家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん4月号(2025年4月1日発行)は

「浄土真宗にはご利益がないのでは……」と思われている方が意外と少なくありません。実際、宗門校の学生の方々に質問してみると、意外と多くの方が「浄土真宗にご利益はないと思う」と回答されます。これは「家内安全」「商売繁盛」「合格祈願」といった、一般的によくイメージされるご利益を、浄土真宗が説いていないことに起因しているのかもしれません。
ところで仏教でいう「利益」とは、「仏・菩薩の教えに従うことによって得られる徳(すばらしさ)」を意味しますが、浄土真宗ではすべて阿弥陀さまのはたらきによって得られる利益のことを意味しています。

親鸞聖人は阿弥陀さまから恵まれる信心によって、この人生の上に十種のすばらしい利益を得ることを明かされています。もっとも浄土真宗の利益は、広げれば数限りのない無量ですが、まとめれば十種に、さらにいえば「正定聚に入る益」という、現生正定聚の利益におさまっていくことを示されています。
「正定聚」とは、仏と成ることに正しく決定した聚(なかま)という意味を持つ言葉ですが、浄土教の伝統では煩悩を抱えた者はこの世で正定聚に入ることが難しいとされ、命終わった後にお浄土で得る利益として説かれていました。けれど親鸞聖人は、「真実信心の行人は、摂取不捨のゆゑに正定聚の位に住す」(『親鸞聖人御消息』)といわれ、信心を恵まれた者は今生の命が尽きるまで煩悩にまみれた者であり続けながらも、阿弥陀さまの摂取不捨の利益によって現生に正定聚の位に定まる、と言いきっていかれたのです。
また浄土教では厭離穢土(えんりえど)といって、この世は厭うべき世界であることが強く主張されていましたが、親鸞聖人の現生正定聚の教えはそのような考えを一変させるものでした。実は厭うべきこの世界こそ、阿弥陀さまの摂取不捨の利益によって正定聚の位に住することのできる救いの場であり、間違いなく仏のさとりを開くことに決定した仏の子として阿弥陀さまに育てられ続けて生きていく、空しく終わっていかない人生であることを確認していかれた方が親鸞聖人だったのです。

阿弥陀さまに抱かれた人生はいつどこで命が尽きようとも、その時がお浄土へ生まれ往く機縁が開ける時です。どこまでも死の不安に怯え続けて生きる私たちだからこそ、どこまでも阿弥陀さまの摂取不捨の心に抱かれている「いのち」なのです。
まさに現生で正定聚の位に入る現益(現生の利益)と、正定聚の位に住するからこそ、この命を終えたその時に、必ずお浄土へ往生して仏のさとりを開かせていただくという当益(当来の利益)を恵まれていくのが、浄土真宗の大きなご利益なのです。
(赤井 智顕)

育心

同じ方向を向く   龍谷大学非常勤講師/小池秀章

今月の『育心』は、小池秀章先生がご執筆くださいました。
園の生活の中では、子どもたちと共に、同じ方向を向いて活動する場面が数々あります。桜の花を見るために公園に向かう散歩、園庭で一緒に走り回るしっぽ取りゲーム、夏野菜の苗を植えるために、肥料や土まみれになって準備する畑仕事……。
でもやはり、私が一番それを実感するのは、子どもたちも保育者も、皆が一緒に同じ方向を向いて手をあわす仏参の時だと改めて思います。讃歌やおつとめの声がホールいっぱいに広がって、「なもあみだぶつ」の声となった仏さまの、お慈悲のおこころに包まれていると、「なんて幸せな瞬間に出遇わせてもらっているんだろう」と温かな心持ちになります。私が子どもたちと共に、仏さまの方向を向かせていただく尊い瞬間です。
小池先生のお話に「子どもと同じ方向を向くことが、とても大切なことなのです」とありますように、日々の保育の中で、子どもたちと同じ方向を向きながら、人生を送らせていただきたいと思います。

子育ちフォーラム

人生のリュックサック 共にその重さを分かちあう存在   
本福寺こども園園長/三上明祥

2ページ目は、三上明祥先生の『子育ちフォーラム』です。
入園・進級の季節は希望に満ち溢れているとはいうものの、新しい環境の中で不安や疲れも多いものです。
毎年4月の2ページ目のお話は、そんな不安を和らげていただけるようなエールを、レギュラーの先生方に執筆していただいていますが、今回の三上先生のエールは趣が少し違って感じました。
子どもたちや保護者さんそれぞれが背負っている人生のリュックの中身は、様々な経験や感情、興味や個性がぎっしり、もちろん新入園や進級のワクワクだけでなく不安や疲れも……。
その中身のすべてをその子(人)らしさと捉え尊重し、寄り添いながら、共に未来を築いていきましょうというお話です。
すべてを包み込む、仏さまのおこころにも重なるエールではないかと感じました。
間もなく迎える新入園・進級の季節に向けて、保育者たちと今一度「人生のリュック」のお話を拝読させていただきたいと思います。

私の雑記帖

お宝さんです   金子みすゞ記念館館長/矢崎節夫

『私の雑記帖』は、金子みすゞ記念館館長の矢崎節夫さんのお話です。
みすゞさんの持つすぐれた想像力と他者を思うやさしさから生み出された詩『大漁』を通して、「この世は二つで一つである」ということを味わわせていただきました。
そして、私を「お母さん」にしてくれた「お宝さん」(我が子)に改めて感謝の気持ちが湧いてきました。
久し振りにまた、金子みすゞさんの詩集のページをめくってみたくなりました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし39

引っ越してきたお友だち   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、ほし君の園に引っ越してきた新しいお友だち、仲良く遊べるようになるといいですね。

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桜のつぼみが膨らんできました。さて、どんな出会いが待っているでしょう。
(鎌田 惠)

令和7年3月24日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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