家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん園版1月号(2022年1月1日発行)は

お陰さまで今年も新しい年を迎えさせていただきました。毎年思うことですが、昨年を振り返ると本当にいろいろな事があった一年であると同時に、あっという間に過ぎ去った一年でした。人生は「今」の積み重ねです。本年も「今」を丁寧に歩んでいきたいと思います。

back numberという日本の有名なミュージシャンが、昨年8月に「水平線」という曲を発表されました。聞くと、とても綺麗なメロディにのせて、心に残る印象的な歌詞が散りばめられていました。

「出来るだけ嘘は無いように どんな時も優しくあれるように 人が痛みを感じた時には 自分の事のように思えるように」

「自分の背中は見えないのだから 恥ずかしがらず人に尋ねるといい 心は誰にも見えないのだから 見えるものよりも大事にするといい」

そうありたいと願うような想いが、ストレートな言葉を通して響いてくると共に、これまで仏教が伝えてきたメッセージが、そこに語られているようにも聞こえてきたのです。
私の痛みをご自身の痛みとして感じ取ってくださり、誰にもわかってもらえない私の痛みを取り除いて、本当の安らぎと豊かさを与えていこうとはたらいてくださるのが、阿弥陀さまの慈悲の心です。この阿弥陀さまの慈悲の心の温かさや、尊さを知らされていく中に、私たちは自分中心に生きている、わが身の姿を知らされていくのではないでしょうか。
自分自身のすがたは自分から見ることはできません。阿弥陀さまの慈悲の心を仰ぐべき尊い真実であると知らされていく時、私たちは人の痛みを感じることの大事さを教えられていくように思うのです。

「いのちは尊いと言うのであれば、尊いような生き方をしなくてなりませんね」

以前、ある先生から教えていただいた言葉です。いのちはなぜ尊いのか、尊い生き方とはどういう生き方なのか、この問いを持つことは大切なことだと思います。阿弥陀さまは私のいのちを、どんな時も尊いいのちとご覧くださっています。たとえ私が自分自身に絶望するような時でも、阿弥陀さまは決して絶望されることはありません。いついかなる時でも、慈悲の心で抱きとめてくださっています。浄土のさとりの領域へと必ず導いてくださるのです。
一度きりのこの人生。ただ自分勝手に生きて終わっていくのではなく、阿弥陀さまに大悲されたいのちとして、真実に尋ねながら人生を生きていきたい、そんなことを感じさせていただいた言葉でした。
(赤井 智顕)

幼稚園・保育園版

育心

阿弥陀さまの願いの中で   龍谷大学非常勤講師/小池秀章

今月の『育心』で、小池秀章先生がご紹介くださいました『聞く地蔵と聞かぬ地蔵』のお話から、私もある物語のシーンを思い出しました。
世の中に「国」というものがまだ存在しない頃、力を持った豪族が、そうでない豪族を次々に侵略し、さらに力を持った豪族同士が争いを繰り返していました。
家を焼かれ、家族や仲間と引き離されて奴隷の身となった一人の娘が、その主人となった青年に問いかけるシーンです。
「なぜ私たちを捕まえて、こんな残酷なことをするの?」
「人手が要るからだ。種を蒔いて育て、大きな家を建て、立派な服と派手な宝石が沢山欲しいからだ」
娘はさらにたずねます。
「なぜ多くの物が欲しいの? 私たちは物がなくても幸せだった。イノシシ一頭で20人は食べられる。ここの人はイノシシを一人で一頭食べるの? それとも一日5食? 10食食べるの?」
「満たすのは腹じゃない、心だ。ここの人の心は、百キロの金でも千頭の馬でも満たされない。だからいつも心が飢えているんだ!」
「聞く地蔵」に願いをどれだけ叶えてもらっても、欲深な心は満たされないということですね。
仏さまの教えに出遇い、「聞かぬ地蔵」に手を合わせて生きる心の豊かさを大切に、新しい年のスタートを切りたいと思いました。

親と子の育ち合い広場15

子どもたちに手渡していくもの   子育て支援コミュニティワーカー/藤本明美

今月の2ページ目は、藤本明美先生の『親と子の育ち合い広場』です。
先生のお話の中の「コロナ禍の中で、地域の行事が全部中止や縮小になり、この先も、コロナが言い訳になり、面倒なことはこのままなくなってしまいそう」というところに目が留まりました。
私も子どもの頃は、地域の行事に参加するのがとても楽しみでした。大勢の人たちがワイワイと集う。そんな活気に溢れた風景が脳裏によみがえります。
地域の行事は、年長者を敬ったり、皆んなで力を合わせたり、皆んなのために役割を一生懸命果たす大人の姿(人とのつながり方や社会性)を、子ども達が見て感じて自然に学ぶ、貴重な場だったのではないでしょうか。
「今の現状をポジティブにとらえ、今できる小さなことを楽しみながら……」
子ども達に大切なものを手渡していける大人でありたいと思いました。

私の雑記帖

あなたを表す「ことば」   ダンサー/中西浄華

今月の『私の雑記帖』。ダンサーの中西浄華さんのお話は、あなたを表す「ことば」がテーマです。
自分の気持ちを表すことは、子どもたちのこころを育む上でとても大切な事です。歌うこと、お絵描き、楽器遊びやダンスなど、いろんな経験を経て、表現することの楽しさを感じていきます。
「すべての選択や行動は表現であり、あなたを表すことば」、中西さんがダンスという「ことば」に出会われたように、子ども達が安心して自分の「ことば」を見つけ、安心して表現していけるよう、保育を見直していきたいと思います。
貴重な原稿をありがとうございました。

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新しい年が子どもたちのために明るく楽しい年になることを願って。
(鎌田 惠)

令和3年12月8日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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