
二作目は安倍晴明と決めていたから、仲間のページでこの名前を見つけたときには、少し慌てました。しかし、NHKのドラマに続き、映画でも公開中の今が旬のようにも思われ、夢枕獏(ゆめまくらばく)さんの『陰陽師』(おんみょうじ)三部作を取り上げました。氏があちこちに書いていたものをまとめて最初の単行本が刊行されたのが1988年ですからこの三部作が出来上がるのに10年以上の歳月がかかっている計算になります。
そもそも奈良時代、平安時代の朝廷には、「陰陽寮」なるれっきとした役所があり長岡京や、平安京の建設にあたり、風水による場所選びから『陰陽師』達が活躍していたと聞きました。このころの『闇』は真の『闇』であり、魔物がおり、鬼が棲んでおり、彼らの表の仕事は、陰陽五行による占星術、風水術を駆使した「占い』師ではありますが、もう一方の仕事として幻術を使った魔物退治、鬼封じを行っておりました。
中でも平安中期の陰陽師「阿倍晴明」は、この幻術を使うエキソシストとしてのスーパースターでありました。この人は、「今昔物語」にも登場しますが、生まれは延喜21年頃と言いますから、醍醐天皇の御世ということになります。
京都では「晴明さん」と呼ばれ、生まれた子供の名前を付けるときに相談に行く堀川今出川下がる西側の晴明神社は、元は彼の住まいでした。千本丸太町近辺にあった平安京の大極殿、朝堂院からみて、表鬼門がちょうど比叡山方向になりますが、この鬼が出入りすると言う鬼門ライン上に鬼封じのために彼の屋敷をわざわざ建てたのでした。彼は、「式神」「識神」などと書き「しきがみ」「しきしん」などと呼ぶ虫や、花などの生き物の「精」を使って魔物退治、鬼退治などをしたのですが玄関の戸の開け閉めにまでこの式神を使うので
奥さんが、気持ち悪がって一条戻り橋まで捨てに言ったという話も残っています。しかし、小説には奥さんは登場しません。代わりに、ホームズには、ワトソンがいたように、晴明には、源博雅(みなもとのひろまさ)が相棒として登場します。
さて、安倍晴明の魔物退治、鬼封じなのですが、勿論、幻術、妖術は駆使しますが結局のところ以外にも、人の「誠意」や「真心」が魔物や、鬼に通じたりします。その辺のところも読んで確かめてください。
「陰陽師」「同、飛天ノ巻」「同、付喪神ノ巻」の三部作でした。
高 知 ニ キ
