YHPユニバーサルブリッジ4260Aの発振回路
 YHPの4260Aはブリッジの平衡ダイヤルに連動したデジタル計数器で、インダクタンス、キャパシタンス、抵抗を直接読取りできます。コンデンサの損失角、コイルのQもダイヤルから直読できます。この測定器はOMさんより譲り受けましたが、抵抗以外は測定できませんでした。しばらく押し入れに入っていましたが,暇つぶしに修理にチャレンジすることにしました。抵抗は計測できインダクタンス、キャパシタンスは本器が反応しなかったのでブリッジの発振器の障害であることは予測していました。

まず底蓋を外します。

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底蓋を外すと基板押えの菱形のプレートがあります。

 回路はターマン発振器です。この回路はウイーンブリッジ発振器と原理は同じなのですが、差動増幅器を用いておらず負帰還がありません。電源は+13Vと−12Vの2電源で、同じ基板に搭載されています。発振周波数を決めるC,Rが、4700P、33Kでした。この値を f=1/(2πCR) にいれると1KHzになりました。早速、発振出力にオシロを当てましたが、やはり発振をしている様子はありません。発振周波数を調整する半固定Vr1と、発振レベルを調整する半固定Vr2があるので、これを少しづつ動かすと、発振出力につないだオシロにそれらしき波形が現れました。確認すると1KHzでした。次に、Vr2で波形が歪んで極端に大きくなる手前で止めます。これで安定してきれいな正弦波を維持できました。どうやらうまくいったようです。もっと手こずると思っていましたが、調整だけで済んだことはラッキーでした。

ブリッジ回路の分析

 又、E点はR6とVR2で分圧されています。ブリッジが平衡状態であればBE間に電圧が生じないため、Aの指示は0のはずですが、少しでもバランスが崩れると、Aには電流が流れます。それがQ1のベース電流です。これがQ1,Q2で増幅されます。発振周波数は最初に 1/(2πCR)とザックリ記載しましたが何故そうなるか見ていきます。計算の便宜上C3をC1,R2+VR1をR2、VR2をR7とします。
BE間の電圧をE1とすると 

プレートを外すとスロットに挿入された基板が3枚見えます。右端の基板に発振回路が載っていました。

スロットから外した基板です。手前にあるのが発振回路です。左端の2個の半固定は周波数と発振強度の調整用です。

 ターマン発振器の動作原理ですが、ウイーンブリッジ発振器も同じです。下図は上記の回路図からブリッジの部分を抜き出したものです。この回路がブリッジを構成していることを確認します。ブリッジは4辺で構成されます。
C3+R1、R2+VR1//C2, R6, VR2がブリッジの各辺になります。C4は1kHzに対して3.4Ωですので無視しました。C-Gの発振出力はB点でC3,R1の直列回路とR2,VR1とC2の並列回路で分圧さ
れます。
実測結果

より

 調整後の確認のため、適当に試料を抽出し計測してみましたが問題ないようでした。測定器に使用される部品は精度が要求されますが、誤差1%の部品だけで構成したとしても、経時変化、環境変化もあるし校正の大切さを感じます。

試料           測定値      ダイヤルの表示

0.1μF セラミックコンデンサ 96nF
0.047μF セラミックコンデンサ 47nF
470μF 電解コンデンサ 392μF
330μF 電解コンデンサ 283μF
33μH インダクタ 31μH
330μH インダクタ 319μH

外した基板から発振回路をリバースしました。

電解は30年以上前のものですが公称値の下限には入っているようです。