊容量が効いてくるので、誤差が大きくなってくると思います。使用する電圧計の分解能が要求されます。
 この測定法は、周波数を変えてみることにより、色々バリエーションが考えられますが、基本は直角2等辺3角形です。コイルの種類により最適な周波数を見つけてみるのも面白いと思います。