家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん10月号(2025年10月1日発行)は

自身のいのちの行方について考える時、「死んだら終わり」だと思われる方が沢山いらっしゃるかもしれません。勿論、「死んだら終わり」というのも一つの死生観であって、決して否定されるものではありません。しかし思うのです。「死んだら終わり」というのは、元気な時や順風満帆な時に言える言葉ではないかと。
果たして自分が死んでいく時、大切な人と別れていく時に、冷静沈着に「これですべて終わり」とは言えないように思います。どんな状況でも「死んだら終わり」だとは、私には言えないでしょう。いのちの物語を終わらせたくないですし、また会いたいと思う人がいるからです。
読者の皆さんは、これまでに「死」を経験されたことがおありでしょうか。きっとおられないはずです。私たちは他者の死を見たことはありますが、自分の死を経験したことはないからです。でしたら、自分で自分の人生を勝手に終わらしていく必要もないように思うのです。むしろこのいのちは空しく終わっていくのではなく、間違いのない往き先がある、また会える世界のあることを、確かな方に聞かせていただくことが大切ではないでしょうか。

『今、浄土を考える』という書籍の中に、印象深い一節があります。

知的な立場から浄土の存在を否定する人々もいますが、私たちの行動はコンピューターのような計算の上に成り立っているのではありません。矛盾に満ちた人間の感情、そこに清らかな宗教感情をわき出たせてくれるのが、往生浄土の教えなのではないでしょうか。往生浄土の教えは、高邁な理念をもてあそぶ観念の遊戯に堕することを教えるのではありません。…《中略》…ちょっとしたことで泣いたり、笑ったり、怒ったりしながら日常生活を送る人々、まさしく凡夫といわれる存在の素朴な感情に対応し、受容し、包みこむ教えだということができるでしょう。(本願寺出版社、201頁)

かつて、「お浄土という世界はあるとかないとかいう世界ではなく、私にとってなくてはならない世界です」と仰った方がおられました。確かに仏教が説くお浄土の世界は、科学的に証明できる世界ではありません。けれどもお浄土の世界は、たとえ私たちに確認することができなくとも、私の今を確かに支え、何があっても必ず私を迎え取ってくださる、真実(まこと)の世界として聞かせていただくことが大切だと思うのです。
お浄土があるからこそ、私の今が支えられる。私のいのちを丸ごと受け止めてくれる世界があるからこそ、今を安心して歩んでいけるのではないでしょうか。そのようないのちの帰依所ともいうべき世界のあることを、今を生きる子どもたちに伝えていきたいと思っています。
(赤井 智顕)

育心

絵本の声を聞く   京都女子大学教授/黒田義道

今月の『育心』、黒田義道先生がご執筆くださいました「絵本の声を聞く」で、これまでの「絵本」に対する私自身の向き合い方に気づかされました。
私の自室の本棚には、多くの絵本が並んでいます。若い頃から保育に携わってきた私の、ちょっとしたコレクションという感じです。
環境や季節、友情や冒険、生活や風習などなどジャンルも様々です。その一冊一冊を手に取ってみますと、それを購入した経緯が思い出されます。
「秋の散歩に出かける前に読み聞かせておくと、興味づけになるなぁ」とか、「発表会の表現のテーマにしよう」とか、「もちつきの前に読み聞かせて、もちに興味が持てるようにしよう」など、やはり黒田先生のお話のとおり、分析的思慮分別そのものの私の姿が見えてきました。
ところで、私には幼いころから大好きな絵本があります。何度読んでもその世界観に引き込まれます。娘にも何度も読み聞かせ、楽しい世界が広がりました。そして娘もそれが大好きな一冊になりました「ぐりぐらぐりぐら……」。
そこにはきっと分析的思慮分別がなかったのかもしれません。
今では現役の保育者を一歩退いた私ではありますが、「絵本から聞こえる声」をただ聞いて、その声を楽しんでみたいと思います。

親と子の育ち合い広場

みんなの手で子育てを   子育て支援コミュニティワーカー/藤本明美

2ページ目は、藤本明美先生の『親と子の育ち合い広場』です。19回目となりました藤本先生のシリーズ、今回は募集された子育て川柳を50句に厳選された、コミュニケーションカードゲーム「コソアル」の中から、本誌に7句をご紹介いただきました。
子育て真っ只中のパパ・ママがどんな思いで子育てに奮闘されているのかがよく感じられ、「あるある」「わかるわかる」「そうなんだー」と共感し合えるきっかけとなっているようです。
特に、「ベビーカー 優しい声に救われる」の1句は、こんな風に困っている時に、このように助けてもらって救われたというエピソードで、子育て経験のない人や、子育てに関心がない人にも、子育て中のパパ・ママの困り感や、手の差し伸べ方が良くわかり、社会全体で「こどもまんなか社会」を実現していくヒントになっていくような気がしました。

私の雑記帖

いけばなを通じて「心」を育てる   池坊短期大学准教授/藤井真

『私の雑記帖』は池坊短期大学准教授の藤井真さんのお話です。
花や緑を通じて自分や家族などの心を癒し、命の大切さや人を思いやるこころを育む「花育」を実践される中での、エピソードや大切にされていることなどを拝読させていただき、未来を担う子どもたちの、こころの豊かさを育んでいくことの重要性について学ばせていただきました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし45

こどもまつりの恩送り   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、楽しい秋の祭りで、みんなが力を合わせている様子を見て、何かを感じたほし君です。

line

虫の音が聞こえ始め、秋の訪れを少しずつ感じる今日この頃です。
(鎌田 惠)

令和7年9月16日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

目 次