家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん2月号(2024年2月1日発行)は

令和6年能登半島地震で、被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。一日も早く、穏やかな生活に戻れることを、願っています。

東九州短期大学学長・同附属幼稚園園長の梅高賢正先生が、次のようなことを言われていました。
「去年の運動会の練習の時の話ですが、スタート地点からゴールまで、跳び箱や傾斜をつけた平均台があったりして、三歳児が海越え山越え大冒険する、という競争だったんです。見ていますと、跳び箱があったら、みんな高いほうに行っちゃうんですよ。三歳児はあんまり競争心というのはないんだなあと。(中略)僕らがずっとやってきた教育というのは、ゴールがあったらゴールに早く行ったほうがよい、というものでしょう。(中略)ただ、こっちから向こうに行くというだけだったら、みんな高いほうに、行くんですよ」(本願寺月刊誌『大乗』2023年11月号より)
日常生活の中で、いつの間にか私たちは、早くゴールすることばかりを、求めるようになってしまったように思います。効率のいい方、楽な方ばかりを求めず、今、目の前にある困難にチャレンジする楽しさを、思い出させてもらった気がします。

大学の仏教学の講義で、「真実の教えを受け容れた時、私の嘘が打ち破られる」という話をしました。その講義を聞いた一人の学生が、次のような感想を書いてくれました。
「仏教など宗教の教えについての捉え方が、自分の中で変わったような気がします。今までは、『教えは自分が読み、理解し、納得して受け入れることで、考え方が変わっていくのかな』と考えていました。でも、そうではなくて、一旦、教えそのものを受け入れることで、新しい発見や、これまでの常識を壊すなど、考え方を変えてくれるということが、分かりました。これまでは、『自分が教えを噛み砕いていくことで、理解できる』というイメージだったけど、どちらかというと『教えが自分(私の嘘)を、噛み砕いてくれる』というイメージなのかな、と思った」
「教えが私(私の嘘)を噛み砕いてくれる」という表現が、心に響きました。

「柄本明の演劇論」という講演を、聞く機会がありました。柄本さんは、演劇を始めた頃、アイルランドの劇作家、サミュエル・ベケットの本を読んで、全く分からなかったそうです。そして、久しぶりにベケットの本を読んで、涙が止まらなかったそうです。「若い時は、分からないといけないと思っていた。今は、分からないということが、分かった」「分からないことの豊かさ。見えない所に向かわせてくれる力がある」ということを、言われていました。
現在、私たちは、分かりやすさを求めています。分かりやすいということは大切なことですが、分からないことの豊かさを、見失わないようにしたいと思いました。
(小池秀章)

育心

カナダからの手紙   作家/玉岡かおる

今月の『育心』は玉岡かおる先生にご執筆いただきました。
保育の世界に身を置かせていただき、30年余りが経ち、その間多くの子ども達との出会いがありました。彼ら一人ひとりの、尊いいのちの輝きにふれるとともに、それぞれが違う光を放って、未来を紡いでいく存在であることも学ばせていただきました。
そんな私ですが、我が子の存在は少し違っていました。私の経験値の範囲内で、なおかつ、思い描く子育てプランの中で、娘が成長していく満足感を得ようとしていたのです。
玉岡先生のお話の中に「なぜにあれほど、みんなと同じであることを望んだのやら」「それは私のエゴだった」とあり、まさに私のことだと感じました。
娘は今、平坦な道ではありませんが、私の経験値や予想をはるかに超えた娘の人生を、懸命に歩んでいるところです。
私はそれを静かに見守りながら、後方支援ができればと思っています。
青い華は青い光を  黄色い華は黄色い光を  赤い華は赤い光を  白い華は白い光を
それぞれに輝き、未来を紡いでいけますように。仏さまのおみのりを聞かせていただく中で、親のエゴや保育者のエゴに気付かせていただきたいと思います。

教育相談

「正しい箸の持ち方を教えるのは、いつから?」   
名古屋大学名誉教授/八田武志

八田武志先生の『教育相談』は、「正しい箸の持ち方を教えるのは、いつから?」という保護者の質問に対して、わかりやすくご回答いただきました。
正しく箸が使えるようになるためには、ある程度手指の運動の巧みさが獲得でき、練習する際に必要な言葉の発達、子ども自身の「興味」や「やる気」が育っていることが大切であると学ばせていただきました。
私の園では「食べたい」という気持ちで、手づかみやスプーンで、自らごはんやおかずをいただくことや、楽しく意欲的に食事ができることをスタートとしています。
発達の個人差をしっかりと見極め、温かく見守りながら、無理なく焦らず少しずつ、楽しみながら親も保育者も、子どもと一緒に取り組んでいけるといいですね。

私の雑記帖

小さな絵本活動「青空図書館」からうまれる心地よい場とつながり   
ヒトトキ。えほん/岩永彩理

今月の『私の雑記帖』は、岩永彩理さんが「公園の青空図書館」の活動についてご寄稿くださいました。
お話を拝読しながら、安心して子育てができる環境を作るためには、地域のつながりがとても大切であると改めて感じました。
皆が一緒に一冊の本を楽しむきっかけとなったり、子育ての不安や喜びを共有したり、誰もがホッと休憩できる場に広がって、本当に素晴らしい活動を継続されています。
青空図書館の有縁の皆さんも巻き込んで、更なる活動の広がりが期待されます。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし26

雪と梅   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、雪遊びの中で見つけた小さな春(梅花)がきっかけで、楽しかった「梅干しづくり」が思い出されました。

line

寒冷の折、被災地の皆様には心よりお見舞い申しあげます。
(鎌田 惠)

令和6年1月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

目 次