家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん10月号(2022年10月1日発行)は

夏に受けた大豆生田啓友先生の研修以降、年長組を中心に毎日サークルタイムを行っています。サークルタイムとは、子どもたち同士で丸くなって集まり、いろいろなことを話し合う時間のことです。お友だちのいろんな意見を、なるべくさえぎらないで聞く、優しい気持ちで聞くのがマナー。とはいえ、ずっとしゃべり通しの子も、あまり話さない子もいます。少しでも子どもの声を聞き取って思いを引き出したいと、司会の先生たちも質問を投げかけては、耳を傾けています。
「子ども主体の保育」という言葉が聞かれるようになって以来、保育者たちの意識が外を向くようになったと感じます。外というのは、自分の外という意味です。それまでは、どうしても保育計画や保育者の思いの方が真ん中にあって、子どもの声をていねいに拾い上げるまでの余裕がありませんでした。子どもたちの声やつぶやきから明日の保育を創り出していく試みの中で、自分のギアをニュートラルにして子どもたちと向き合おうとする保育者が増えてきたのはうれしいことです。この子はどうしたいのかな。あの子はどう思っているかしら。子らを敬い、あるがままに受け入れようとする柔らかさが、保育者たちの中に少しずつ芽生えています。そしてそれは不思議なほどまっすぐに、あみださまを真ん中にして集う『まことの保育』の姿勢と合致していると思います。

年長組のAさんがみんなの前で話す声を、担任は聞いたことがありませんでした。仲の良いお友だちとは楽しそうにおしゃべりをしているのですが、お当番活動の時にも、先生に何かを訴えたいときにも、Aさんの声は聞き取れないほど小さいからです。みんなの前で話すのはあまり得意ではないのだろうと、担任も、過去の担任たちも、ずっとそう思っていました。
今年の年長組は、型破りな男児たちの多い、エネルギッシュな学年。クラスの枠にはまらない子も多く、夏休み明け、一度クラスの垣根を外してみようかということになりました。子どもたちが考えた3つの遊びの中から好きな1つを選んで過ごすのです。クラスもメンバーも混合、人数も均一ではない3チームが出来上がりました。その日は朝から意気揚々と自分の選んだチームに入り、笑顔で没頭する子どもたち。
水遊び、虫探し、紙飛行機の中からやりたいことを選んで過ごした一日の終わり、クラスに戻るとサークルタイムが始まりました。
「『今日はみんな何をしましたか』と声をかけたとたん、『水運びリレーをしたよ』と、はっきりと大きな声で伝えてくれるAさんの声が一番最初に返ってきたんです。Aさんですよ。わたし、彼女のあんなしっかりした声を聞いたのは初めてで、もう本当に意外で、嬉しくて……」
笑顔で報告する担任のN先生の周りを、ともに喜び合う年長の担任たちが取り囲みました。何がよかったんだろう。話すの苦手かと思っていた。本当は話したかったのかな……。保育者たちのサークルタイムが始まります。正解のない保育。まるく集う姿の中に、あみださまがいつも参加していらっしゃるような気がするのです。
(武田修子)

育心

繋ぐ役割   龍谷大学短期大学部教授/羽溪 了

羽溪了先生の『育心』を拝読して、いきいきとした子ども達の姿に感動しました。現場の保育者には、その情景が、鮮明に浮かんでくるのではないでしょうか。
そして、生活や遊びの中の、日常の何気ない環境の一つひとつが、子どもの成長の過程に、いかに大切なものかを改めて感じました。
30年前は、どこの保育室にもクーラーが設置されていませんでした。
子ども達と、汗をびっしょりかいて遊んだある日、水道で顔をジャバジャバ洗ってK君が言いました。
「涼しくなったで?」
それからしばらくの間、子ども達の「涼しくなるには」の探究が始まりました。事務室でうちわを借りてきて風をおこす子、顔を洗ってからうちわで扇ぐと、もっと涼しくなることを発見した子、どの窓を開けると、部屋に風が入って来るのか考える子、戸外に出た際、影の涼しさに気付いた子など。発見したことを伝える子どもたちの目は、キラキラと輝いていました。
当時の私は、羽溪先生の「人生の根っこを育む環境の大切さ」を、しっかりと見据えた保育が出来ていませんでした。しかし今振り返ってみると、好奇心旺盛な子ども達のいきいきとした姿に、多くの学びをもらっていたんだと思いました。

もっと絵本を楽しもう12

「なに…? どうなっているの…?」をこども達自身が考え楽しむ   
絵本あれこれ研究家/加藤啓子

今月の2ページ目は、加藤啓子先生の『もっと絵本を楽しもう』です。
絵本といえば、ことばや文章といった、文字が欠かせないものだと、思いこんでいました。
美しいことばや面白いことばなどの、楽しさを感じられる絵本もありますが、「絵本を読んであげる≠烽フから一緒に楽しむ≠ニいう方法」という加藤先生のことばに、絵本の楽しみ方の広がりを感じました。
確かに保育の現場では、子ども達に対する言葉の情報が溢れているように思います。
それをジェスチャーや声の強弱、ことばとことばの間≠ネどで、子ども達の思考を刺激してみたり、絵本からの発見を待ったりして、読み手も一緒に楽しむことが出来れば、とても素敵だなと感じました。

私の雑記帖

朝顔は、死に向かって花を咲かせる   
浄土真宗本願寺派等光寺住職 布教使/石井法水

石井法水先生の『私の雑記帖』の表題「朝顔は、死に向かって花を咲かせる」を見て、少しドキッとしました。
夏の朝日を浴びた美しい朝顔の花と、「死」というものが、何だか相反するもののように感じたからです。
しかし、お話を拝読しながら、冬を生きることが出来ない朝顔が、自ら命の終わりを悟り、種という自分の分身を作り出すために、死に向かって美しい花を咲かせているということを知りました。
命の終わりを、けっして避けることが出来ないこの私も、二度とない今日を、大切にしたいと思いました。

お話の時間 つきみとほし12

報恩講ってな・あ・に?   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』は報恩講をご縁にして、いのちの終わりについて、お浄土について、つきみちゃんとほしくんが、おじいちゃんからお話を聞きました。

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美しい虫の音に、秋を感じる今日この頃となってきました。
(鎌田 惠)

令和4年9月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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