家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん1月号(2023年1月1日発行)は

先日、車を運転していたら道路工事をしていました。片側通行になっていて、交通整理の人が止まるように棒を振って合図をしてきました。「急いでいるのに、こんな時に工事なんかして!」と少し腹立たしい気持ちになりました。しかし、交通整理の人が、深々(ふかぶか)とお辞儀をされた瞬間、ハッと我に返り、自分のことしか考えず腹を立てたことが、とても恥ずかしくなりました。
もし、交通整理の人がお辞儀をされなかったら、私は腹を立てたままだったと思います。けれど、お辞儀をしてくださったお陰で、我が身を振り返ることができました。とても有難い「お辞儀」でした。

2022年10月14日、NHK朝ドラ「舞いあがれ!」の中で、主人公・舞に、「舞も、ばらもん凧ごたぁ どがん向かい風にも負けんと たくましく生きるとぞ」と、ばば(祖母)が言っていました。その台詞を聞いて、次のようなことを考えました。
私たちは通常、「追い風はよくて、向かい風は悪い」と考えています。確かに、追い風の時は、その風に乗って順調に進めばいいでしょう。しかし、向かい風の時には、その風に立ち向かうのではなく、その風を受けて高く舞い上がればいいのです。凧が向かい風を受けて高く舞い上がるように。
また、ある人から、「鯉のぼりが元気よく泳いでいるのは、向かい風の時だ」と聞いて、ハッとさせられたことがあります。
向かい風の時には、向かい風の時の、大切な人生があるのです。そのことを忘れないでいたいと思います。

2022年10月27日、スピードスケート選手・小平奈緒さんの引退会見がありました。その中で、「子どもたちに伝えたいメッセージは?」という質問に対して、次のような返答をされていました。
「私がスケートというスポーツで磨いてきた人間性っていうのは、一緒に競い合う仲間をリスペクト(尊敬)すること。外国の方と接していると、違う文化だったり、違う言語だったり、違う思考の持ち方だったり、いろんな人と接するなかで、違いを分かろうとするっていうこと。後は、数字だとか、順位だとかで、自分や他人(ひと)の価値を決めつけないでほしいっていう思いは、たくさんの子どもたちに伝えていけたらいいなっていうふうに思っています」
スピードスケートを人生とされてきた小平奈緒さんの言葉は、とても考えさせられるものでした。

今年も新しい年を迎えることが出来ました。お正月になると思い出す言葉があります。それは、浅田正作さんの、
「元日や 今日のいのちに 遇(あ)う不思議」
という言葉です。今年もいのちを恵まれた不思議に感謝しながら、 日々の生活を過ごしていきたいものです。
(小池秀章)

育心

向けられたまなざし   京都女子大学非常勤講師 善教寺副住職/赤井智顕

今月の赤井智顕先生の『育心』を拝読して、ある母娘の姿を思い出しました。
駅の玄関近くに車を停めて、来客の到着を待っていた時、私の車の少し前に一台の車が停まりました。
スーツケースとともに、20代ぐらいの娘さんが車から降りました。次に運転席からは、お母さんらしき女性が降りてきました。
「気をつけてね」
「わかった。じゃぁ」
お母さんは、駅のエスカレーターで上がって行く娘さんの姿をじっと見守っておられます。やがて娘さんの姿が駅の中に消えて見えなくなった後も、お母さんはしばらくその方向を見つめておられました。
「無事に電車に乗れたかな」「無事に目的地に到着できるかな」「旅先でトラブルに巻き込まれないだろうか」そんな気持ちだったのでしょうか、見えなくなった娘さんの姿に、じっと向けられたそのまなざしは、慈愛に満ちたものでした。
そんな母娘の姿を思い出しながら、「この私のいのちの上にも、何の妨げも限界もない、仏さまのまなざしが、降り注いでくださっている」という歓びを、赤井先生のお話を拝読し、改めて感じさせていただきました。

親子でにこにこクッキング

カリフラワーのサラダ   食文化・食育料理研究家/坂本佳奈

今月の3ページ目は、坂本佳奈先生の、『親子でにこにこクッキング』です。
カリフラワーは、メイン料理の付け合わせというイメージがありますが、今回は主役となるレシピを教えていただきました。
また、茹でないで生でいただけるということも、初めて知りました。
いくつかのアレンジを加えると、いろんな味が楽しめそうですね。栄養満点の冬の旬野菜を、さっぱりとしたサラダで、子ども達と美味しくいただきたいと思います。

私の雑記帖

「ブータン」あれこれ   作家/肥田美代子

『私の雑記帖』は、肥田美代子先生の、ブータンのお話です。
ブータンは、インドや中国などの大国に挟まれた、国土の小さな国です。
当時の国王が「国民総幸福量」について発言された頃は、決して裕福な生活とは言えない中で、国民のほとんどが自分は「幸福」であると感じていたということです。
しかし、多数の文明の利器がブータンに普及してきた近年の調査では、国民の「幸福度」が低くなってきたと知りました。
先日お寺の報恩講で、ある先生から「幸せになったから感謝するのではなく、感謝するから幸せなんだ」という言葉を聞かせていただきました。
肥田先生のお話を拝読しながら、「幸福を感じる」とはどういうことなのかを、改めて学ばせていただきました。

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皆さん、新しい年を元気にお迎えください。
(鎌田 惠)

令和4年12月7日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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