家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん5月号(2026年5月1日発行)は

年少組のOちゃんはこのごろ、家に帰りたくありません。お帰りの時間が近付くと、涙が出ます。わあっと激しく泣くのではなく、悲しそうにしくしくと泣きはじめます。クラスの中ではいつも微笑んでいて、あまり自分の思いを表さないOちゃんのことを、M先生は少し気にかけていました。
彼女は2か月前に福岡の保育園から転園してきました。すんなりと新しい環境にもお友だちにも慣れ、園生活を楽しんでいるように見えました。ちょっとスムーズ過ぎるくらいです。園庭で男の子たちと走りまわって、転んでお膝をすりむいた時も、泣きはしませんでした。だから、初めてOちゃんの悲しそうな、でもどこか強情な涙を見たとき、M先生は驚くのと同時に妙に納得しました。幼い彼女の胸の中にある思いのすべてを知ることはできなくても、その一端を感じるには十分な涙だと思えたのです。M先生はOちゃんを膝に乗せて、ゆっくりと背中をさすりながら「そうか、帰りたくないんだね」と呟きました。
Oちゃんはお父さんと二人で、お父さんの実家で暮らしています。Oちゃんにとってはおじいちゃんの家ですが、おじいちゃんの奥さんは、Oちゃんのおばあちゃんではありません。おじいちゃんには新しい家族があるのです。入園の申込に来たおじいちゃんは、急に帰ってきた息子と孫について、明らかに戸惑っているように見えました。おじいちゃんの奥さんは、何も知らない事務員さんに「おばあちゃん」と呼ばれても返事ができませんでした。
入園手続きの日、お父さんは泣きました。泣きながら、Oちゃんと自分自身のために、急に生活を変えなければならなくなったことを明かしました。準備もなしに実家に身を寄せて、親一人子一人の新しい生活をスタートしようとしたのには、それなりの理由があったでしょう。園では、出来る限りスピーディーにOちゃんを受け入れる手はずを整えました。一刻も早く、彼女をこどもらしい日常の中に戻してあげるべきだと考えたからです。
Oちゃんの帰りたくない涙は当分続いています。その時間、M先生はなるべく彼女のそばにいることにしています。おじいちゃんの家でどんな風に過ごしているか、どんな思いでいるか、具体的なお話が聞けることはありません。でも、毎日の涙に寄り添ううちに、じんわりと伝わってくるものがあります。
こどもであれ、大人であれ、やむを得ない事情のなかに取り込まれてしまうことがあります。決して望んだわけではない、抗い難い因縁によって、深く傷つき苦しむことが、人生の折々にある。M先生の胸に、介護が必要になった自分の母の姿がよぎります。お釈迦さまは、この世は苦であるとおっしゃいました。その通り、それが生きているということの本質なのかもしれません。Oちゃんもお父さんも、おじいちゃんも奥さんも、一生懸命に自分のいのちを生きている。M先生の、小さな背中をさする手に力がこもります。少しずつでいい、心がほぐれるようにと願います。
(武田修子)

育心

正しさと思いやり   相愛大学教授/佐々木隆晃

今月の『育心』は、佐々木隆晃先生がご執筆くださいました。
先日、園の相談室にお越しになったのは、3歳児H君のお母さんで、お子さんと二人暮らしです。一人で家計を支え、子育てを担う頑張り屋さんです。
「仕事(在宅)が終わるのが遅くなります。寝かしつけてもなかなか寝ないし、どうしてもHを寝かすのが遅い時間になってしまいます。朝起きるのも遅くなり、登園時間も昼近くになってしまいます。園にも迷惑をかけるし、Hのためにもならないからと、母(H君の祖母)に責められて言い合いになり、私の心が壊れそうです。体調も悪いです」
確かに、早寝早起きで、園の活動が始まる時間までに登園し、生活リズムを整えることは正しいことです。おばあちゃんも、そのことを気にかけてのご助言だったのでしょうね。
「思いやりは相手の痛みを実感してこそ、まことのものとなります」と、佐々木先生のお話の中にありました。
H君のお母さんが、考え悩んで葛藤されているお気持ちを、しっかりと聞かせていただき、寄り添いながら、園もともに歩ませていただきたいと思います。

子育ちフォーラム

五月五日は「こどもの日」   ホッとハウスinおおの代表/梅林厚子

2ページ目は、梅林厚子先生の『子育ちフォーラム』です。
今回は、五月五日の「こどもの日」に寄せて、江戸時代や明治時代の時代背景の中での、「こども」に対する考え方や、「こいのぼり」の由来についてなど学ばせていただきました。
そして、大人と同じように一人の人間として、「こども」が認められるようになった現在、施行された「こども基本法」の基本理念の一つである『家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること』という文言を、私たち保育者は、襟を正す思いで心に留めなくてはならないと感じました。
「やねより高い こいのぼり〜♪」こども達の元気な歌声が保育室から聞こえてくる季節となりました。
世界の国々のどこでも、どの時代であっても、こども達が笑顔いっぱいに、のびのびと成長していけますように。こころから願うばかりです。

私の雑記帖

不完全さと共に奏でる   篳篥演奏家・光妙寺住職/深親亮介

『私の雑記帖』は、篳篥演奏家の深親亮介さんのお話です。
篳篥の音色には、本願寺や演奏会などで出遇ったことがありますが、清少納言の「枕草子」の時代から、演奏され続けてきた楽器だと知ると、その音色とともに、見たこともない古の風景を想像したりして、感慨深い思いがします。
そして、篳篥演奏の難しさに向き合うことを、浄土真宗のみ教えと重ね、さらに世界を広げられているということで、益々のご活躍を楽しみに感じました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし51

母の日の似顔絵   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、母の日に、つきみちゃんとほしくんが、お母さんに似顔絵をプレゼント。「ありがとう」の気持ちも伝わりました。

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爽やかな五月晴れの空を、ツバメたちが元気に飛び交う頃ですね。
(鎌田 惠)

令和8年4月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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