家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん5月号(2022年5月1日発行)は

「本当におもしれえ仕事ですねえ。洗濯もんの数だけ人生がある思うたら、何か汚れた服もいとおしゅう思えてきます」(2021年12月27日NHK朝ドラ「カムカムエヴリィバディ」、クリーニング店で働く主人公・るいの台詞より)
洗濯物を見た時、単なる汚れた服だと見るか、そこにその服を着ていた人の人生を見るか、大きな違いです。
2022年1月22日、95歳で亡くなられたベトナム出身の禅僧ティク・ナット・ハン氏は、
「この一枚の紙の中に雲が浮かんでいる」
と言われています。この一枚の紙が存在する為には、雲が無ければなりません。雲が無ければ水(雨)はなく、水が無ければ樹は無く、樹が無ければ紙は無いからです。
一枚の紙の中に、無限の世界を見る。そんな豊かな人生を歩みたいものです。

「ミステリという勿れ」というテレビドラマの主人公・久能整(くのうととのう)の台詞がとても興味深いです。実際に近くにいたら、「面倒くさい」と思われるタイプの人ですが、色々と考えさせられます。「いじめ」について、次のように語っていました。
「僕は常々思ってるんですが、どうしていじめられてる方が逃げなきゃならないんでしょう。欧米の一部では、いじめてる方を病んでると判断するそうです。いじめなきゃいられないほど病んでる。だから隔離してカウンセリングを受けさせて癒すべきだと考える。でも日本は逆です。いじめられてる子に逃げ場を作って何とかしようとする。(中略)先生や親に『あいつにいじめられたよ』って。『あいつ病んでるかもしれないからカウンセリング受けさせてやってよ』って。皆が簡単に言えるようになればいいと思う。」(2022年1月17日放送より)
「子どもが別の子どもを殴った時、殴られた子どもを抱きしめることが多いけれど、殴った子どもを抱きしめてあげることが大切だ」という話を聞いたことがあります。殴られた子どももショックを受けているでしょうけど、殴った子どもは殴らずにはいられなかったほどのものを、心に抱えているというのです。忘れてはならない視点だと思います。

「『わかった』人が『わからない』人に教えるのが教育とされるが、人生、『わかった』という境地に立てる人などいない。だから『わかった』気でいる人の話には要注意。『人生、そこらあたりが問題なんだよね』と共に考えてくれる大人が近くにいると一歩進める」
これは、鷲田清一さんが「折々のことば」(2022年1月30日『朝日新聞』)の中で、絵本作家・五味太郎さんの文章を取り上げ、書かれたものです。人生、『わかった』という境地に立てる人などいません。大人は子どもより、少し長く人生を歩んでいるだけなのです。大人も子どもも、初めての人生を歩んでいる、同じ一人の人間なのです。
(小池秀章)

育心

五月雨はしとしとと   青少年問題カウンセラー/外松太恵子

今月の『育心』は、外松太恵子先生にご寄稿いただきました。
単語で紡がれた文章の中にオノマトペ(擬音)が登場すると、途端にその場面が躍動し、文章にいのちが吹き込まれたような感じを受けます。まさに「魔法のエッセンス」ですね。
外松先生のお話の中の、新幹線ホームの親子のひとコマのように、子ども達が、見て聞いて感じた心の動きを、安心して表現することが出来るのは、やはり大好きなまわりの大人との、温かなコミュニケーションが大切なのですね。
「先生、犬さんワンワン鳴いてるよ」
「犬さんみんなにご挨拶してるのかなぁ」
「バッタさん、ピョーンって跳んでった?」
「バッタさん元気ね。どこに遊びに行ったのかな?」
「お水ジャー(ジョロでお花に水をやりながら)」
「お花さんお水美味しいって言ってるね」
保育の現場ではオノマトペがいっぱいです。子ども達の心の表出です。
仏さまのおこころをしっかりと聞かせていただき、私自らが心を柔らかくし、穏やかな気持ちで子ども達の発信に共感し、温かい応答ができるようになりたいと思いました。

子育ちフォーラム

希望としての子ども   和洋女子大学教授/矢藤誠慈郎

2ページ目は、矢藤誠慈郎先生の『子育ちフォーラム』です。
私の園で毎週行っている月曜礼拝で、「おやくそく」をみんなで唱和します。
「・わたくしたちは み仏さまを拝みます・わたくしたちは お話をよく聞きます・わたくしたちは ありがとうと言います・わたくしたちは みんな仲良くいたします」
先日の月曜礼拝で、「遠い国で戦争が起こり、みんなと同じぐらいの子ども達が、殺されているのを知っていますか?」と子ども達に問いかけてみました。
すると、「テレビのニュースで見た」と多くの子どもが手を挙げました。そして、「みんな仲良くせなあかんなぁ」と言った子がいて、子どもの鋭敏さに驚かされました。
悲惨な事実に蓋をしてしまうのではなく、わかりやすい言葉で説明し、どうすれば良いのか、私達に出来ることは何かを、子ども達と、しっかり話し合っていきたいと、矢藤先生のお話から、改めて感じました。

私の雑記帖

ちょっと素敵な “がんのリアル” が見える写真展
写真家・文筆家 がんフォト*がんストーリー代表/木口 マリ

『私の雑記帖』は、木口マリさんが、ご自身のがん治療の経験の中での、様々な出会いと活動をご紹介くださいました。
38歳という若さでがんを宣告され、辛い治療の日々は、到底想像が出来ない大きな不安と悲しみ、絶望を味わわれたのではないでしょうか。
「がんフォト*がんストーリー」で、尊く温かく力強い一枚一枚に出会わせていただき、がんと生きる人生に向き合われたお姿に、大変勇気をいただきました。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほしF

川はお友だち   文・絵/三浦明利

今月の『お話の時間』では、「川さん」のために、つきみちゃんとほしくんの、素晴らしい遊びが発展しました。

line

爽やかな五月晴れの下、元気に遊びたいと思います。
(鎌田 惠)

令和4年4月15日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

目 次