家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん3月号(2023年3月1日発行)は

「医者は病気を診て病気を治す。ナースは人を見て人を治す」これは、『ザ・トラベルナース』というテレビ番組で、よく出てきた台詞です。
お釈迦さまは、その人の性格や能力に合わせて教えを説いたと言われていて、それを「応病与薬(おうびょうよやく)」(病に応じて薬を与える)という言葉で表現します。しかし、ある先生から、正確には、「病に応じて」ではなく、「病人に応じて」だと聞かせてもらいました。確かに、同じ病であっても、人によって薬の種類や量は違います。「人を見る」ということの大切さと難しさを感じています。

もう一つ、テレビ番組『ザ・トラベルナース』より。
「かのフローレンス・ナイチンゲールはこう言っています。『仕事とは、自分だけの出世や名誉の為ではなく、もっと大きな意味をもつべきものである』さらにこうも言っています。『看護とは犠牲行為であってはなりません。人生最高の喜びの一つであるべきです』と」。
本来、他人(ひと)のために何かをするということは、人生最高の喜びなのです。ただ、本当にそのように受け止めることが出来るのは、仏さまだけでしょう。私たちは、そんな仏さまを尊い方であると仰ぎ、せめて、仏さまのまねごとをさせていただきたいものです。

NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』に出演中のくわばたりえさんが、「子育てから得た気づき」ということで、次のような話をされていました。
「一人目が生まれた時、『一人で生きていける強い子に育てたい』と思った。三人の子育てをしていく中で、一人で子育て出来ないって分かって、『違うわ』と。『一人で生きていくんじゃなくて、困ったら皆に頼って生きていける人になってほしい』と思ったんです。困ったら人に頼って生きていけるということは、頼れる友達がいるっていうことやし、困っている友達がいたら声をかけれるということやし、助け合って生きていける人になってほしい」
一人で生きていける人など、一人もいません。みんな多くの人と繋がり合い、支え合って生きているのです。そのことを忘れないでいたいと思います。

「トビウオが飛ぶとき、他(ほか)の魚(うお)は知る。水の外にも世界があると」
これは、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の主人公・舞の幼なじみ梅津貴司が、絵はがきで舞に送った言葉です。
水の中に住んでいると、水の中の世界がすべてだと思ってしまいます。しかし、水の外を飛ぶトビウオを見た時、水の外にも世界があることに気づきます。
私たちは、自分にとって、善いか悪いか、好きか嫌いか、敵か味方かなどと、自己中心の心によって創り出した迷いの世界を生きています。そして、その世界がすべてだと思っています。迷いを超えた仏さまの世界に出遇(あ)わせていただきましょう。
(小池秀章)

育心

タイパの悪いこと    西正寺住職 龍谷大学非常勤講師/やなせなな

今月の『育心』は、中平了悟先生のお話です。
日常生活や仕事の中で、時間を節約してムダを省き、効率良くもの事をこなすのは、必要なことではありますが、一見ムダと思われることに、あえて時間をかけて取り組んでみた時、とても豊かな時間が過ごせたと感じることがあります。
5歳児の制作コーナーには、ボンドや糊、セロテープや両面テープといった様々な接着材料が準備されています。
ある時、ロボットの足を立たせようと、K君が箱と箱の接着方法を教えてほしいとM先生に聞いていました。
M先生は、それぞれの接着材料の使い方や特徴をK君に知らせただけで、その答えを言わず、「いろいろ試してごらん」と言いました。
K君はその日、ロボットの足を接着するために、とても長い時間を費やしましたが、完成したロボットを、自信に満ちた笑顔で見せにきてくれたそうです。K君にとって、試行錯誤の時間は、とても豊かな時間だったことでしょう。
子どもたちの生活やあそびは、中平先生のお話にある、この「タイパの悪いこと」こそが大切なのではないかと感じます。
子育てや保育の中で、「早く早く……」となってしまっていないか、今一度振り返ってみたいと思います。

子育ちフォーラム

子どもに「ご苦労さま」と言えますか?   ホッとハウスinおおの代表/梅林厚子

今月の2ページ目、梅林先生の『子育ちフォーラム』を拝読し、「子どもは自ら伸びようとする力を持ち備えています。それを育むか、摘み取ってしまうかは私たち大人であり……」の一文を目にして、子どもたちの教育・保育に関わらせていただく身として、背筋が伸びる思いがいたしました。
私の園の子どもたちも、一日の大半を園で過ごす子どもがほとんどです。
子どもたち一人一人の、いのちの輝きそのものを見つめ、仏さまのお慈悲の光に照らされながら、保育者である私も、ともに育ち合う身であることを忘れないでいたいと感じました。

私の雑記帖

絵本に出あう 絵本でつながる   株式会社憧憬社/武田朋彦

『私の雑記帖』は、世界の絵本の「読み語り」の活動をされている武田朋彦さんのお話です。
私も実際に、武田さんの「読み語り」に出会わせていただきましたが、どんどん絵本の美しさやお話の面白さに引き込まれました。
確かに、近年の子どもたちを取り巻く環境は、すぐに答えが解ってしまう視聴覚ツールが溢れ、「何だろう」「どうしてかなぁ」をゆったりと頭やこころで巡らす、豊かな時間が奪われているような気がします。
美しい本物の絵本を、子どもたちとともに、1ページ1ページ楽しむ時間を、作っていきたいと思います。
貴重なお話をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし15

泣いていいんだ   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、大好きなお兄さんやお姉さんと、お別れするのは悲しいけれど、「泣いたり笑ったり」も成長の証だねと喜び合う、温かい卒園式のお話です。

line

年度末、子どもたちの成長に喜びをこめて。
(鎌田 惠)

令和5年2月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

目 次