家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん12月号(2022年12月1日発行)は

ある高校の文化祭での劇で、「カルネアデスの板」を取り上げているものに出会いました。「カルネアデスの板」とは、古代ギリシャの哲学者カルネアデスが提起した次のような問題です。船が難破して海に投げ出された人(A)が、板きれにつかまり、何とか浮いている。そこに別の人(B)がその板につかまろうとしてきたが、二人がつかまると板は沈んでしまうので、その人(B)を突き飛ばして溺死させてしまった。その時、突き飛ばした人(A)の行為は、犯罪に当たるかどうか、というものです。現在の日本の法律では、この行為は、緊急避難にあたり、犯罪にはあたらないそうです。
劇の中では、呪いのかかった動画をLINEで受け取った人は、その動画を他人に送らなければ、4日後に消えてしまう(死んでしまう?)というものでした。劇は、動画を送られた一人の生徒が、自分が助かる為に、他人に呪いのかかった動画を送ろうとしている……、という所で終わっていました。送ったかどうかは、見ている人に考えさせようとしているのだと思います。
「自分が生きる為に、他人を殺してもしかたがない」普通は、そう考えると思います。私もそう思っています。しかし、それでいいと割り切るのではなく、そこに何か引っかかりを感じる人間でありたいと思います。

国と国との争いが、いつまでたってもなくなりません。私たちに、何か出来ることはないのでしょうか。
BS1スペシャルで、「戦禍の中の僧侶たち〜浄土真宗本願寺派と戦争〜」(2022年8月20日)という番組が放送されていました。
その中で、僧侶の小武正教さんが、同じく僧侶である祖父の法話ノートに、「先祖は皆身命をすてて国家を護ってくれたのであります」「天皇陛下の御恩を忘れたら人間ではありません。ひいては、浄土真宗の信徒でもありません」とあるのを見た時のことを紹介されていました。小武さんは、
「祖父が生々しくこういうことを言っていたということは、それは、やっぱり、ショックでしたね。(中略)じゃあ、私だったらどうしただろうかって言う時に、祖父と違うことができたとは思わないんです。ただ、今は、同じことを繰り返したくない」
と言われています。そして、番組の最後の方で、
「人間はそんな強くない。状況の中に流されるっていう怖さ。それが戦前のそうした僧侶の姿から学ぶことですね」
と言われていたことが、とても印象的でした。
「過去の過ちを認め、二度と同じ過ちを繰り返さない」これは、とても大切なことです。しかし、同じ状況になった時、同じ過ちを繰り返してしまう可能性が、十分にあるのが私たちなのです。だからこそ、同じような状況を作らない努力が必要なのではないでしょうか。常に、自分の危うさを心に留めて。
(小池秀章)

育心

出番です! 子育て第二ラウンド   作家/玉岡かおる

玉岡かおる先生の『育心』は、ご自身の「子育て第二ラウンド」のお話です。
私の園でも、お母さんがご出産されるに当たって、おじいちゃんやおばあちゃんが、園児(お孫さん)を送り迎えされるご家庭が多くあります。また、お母さんが里帰り出産で、おじいちゃんおばあちゃんが、まだまだ現役でバリバリ就労されている場合は、臨時で1カ月〜2カ月ほど、園に入所されるお子さんもおられます。
お盆やお正月の非日常的な関わりではなく、祖父母も子どもも、慣れない環境の日常が始まるため、最初は少し不安そうに見えます。
しかし、園を退所される頃には、すっかりどの子も、おじいちゃんおばあちゃん子の姿です。
久し振りの子(孫)育てに、初めは戸惑われても、自分の子育ての経験を掘り起こし、ありとあらゆる知恵を出し切って、お孫さんのために奮闘されるだけでなく、お母さんが赤ちゃんにかかりっきりになってしまう、お孫さんの寂しさや不安を、温かく受け止めてくださり、出産されるお母さんも安心です。
きっとこれからも、お兄ちゃんお姉ちゃんになった葛藤を、支える存在となってくださることでしょう。
おばあちゃんの深い愛情を感じたお話でした。

たくさんの花とたくさんの喜びを

ペガサスのように   育児漫画家/高野 優

今月の2ページ目は、高野優先生のお話です。
人が一生の中で、本当に気の許せる、本音を話せる友人は、そんなに多くないように思います。
お互いに家庭を持ったり、居住地が遠く離れてしまったり、それぞれの仕事が忙しくなってきたり、ましてや近年はコロナ禍で、以前のように簡単に各地を移動することもままならない状況です。
高野先生のお話はとても悲しいお話でしたが、多忙な毎日を過ごすうちに、すっかり疎遠になった懐かしい友人の顔が浮かんできて、急に会いたくなりました。
「元気にしているかな?」
「久し振りに会いたいな」
昨今は、LINEやメールといった、一瞬にして繋がれるツールもありますが、せめて、友人を思い浮かべ、ゆったりと手紙をしたためて、会える日を楽しみにしたいと思います。

私の雑記帖

正しくあることの難しさ   
一般財団法人 公正研究推進協会 監事/國友哲之輔

『私の雑記帖』は、國友哲之輔さんのお話です。
「不正を防ぐ仕組みづくり」のお仕事に長年従事してこられた國友さんは「本当に正しいことは、現在の科学では答えられない」と実感されています。
そして、「宗教や哲学の基盤も動員して考えるべきとき」と仰っています。
私たちが、「真実の正しさ」を示すことは、とても難しいことですが、仏さまのみ教えをしっかりと聞かせていただいて、自問自答していかなければならない事だと深く感じました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし14

きもちとおもち   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は、ほしくんが園で感謝の「きもち」を込めてついたお餅を、持って帰ってお母さんにプレゼントしました。

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朝夕の吐く息が白く、少しずつ冬が近づいて来ました。
(鎌田 惠)

令和4年11月16日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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