以前、ある園では、毎日、保育士さんが自分のクラスで、法話をすることになっているということを、聞きました。短い話だそうですが、毎日となると、とても大変そうです。実際、話すことがなくなって、「今日の朝、トイレのスリッパが、きれいにそろえられていました。きっと、アミダさまも喜んでおられると思います」というように、最後にアミダさまのことが、取って付けたような感じになってしまう、と悩んでおられました。
この話を聞いた時、最初は、アミダさまのことが、取って付けたようになるのは良くないと思いました。しかし、考えているうちに、たとえ、取って付けたようになったとしても、常にアミダさまのことを意識して生活するということは、とても大切なことだと思えてきました。
アミダさま中心の生活とは、まさに、そのような生活を言うのだと思います。
2024年7月31日NHK朝ドラ「虎に翼」での、母・寅子と娘・優未の会話。
小学校の行事で山登りがあり、怪我をした人の荷物を持って山を降りたという優未の話を聞いて、寅子が、「へぇ〜、優しいのね」と言いました。それに対して、優未は、「えっ、違うよ。だって、困っている子を助けるのは、普通のことでしょ」と答えました。
私を含め、今の世の中で、「困っている人を助けるのは、普通のことだ」という感覚が、失われていっているのではないかと、少し不安になりました。
心理学者の河合隼雄さんと、将棋棋士の谷川浩司さんの対談がまとめられた『無為の力』(PHP研究所)という本を読む機会がありました。その中から一つ目。
河合さんが、サッカーの岡田武史監督の「つかんだものを握り締めてはいけない。握り締めてしまっては、新たな物をつかめなくなる。だからこれからは触れるだけにしよう」という言葉を紹介された後、次のようなことを語られています。
「人間誰しも『このやり方でうまくいった』という経験をすると、その時のやり方にこだわりを持ってしまって、新しい挑戦ができなくなってしまうことになりがちですね」
つかんだものを握り締めないよう、気をつけたいと思いました。
二つ目。河合さんが、
「大人は子どもたちからすごい大きなものをもらっているのに、そのことに気がついていない人が多いですね。大人は、自分が子どもにあれをしてやった、これをしてやったと思うんだけど、本当は子どものほうが大サービスでいろんなことをやってくれてる(笑)」
と、言われています。
子どもが大人になる頃になって、やっと、「子どもにしてあげていたと思っていたけれど、子どもから、もっと大きなものをもらっていた」ということに、気づかされるのかもしれません。
(小池 秀章)
認知症と共に生きる 教恩寺住職 シンガーソングライター/やなせなな
やなせななさんがご執筆くださいました今月の『育心』を、しみじみと拝読させていただきました。
この春、大変ご活躍中の、私が尊敬する保育の先輩が、一線を退かれました。認知症が進行されたご主人の、伴走者に専念されるためだと聞きました。
一般的に認知症には、ものを忘れる(記憶障害)だけでなく、これまでできたことができなくなる(遂行機能障害)や、不安、幻覚、妄想、うつ、興奮、暴言、暴力、徘徊(行動・心理症状)など、様々なお姿があるようです。
もの静かで穏やかな、頼りになるご主人の変化を受け止めながら、その人生を共に生きていくことは、とても深い葛藤の中におられるのではないかと、心が痛み、容易に言葉をかけることができずにいます。
しかしお二人の毎日が、「つらいと感じる場面も多々ありますが、そんな時は〜母と二人で……」と、やなせさんのお話の中にもありますように、阿弥陀さまのお慈悲のおこころに包まれた、あたたかい、光の中にありますようにと、ただただ念じています。
♪だっこだっこだっこ♪ あそび歌作家/鈴木 翼
2ページ目は、鈴木翼さんの、かんたんふれあい遊び『♪だっこ だっこ だっこ♪』です。
子どもが泣いている時、不安そうにしている時、楽しく一緒に遊ぶ時など、保育の中の様々な場面で、「だっこ」はとても大切な関わりです。ほんわかと、身も心も温かくなります。
それもそのはず、幸せ物質の「オキシトシン」が、いっぱい溢れ出るんですね。
そして「抱っこしているようで実は大人も抱っこされている」なんて、さらに素敵なことも教えていただきました。
途中の「ピッ」のところで、ワニになったり、タコになったりと、幾つもアレンジもできるようです。
いろんなバージョンで、たくさん笑って楽しく遊んで、最後の「抱きしめて ぎゅー」は、オキシトシンも倍増、幸せな気持ちがはじけることでしょう。
園でも、保育者と子ども、お友だちどうしでも遊んでみたいですね。本誌のQRコードを読み込んで、動画を見ながら、どうぞご家庭でも楽しく遊んでみてください。
本当の“成功体験”は本物の体験と失敗から成る
株式会社クレバスデザイン代表/澤 紗奈
『私の雑記帖』は、澤紗奈さんのお話です。
澤さんが運営されるプロジェクト型の探究教育「ちゃれんじラボ」では、少し生きづらさを抱えた子どもたちが、とてもイキイキと、目を輝かせて活動しています。
私たち大人は、子どもが転びそうになったら、ついつい転ぶ前に手助けしてしまいがちです。子どもたちが疑問に思ったことに対しても、簡単に答えを教えてしまいがちです。
しかし、それをぐっとこらえて、根気よく見守る彼女の姿勢には、本当に学ばされます。
魅力的なプロジェクトが、さらに広がっていきますように応援しています。
秋の落とし物 文・絵/三浦明利
今月の『お話の時間』は、秋の公園で、リスさんとほし君たちが、すてきな落とし物を、拾ったり落としたりの楽しいお話です。
訪れた秋を見つけに、散歩に出かけたいと思います。
(鎌田 惠)
令和6年10月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)