前ページへ    TOP へ

名探偵・香坂関也の事件簿
 「京都混浴露天風呂推理ツアー・それは女子高生からの電話で始まった・・・・京都・奈良・神戸を舞台に綴られる親子の絆」


 第6話

 翌日、私とさくら君は朝早く百恵さんの旅館を出た。今は時間が惜しい。こんなところでのんびりしているわけにはいかないのだ。
「お母さん、無事かなぁ・・・・」
「安心無用。君のお母さんは必ず私が助ける。予定」
 私はさくら君を元気付けようと自信たっぷりに言い放つと、とびきりの笑顔を見せた。それを見たさくら君は泣きそうな顔になった。泣くほど嬉しかったのだろう。
 さて、お昼過ぎに私たちは神戸に着いた。
「今度はどこに行くの?」
「お昼がまだだろう。ここで食事をとろう」
 私は「万客来来」と書かれたイタリア料理の店の暖簾をくぐった。
 突然、私の妖怪アンテナがビビッと立った。店の奥、薄暗いテーブルに腰をかけている1人の男・・・・何か感じるものがあった。
「お兄ちゃん・・・・あの人、椅子じゃなくてテーブルに腰かけてるよ・・・・」
 さくら君の声にはあからさまに恐怖心が混ざっている。その恐怖からか、私のスーツの袖を掴む手に力が入った。男がこちらに気づいたのだ。
 目が合った。
「お前は・・・・」
「!お前・・・・」
 誰だっけ。「お前は」と言われたので言い返したが、こんな奇妙な奴とは知り合いな記憶はない。だいたい、トレンチコートにGパン、ダイエーホークスの帽子はなかろう。まぁ、地元の球団を応援する気持ちは分かるが。
「すまん、名前を忘れた」
 趣味の悪い野郎はたっぷり2分ほど考えて、私の名前を思い出そうとしたが、ギブアップした。
「・・・・香坂関也。名もない名探偵だ」
「名前、あるじゃん」
 さくら君が見当外れで場違いで余計なツッコミを入れる。
「俺だよ。古植部折楠だ」
 思い出した。忘れるはずもない、こいつは「ふるうえぶ・おりくす」。日本人にはありふれた名前なので、すぐには思い出せなかった。こいつは、いわば私の仕事上でのライバルなのだ。
「この神戸に何の用だ?事件か」
「まぁな。企業秘密だ」
「お前がそんな可愛い子ちゃんと一緒というだけで立派に事件だがな」
「やだぁ、可愛いだなんて。正直者〜」
 さくら君は照れて私のスーツの袖をこねくり回した。ビリっという音がしたが、聞こえていないようだ。これも捜査の必要経費に入れておく。
「そうだ、香坂。ちょっと待っててくれ、すぐ戻る」
 そう言って折楠はどこかに出ていってしまった。
 私たちは食事をとって折楠を待っていたが、140分待っても彼は戻って来なかった。彼の座っていたテーブルには「ごちそうさま」と書かれた紙だけが残されていた。奴め、食い逃げか。しかしまぁ、1人で天津飯、酢豚、小エビの天麩羅、八宝菜、フカヒレのスープ、甘酢肉団子、中華三昧、康珍化とこれだけの量を喰うとは。いや、彼のことだ。おそらく腹8分目に違いない。そうでなくては、私のライバルとは言えない。忘れはしない、あの熱いスタジアムを・・・・。


 第7話

 とんだ道草を食ったものだ。このままでは文子さんの命にかかわる。
「あ、ここだぁ。ねぇお兄ちゃん、この店だよ、わたしの叔父さんの店」
 私はさくら君が案内してくれた店に足を踏み入れた。
 その店は服が店内いっぱいに並んでいた。ブティックとでも言うのだろうか。
 見ると、色々な形の制服も売っている。中には女の子の写真が付いているものもあった。奥には下着コーナーや水着コーナーもあるようだ。
「どうしたんだい?さくら君」
 私は入り口で固まっているさくら君に声をかけた。なぜ入って来ないのだろう。
「ど・・・・どうぢで・・・・こんな・・・・・」
 呂律が回っていない。
「古美術品の店だったのにぃぃぃ〜!」
 さくら君は急に叫ぶと、猛ダッシュで駆けていった。いきなりどうしたのだろう。あの年頃は、箸が転がっても面白いとは言うが。
「おや・・・・今のは、さくらちゃんじゃないか?」
 店の奥から出てきたのは、さくら君の叔父さんにあたる、佐倉七分(しちぶ)。
 思春期のわがままに付き合っている暇はない。私は早速、佐倉七分さんにアリバイを聞いてみた。
「この2日ほどかね・・・・お、おお、店におったわい。大抵の日は、ここで商品の品定めをしたり、客の対応をしたりしておる」
「なるほど」
 私は女性の下着が山のように積まれたワゴンに目をやった。私の野性的なカンは、自分でも時々恐ろしくなって夜も眠れなくなり悪夢を見るほどである。そのワゴンの中から、私はよく知っている人の写真が添付された下着を取り出した。
「あたし、さくらですぅ。だいじにしてね、うきゅ!はーと・・・・さくら君の写真に丸文字のコメント・・・・か。特価5000円・・・・」
「あ、そ、それはっ!」
 佐倉七分は目に見えてうろたえた。無理もない、親戚の娘が下着を売ったなどと知られたくはなかろう。分かるぞ、その親心。
「分かった。さくら君には内緒にしておこう。そのかわり・・・・」
「そ、そのかわり・・・・?」
「1000円で売ってくれないか」

 店を出た私は、暴走したさくら君を探した。散々探し回った結果、何の苦労もなく私は彼女を発見した。橋の上から川を見下ろしている。
「まて、早まるな!」
 私はさくら君の身投げをくい止めるべく、後ろから羽交い締めにした。
「きゃぁぁぁぁ!離してぇぇ!」
 暴れるさくら君を、私はなだめるのに必死だった。
「離すものか!名探偵としては、自殺を止める義務がある!」
「へ・・・・?」
 さくら君の抵抗は収まった。どうやら私の必死の説得が効いたようだ。
「自殺・・・・なんかしないよ。てっきり、どこかの変態オヤジが襲ってきたのかと思って・・・・。叔父さんの店がブルセラショップになってたのはビックリしたけど、そんなことで飛び込んだりしないってば」
 自殺しようとしていた自分が恥ずかしいと思ったのだろう、さくら君はそんな言い訳をした。自分が下着を売っていたことがばれるのを恐れて自殺しようとしたのだろう。
「で、さくら君はどうしてあの叔父さんの店に案内してくれたんだい?」
「おととい、わたしが学校から帰ってきた時、家から叔父さんが出てくるのを見たの。叔父さんはわたしに気づかずに帰っちゃったけど、ちょっと気になって・・・・その次の日の夜から、お母さんが喋れなくなったから・・・・」
 佐倉七分は店にいたと言っていた・・・・さくら君の言うことが本当なら、七分は嘘の証言をしたことになる。


 第8話

 その後、私たちは奈良県にある佐倉文子さんの実家に立ち寄った。
 もうすっかり夜も深まり、文子さんの実家があるという村に着いた頃には辺りが真っ暗であった。夜7時、俗に言う丑三つ時というやつだ。
「さっ、さくら!な、何でお前が!?こんな所まで金を取りに来たのか!姉貴も一緒なのか!?」
 玄関に入るなり、私たちは1人の男に恫喝された。新聞の集金と間違えたのであろうか。
「あの・・・・お金って?あ、お兄ちゃん、こちらはお母さんの弟さんで賢一お兄ちゃんよ。こちらは関也お兄ちゃん。探偵事務所を開いてるのよ」
 お兄ちゃんだと!?
 私は睨むような視線を賢一お兄ちゃんに送った。お兄ちゃんと呼ばれるのは私1人で充分だ。お兄ちゃんの座は渡さんぞ。
「探偵・・・・?」
 賢一兄貴も私を睨んでいる。お兄ちゃん争奪戦は静かに始まりを告げたのだ。
 ・・・・と言うと、どうも私が賢一さんと兄貴を取り合っているように聞こえるな。私にそんな趣味はないぞ。
 私は本来の任務を思い出し、賢一さんに事情を説明した上で質問をぶつけてみた。
「ところで、さっきのお金を取りに来たとかおっしゃってたのは・・・・」
「あ、ああ、あれですか。その、姉貴にちょっと借金があって・・・・この前ももう少し貸してくれって言ったら、今までの分を返してくれって言われて・・・・」
 なるほど。口うるさい文子さんを喋れなくしたと・・・・そういうことか。
「帰ろうか、さくら君」
「えっ!?だってせっかく来たのに、おじいちゃんやおばあちゃんには会わなくていいの?」
「謎はいい感じで解けた」
「あ、ちょっと、お兄ちゃ〜ん!」
 私とさくら君が玄関から上がりもせずに帰ろうとする姿を見て、賢一さんは呆然としていた。ふ・・・・悪いな、「お兄ちゃん」は渡さない。

 中国自動車道を突っ走り、私の愛車は名古屋のわが探偵事務所に戻った。
 相変わらず、日差しの当たらない部屋だ。私が出掛けてから1日半経つのに、全く進歩していない。向上心のない部屋である。
 そこに、私たちが帰ってくるのを待っていたかのように電話が鳴った。
「もしもし、香坂ラーメン」
「・・・・」
「出前ですか?」
「あの・・・・香坂・・・・探偵事務所では・・・・」
 電話の主は、かぼそい声で聞き返してきた。電話の主と言っても、遥かいにしえから電話の中に住まっている神のごとき存在ではない。念のため。
「いかにも、香坂”名”探偵事務所ですが、そちらは?」
「佐倉・・・・文子と申します。あの、覚えてるかしら、関也君」
「ええ、覚えてますとも。で、今日は何のご用ですか」
「実は、恥ずかしい話なのですが・・・・私の娘が昨日から帰ってないんです。私が買い物に行っている時に出ていったみたいで・・・・家出かも知れません」
「ほう。その家出かもという根拠は?」
「その前の夜に喧嘩をしまして・・・・それで・・・・」
「分かりました。娘さんを見つけてみせましょう。もちろん捜索料は頂きますよ」
「ええ、もちろん。それが関也君のお仕事ですもの」
 そんなこんなで電話は終わった。
「お兄ちゃん、今の電話、お仕事の依頼?家出なの?」
「ああ」
 さて、と。名探偵は忙しくなってきたぞ。


 第9話

「ねぇ、お兄ちゃん。お母さんはどこにいるの?結局、見つからなかったじゃない」
 さくら君は心配そうな顔で私に問いかけた。眉間に皺を寄せている表情もなかなか捨てがたい。
「心配ない。もう君のお母さんは家に戻っている」
「えっ!?どうしてわかるの?」
「私たちが何のためにこの2日間、捜査をしてきたと思ってるんだい?」
「捜査・・・・って・・・・」
「そうさ」
 今のは会心のギャグだった。さぁ、笑っていいんだよ、さくら君。
 しかしさくら君の口元は1mmも歪まなかった。どうやらさくら君には高度すぎて理解出来なかったらしい。今度、私が「笑い」について個人教授してやろう。
「じゃあ、早く帰りたいよぉ」
「待ちたまえ。今、推理の最終段階に入っているんだ」
「・・・・寝転がってテレビを見てるように見えるんだけど・・・・」
「よし、君の家に行こう。そこで全ての謎を解く」
 私はさっそうと立ち上がった。いよいよクライマックスである。

「ほんとだ・・・・灯りがついてる。お母さんが帰ってるんだ!」
 さくら君は今にも車から飛び出しそうな勢いだった。言い忘れていたが、さくら君はお母さんと2人暮らしで、お父さんは既に亡くなっている。
 玄関に入ると、文子さんが出迎えてくれた。
「お母さん!」
「さくら!どこに行ってたの!お母さん心配で心配で・・・・!」
 そう言うと、文子さんはさくら君を力一杯抱きしめた。そのままアルゼンチンバックブリーカーに持ち込みそうな勢いである。
「お、おかあ・・・・さん」
 さくら君、ギブアップか?君は若いんだ、変な意地を張って体をつぶす手はない。まだ君には将来があるのだから。背骨が折れる前に、降参しなさい。
「しゃ・・・・喋れる・・・・の?」
「あ・・・・」
 文子さんはさくら君にかけていたサバ折りを解いた。
「ご・・・・ごめんなさい、お母さん・・・・さくらの事が心配で・・・・」
「ねぇ、どうなってるの?」
 さくら君は私に向かって質問を投げつけた。


 第10話

「文子さん、ちょっと・・・・」
 私は文子さんを手招きし、さくら君から離れた。
「さくら君、お母さんは話し辛いことがあるかもしれないから、向こうで私が話しを聞いてくる。待っていてくれないか」
 さくら君は小さく頷いた。私はさくら君から少し離れた所でお母さんの取り調べにかかった。
「さぁ、お母さん。話して貰いましょう」
 文子さんは泣きながら、ゆっくりと口を開いた。
「ごめんなさい・・・・私、約束を破ってしまって・・・・でも、心配で、つい・・・・」
「約束とは?」
「あの子と口喧嘩したんです・・・・その時、あの子に言われたんです・・・・」

 文子さんの話しは、こういうことだった。
 2日前の夜。高校卒業を前にしたさくら君は、短大の受験勉強とアルバイトの両立に精を出していた。しかし、疲れが目に見えて目立ってきたことで、母親である文子さんは「短大に受かるまではアルバイトを休んだらどうか」と言ったところ、「卒業旅行の資金がいるから」というさくら君と言い合いになったと言うのだ。普段は仲のいい親子だが、さくら君も疲れていたこともあって、珍しく母親と口喧嘩をしてしまった。しばらく言い合いをした後、さくら君が母親に言ったセリフが「もう、私に話しかけないで!話しかけたら、絶交だからね!」・・・・。
 文子さんは大好きな娘に絶交されたくなくて、さくら君が許してくれるまで自分から話しかけないでおこうと決めたのだという。

「そう・・・・でしたか」
「ですから、つい帰って来たあの子に話しかけてしまって・・・・嫌われたんじゃないかと・・・・」
 そう言って文子さんは頬に伝う涙を手の甲で拭った。
「分かりました。さくら君には私が上手く話しをしますよ」
「ありがとう、関也君、あの子をよく見つけてきてくれたわね・・・・早かったけど、あの子はどこにいたの・・・・?」
「心配いりません、文子さん。決して男の部屋とか風俗で働いていたとか、そういうことはありませんから。どうか、どこにいたかは聞かないでやってくれませんか」
「関也君がそういうなら・・・・」
「では、さくら君と話しをしてきますよ」

「お兄ちゃん・・・・お母さん、何て?」
「もう大丈夫だ。お母さんが喋れなくなった理由は分かった」
「何だったの!?」
 さくら君は私に噛みつかんばかりに迫ってきた。
「そのことだが・・・・さくら君、喋れなくなるというのはとてもメンタルな原因から起こる症状なんだ。だから、そのことに触れるとまた同じ状態になってしまう可能性もある。だからいいかい、お母さんのことを考えたら、この事件のことは蒸し返さない方がいいんだ。約束してくれないか、お母さんにはこの事件のことは一切、聞かないで欲しい」
「でも・・・・」
 さくら君は「でも知りたいんだもん」という文字を顔いっぱいに浮かべていたが「お母さんのため」という言葉に負けて、ゆっくりと頷いた。


 エピローグ

 終わってみれば、やはりこの事件は私の睨んだ通り、佐倉さくら君が犯人だったのだ。名探偵は辛いものだ。知り合いであろうが、犯人は罰しなくてはならないのだから。
「ありがとう、お兄ちゃん。やっぱり名探偵だったんだね。きっと京都や神戸に行ったのも、私には分からないけど意味があったんだよね」
「それはそうだ。私の行動には常に意味がある。ところで、今回の解決料だが・・・・」
「えっ!私からお金を取るの?」
「人聞きが悪いな。探偵を使ったんだから、当然だよ」
「ええ〜・・・・いくらなの?」
 そんな、詐欺師を見るような目で見ないでくれ。照れるではないか。
 私は今回の旅行・・・・もとい捜査に使った経費を精算しようと、ポケットのレシートや領収証をまさぐった。
 その時、ポロっと上着のポケットから落ちたのは・・・・。
「あ〜、お兄ちゃん、何これぇ?やだ、下着じゃないの?・・・・ひょっとして、どっかで盗んできた?」
「いや、そ、それは・・・・」
 さくら君は落ちた女性用下着を摘んで広げた。
「あ〜っ、これ、私のパンツじゃない!3日ほど前になくなって、探してたんだよ!・・・・じとぉ〜」
 さくら君はまるで下着ドロを見るような目つきで私を睨んだ。
「・・・・さくら君。お母さんには黙っていてあげるから。君がブルセラに下着を売っていたなんてことは・・・・」
「何言ってんの?」
 この期におよんでシラをきるつもりだ、このブルセラ高校生は。
「わけ分かんないこと言ってないで、いつこれを盗んだのか白状しなさい!」
「まて、心外な。それは私が汗水流して働いたお金で買ったんだ。君の叔父さんの店で。君はその下着をそこに売ったんだろう?」
 さくら君は、豆が鳩鉄砲を食らったような顔になった。無理もない、自分の恥ずかしい一面を見られてしまったのだから。
「叔父さん・・・・そうかぁ、あの時・・・・私んちに叔父さんが来たときに持って行ったんだわ、そうに違いない!もう、信じらんない!」
 なるほど、佐倉七分がアリバイについて嘘の証言をしたのは、そういうことか。
「とにかく、これ返してよね。けっこうお気に入りだったのよ」
「まて!それは私が購入したものだ。よって、所有の権利は私にある」
「ブルセラで買っといて、随分強気だねお兄ちゃん・・・・」
 さくら君の罪が増えた。私の所有物である女性用下着の窃盗罪である。辛い。私はこれからさくら君を説得し、できることなら自首を薦めたいと思う。この若さで前科が付くのは将来において非常にマイナスだ。しかし、今回の罪の深さからして、懲役は免れないであろう。私が黙っていれば今回の事件は誰も犯人を見つけることができないかもしれない。だが私の正義の心はそれを許さないだろう。知り合いの現役ピチピチ女子高生とはいえ、犯罪を見過ごすことは・・・・。
「ねぇお兄ちゃん、私、卒業までの間だけのバイトを探してるの。お兄ちゃんの事務所って、女の人が辞めちゃったんだよね?私、バイトってことでどうかなぁ」
「はう?」
 私は思わず素っ頓狂でダンディな声を発してしまった。
 そうか、さくら君。私を籠絡するつもりなのだな。その決してナイスとは言い難いが私好みのバディで私を誘惑して、犯罪をもみ消そうとしている。なかなか食えない奴だ。  いいだろう。もしその誘惑に屈することがあれば、私はそこまでの探偵だ。ここはあえて君の策略に乗ってあげようではないか。自分で自分を試すのも成長への第1歩であろう。

 こうして、私とさくら君の甘い探偵事務所生活が始まった。
 そう、その考えは非常に甘かったのだ。あんな事件が私たちの身に降りかかろうとは、作者さえ思いもつかなかったのだ。

 名探偵・香坂関也の事件簿 完(ひょっとして続く)

 2 / 2
        前ページへ    TOP へ