幼保小連携先である近くの小学校は、ここ数年で入学者数が急激に減りました。来年の1年生はとうとう30人ほど。一時は1,000人以上の児童が通う小学校で、息子もここでお世話になりました。その昔、運動会の前日には、近所の公園で場所取りの列が並び始め、うっかり遅れたりすれば、トラックを走るその年のわが子をビデオに収めるチャンスは永久に失われるのでした。学期に一度の参観日はいつも大賑わいで、教室に入れない保護者の輪が幾重にもドアを取り囲んでいましたっけ。栄枯盛衰は団地の宿命。加えて、加速する少子化。あっという間にべビーピークを越え、今は中・高生の波が早朝の歩道を埋めています。
その小学校の先生が、ある日、1枚のポスターを手に園に訪ねてこられました。3年生が地域の公園でお掃除イベントをやるので、告知のポスターを貼らせてください、というお申し出でした。もちろんですとも、と受け取ったポスターを見れば、画用紙いっぱいに、一生懸命な手書きの文字が並んでいます。
「なかよくつながる大さくせん!」まちをきれいにしよう K公園、6・7公園でやります。どこに来ていただいてもかまいません。地いきの人とせいそう活動をすることで、まちも心もきれいにしたいです。そして地いきの人となかよくつながりたいと思っています。ご協力よろしくお願いします。そうじが終わったあとプレゼントわけこするので楽しみにしていてください。(原文ママ)
こんなに心躍る素敵なお申し出は初めてのこと。わたしたちは感激し、さっそくポスターを掲示し、メールにのせて配信し、年長組の予定をあけて、その日が来るのを待ちました。首を長くして。
雪のために1週間延期したのち、とうとうその日がやってきました。緑のジャンパーを着たシニアクラブのメンバーは、予定よりずいぶん早い時間から、レーキ(熊手)や箒を手に集まりました。主役の3年生たちのはりきった顔が、公園の生垣の間を行き来しています。普段は公園清掃など見向きもしない年長組が、ゴミ拾いをする3年生のほうへと一目散に走っていきます。幼子を連れた女性が、ゴミ袋を手に歩いてきます。優しい目的を共有しようとする人たちの、ほんのりと上気した顔が、美しい朝の公園を埋めていきます。
かつて、どこかでこんな光景を見たことがありました。お祭りの神社の坂道で、とんど焼をする稲田で、報恩講さんのにごめの湯気の中で、盆踊りの白熱灯に照らされた夜の校庭で。「地域」とわたしたちがその名を呼ぶとき、そこにいた時間の記憶とともに胸に上ってくる郷愁を、この子らもいつか味わう日が来るでしょうか。あるいはそれも、乾いた死語となるのでしょうか。白い息を吐きながら、戦争によって、あるいは災害によって、故郷を失い、友を失い、親を失い、帰る家を失った人たちを思いました。今、ここで出会えているものの本当の価値に気づくのは、きっと、ずいぶん後になってからのこと。
プレゼントわけこをするお兄さんの手から手作りのメダルを受け取る笑顔が、朝日に輝いています。阪神淡路大震災から、もう30年が過ぎたのだなと思いました。
(武田修子)
種の中は……? 京都女子大学教授/黒田義道
今月の『育心』黒田義道先生のお話のように、「種の中はなに? なにが入っているの?」と、幼い子どもたちの、あまりにも直球の、それでいて核心を突いたような問いに悩まされることが、私にも度々あります。
どのように答えるのがよいかをなぜ悩むのか、先生のお話を拝読して、ようやく明確になったような気がしました。
「科学的」に答えるのも違う気がするし、子どもたちには理解できないだろうと、曖昧に答えをごまかすのは、もっと違う気がする、ということだったのかと。
幼少期の子どもたちは、何気ない日常の、自分を取り巻く様々な人や物、事象との関りの中で、「なぜ?」「どうして?」と私たちに「問い」を投げかけてきて、その度にタジタジになります。
しかしその「問い」こそが尊く大切なもので、いのちへの気づきや学びを、私にもたらしてくれていたのですね。
冬から春へと移り行く季節の中で、こころが揺さぶられる「不思議?」と「発見」の時々を、大切に過ごさせていただきたいと思います。「どうして?」の答えに思いを巡らせながら、子どもたちとともに……。
「ありがとう」から生まれる幸せ 子育て支援コミュニティワーカー/藤本明美
2ページ目は、藤本明美先生の『親と子の育ち合い広場』で、毎回お母さんたちの「おしゃべり」の様子をご紹介くださっています。
今回は、最強ワード「ありがとう」そこから生まれる幸せについてです。
パートナーの立ち合い出産の経験を通して、夫婦の良好な関係を築かれたというお話から、「恩を知る(知恩)」→「ありがたいなと感じ(感恩)」→「その気持ちが言葉・行動になってあふれ(報恩)」の幸せの連鎖について学ばせていただきました。
どんなに親しい間柄でも、分かり合えないことがありますが、一緒に同じ瞬間を経験したり、共同作業をしたりすること(歩み寄る努力)で、分かり合えたりすることがあるのですね。
なんだかイライラ、ギクシャクした時には、「知恩」→「感恩」→「報恩」の幸せの連鎖を思い出し、こころから「ありがとう」の気持ちを伝えていきたいですね。
きっと幸せオーラがご家庭に溢れると思います。
仏教とマンガ 浄土真宗本願寺派 真光寺衆徒・漫画家/近藤義行
『私の雑記帖』は、教師(中学校・高校)で漫画家の近藤義行さんのお話です。
『ヤンキーと住職』は、私の愛読書だけではなく、まったく仏教にご縁がなかった友達に、この『ヤンキーと住職』を貸してあげたところ、人生観が変わったと、返却後もすぐにAmazonで購入したとのことでした。
近藤さんの「仏説に聞き、問われることを大切にしている」という姿勢は、生徒さん達だけでなく、世の中の人々に、仏教を通して「生き方を問う」きっかけになっているのではないかと感じました。
力になれたら 文・絵/三浦明利
今月の『お話の時間』は、つきみちゃんとほしくんが、地震の被害にあわれた子どもたちに、「力になれること」を考えてくれました。
春を待つこの頃、期待に胸が膨らみます。
(鎌田 惠)
令和7年2月17日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)