HPのSG 8648修理

 HPのSG 8648の電源が急に入らなくなりました。
まず、FUSE、電源スイッチを疑いましたが問題ありませんでした。
スイッチング電源の入口には100Vが来ているのは確認できましたので、スイッチング電源に不具合があるようです。スイッチング電源基板を調べて行きます。
まず筐体をばらしていきます。
筐体のネジは特殊ですのでT-15のドライバチップが必要です。

         

 背面のネジを外します。取っ手も外す必要があります。

        

        

        

        

スイッチング電源を取り外し調べていくようにします。基板の品番は0950-2293です。

        

 スイッチング電源に直接、AC100V電源を接続しましたが、出力端子には出力がありません。
出力はDC5V、15V、-15V、35Vの4系統です。
全波整流のDC140Vは出ていました。
1次側の回路をリバースしてみました。




 発振回路はMOSFETとトランスとコンデンサで発振させるようですが発振していません。
FETのバイアスはDC140Vから抵抗で分圧して作っているのですが、おおまかには470KΩと22KΩで決めているようです。
ということは470Kが疑わしいということになります。
この470Kを取り外し抵抗値を測ってみましたがオープン不良になっていました。
DC140Vで使用しますのでもろにかかったとしても0.04Wですので、1/4Wの抵抗に付け替えたところ復旧しました。表示部は輝度ムラがあったのですが、心なしか良くなったような気がします。

        

 このスイッチング電源はほとんどディスクリート部品だけで構成されています。特殊なのはトランスだけです。ICは可変シャントレギュレーターが4個使われています。
1次側の電解コンデンサは470μF/450Vですが、少し膨らんでいるようでしたので手持ちの470μF/200Vに換えましたが、変化がなかったので元に戻しました。この電解は多少容量減があってもリップルが増える程度で発振には影響しにくいと思います。
発振用のNch-MOSFETは500V8Aですが、最初に疑ってましたので2SK1155(450V5A)に換えましが、変化がなかったのでもとにもどしました。
トランジスタは左からエミッタ、ベース、コレクタになっており少々戸惑います。
トランスの巻き線は基板から外してみなければ分かりませんので面倒ですが外して調べました。スイッチング電源はトランスを中心に構成されているので仕方ありません。
T13とQ1による発振回路は上記の回路図のようになっていました。R1の470Kがオープン不良だったのでQ1のゲートにはバイアスがかからない状態で発振していなかったのです。
ST11は2次側からの帰還信号が発生します。
電源電圧はAC264Vまで保証されているので、この電圧の場合DC電圧は約372Vになります。この時R1は約0.3Wになります。もともと付いていたカーボン抵抗は1/4Wですので、仕様上問題があったのかもしれません。

                

 発振はRCC(RingingChokeConverter)方式、又は自励式フライバックコンバータとも言われているようです。AC電圧を直流にかえMOSFETで数10kHzでスイッチングしています。
Q1がONでT13に電流が流れ磁気エネルギーをため、OFFでT13-CR2-R2でループ電流が流れ2次側に伝達します。
発振の起動はR1-R7-R9を通じてQ1の入力容量に充電されゲート電圧が上昇し、一定の値になるとQ1はONします。
ドレイン電流が流れるときにはトランス1次側にエネルギーを溜めます。Q1がONするとゲートーソース間はショートされ電荷が放電しOFFになります。
OFFになるとトランス1次側に蓄積されたエネルギーによって逆起電力を生じ2次側のダイオードがONし伝達されることになります。

 このSSGはヤフオクで落札したものですが、どのような電源環境で使用されたかは不明です。今回の不良の原因は470KΩだったのですが、先述したように電源電圧が高い状態ではこの抵抗の定格を超える可能性があります。電源電圧の仕様はAC90〜264Vです。AC264Vでは全波整流後DC372Vになります。このとき抵抗は294mWになり1/4W=250mWを超えてしまいます。AC240VではDC338Vで243mWでギリギリ抵抗の定格内です。AC240Vの地域で使用されていた物であるということが想像されます。 

トップページへ戻る