アッテネータの製作

 スペアナの入力回路保護のため、π型アッテネータを製作しました。使用しているスペアナTR4131の許容最大入力は+20dBmです。スペアナの電源を入れたときは、デフォルトで10dBのアッテネートになっていますが、設定ミスや、その他不測のことを考えて、外付けのアッテネータを作ることにしました。スイッチを設け減衰度を0dB、10dB、20dB切り替えできるようにします。減衰度を正確にするためには、π型を構成する2つの抵抗値を計算して、その値の抵抗値で構成する必要があります。その場合抵抗値の種類の多いカーボン抵抗ということになりますが、定格電力の大きいカーボン抵抗となると入手が困難、また組み合わせて抵抗値をあわせると複雑になります。そこで若干の誤差を我慢して、入手しやすい2Wの酸化金属皮膜抵抗器の100Ωと150Ωだけを使いました。

 SPICEでシュミレーションした結果です。
上から信号源、-10dB、-20dBのレベルを表しています。

 数値的には結果として、ほぼ満足のいくものになりました。スイッチのレバーを操作するときに電源のハムを誘導してしまいますので、金属ケースに収納する必要があります。そのうえでスイッチをリレーに替えて、PICでリモート操作したいと思っています。いつのことになるか分かりませんが。

(C) スイッチのレバー位置をSW-A L、SW-B 不定、SW-C L、SW-D Lにしたときは、2段のπ型のアッテネーターで、下図の(a)になります。(a)の回路は(b)、(c)、(d)と変遷します。合成抵抗値は(d)より100//(75+34.2)で52.2Ωになります。減衰度は(b)図においてB点で75Ωと34.2Ωの分圧になるので 20log(34.2/109.2)より-10.08dBになります。更に、C点の電圧はB点の電圧を75Ωと33.3Ωで分圧されるので、ここでの減衰度は20log(33.3/108.3)より-10.24dBになり、全体で-20.32dB減衰することになります。

(B) スイッチのレバー位置をSW-A R、SW-B L、SW-C R、SW-D L にしたときは、1段のπ型のアッテネーターで、下図の(a)になります。(a)の回路は(b)、(c)と変遷しますが、A点から負荷側をみた合成抵抗値は 100//(75+33.3)で52Ωになります。減衰度は75Ωと33.3Ωの分圧になるので 20log(33.3/108.3)より-10.2dBになります。キッチリ50Ω、-10dBにならないのは抵抗値を決め打ちしているからです。

 抵抗は2Wの酸金です。左端のSGには信号源を、右端のLOADにはスペアナをつなぎます。SGの出力インピーダンスと、スペアナの入力インピーダンスは50Ωとしています。スイッチはオルタネート型を使います。スイッチはSW-A、SW-B、SW-C、SW-Dの4個で、接点にR、Lとあるのは、スイッチのレバーの位置がRight(右)、Left(左)を表します。どちらでも良い場合は不定です。75Ωは150Ωが2個並列です。

 4つのスイッチA,B,C,Dと減衰度の関係は右の表になります。0dBは3パターン、-20dBは2パターンの組み合わがあります。-10dBは1パターンだけです。表には記載していませんが、RLRRで-12dBになりますが、回路の整合が取れません。その他の組合せにおいては、-52~-60dBになっていますが、アイソレーションが十分でないためと思います。

 スイッチA,B,C,Dのレバー位置を-20dBに設定したときのスペアナの表示で、-30dBmになっており-10dBから20dBの減衰です。

 次にスイッチA,B,C,Dのレバー位置を-10dBに設定したときのスペアナの表示で、-20dBmになっており-10dBから10dBの減衰です。

 スイッチA,B,C,Dのレバー位置を上の表の0dBに設定し、SGから10MHzを入力し、スペアナの表示を-10dBmになるようSGの出力レベルを調整します。これが基準になります。スペアナのセンター周波数表示が9.2MHzになっているのは、スペアナのCalibrationがとり切れていないためです。

A B C D
 0dB R R R R
R R L R
R L L R
-10dB R L R L
-20dB L R L L
L L L L

(A) 上記回路図のスイッチのレバー位置をSW-A R、SW-B R、SW-C 不定、SW-D Rにしたときの回路は下図になります。SGの出力はそのまま負荷に与えられます。SG出力からみたインピーダンスは負荷のインピーダンスになり50Ωで整合がとれていて減衰は0dBです。

スイッチの状態による合成抵抗と減衰度

(D) スイッチのレバー位置をSW-A R、SW-B L、SW-C R、SW-D Rにしたときは、下図のように負荷が28Ωとなり重くなります。そもそも整合が取れていない状態になりますので、このレバー位置は使用しないようにします。

減衰の確認
回路図

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