家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん園版10月号(2021年10月1日発行)は

仏さまは智慧という平等の眼と、慈悲という自分と他人との隔てを超えて、他者の痛みをわが痛みと共感する心で、すべてのいのちを見つめていかれます。これがあらゆる違いを認め、すべてのいのちを慈しむ、自他一如とよばれる仏さまのお心です。しかし、私自身はどこまでも自分の都合を中心にして考え判断し、行動を起こしていく存在です。そして自分に都合の良いものを貪り求め、自分に都合の悪いものを遠ざけようとし、それを遠ざけることができない場合に腹を立てていくのです。まさにお釈迦さまが、自分の都合の濃度が濃ければ濃いほど、苦悩が深くなっていくことを指摘された所以です。この自分中心にしか物事を考えられない者、そしてそんな私を正しいと思って生きている者を、仏教では迷いの存在と捉えていくのです。
この自己中心的な自我の殻を打ち破り、一切の矛盾対立を超えて、あらゆるいのちが響きあい溶け合っている豊かな「いのち」の領域をはっきりと確認されたのが、仏さまの智慧の眼でした。この真理の領域から迷いの者に真理を告げ、まことの方向へと人生を導いてくださるのが、仏さまの説かれた智慧の教えだったのです。

智慧の教えは、私たちの日々の生活のなかに実践し、活かしていくことができるように思います。例えば智慧の教えは、「少欲知足」というあり方を教えてくれています。すべてがつながり合い、密接に関わり合いながら存在している。そしてその中で互いに生かしあっているという、いのちの事実を少しでも感じることができたのであれば、過度な貪りやエゴを増幅させていくのでなく、むしろ注意し、慎んでいく、「欲少なく、足ることを知る」生活を意識することにつながっていくのではないでしょうか。
もちろん、必ずしなければならない強制的なものではありません。しかし、自分にできる小さなこと、例えば電気のスイッチをこまめに消す、水道の水を出しっぱなしにしない。そんな行動一つひとつも慎みの行為であり、仏さまの教えに育てられ、自身にブレーキをかけているすがたといえるのではないでしょうか。
外だけに意識を向けていくのではなく、仏教が説く智慧の教えによって、自分自身の内へ内へと意識を向けていく時、何か人生の景色が変わったり、これまでの自分にはなかった気持ちや行動の変容が起きてくる。それが仏さまの教えによって、私自身が育てられていく人生であると受け止めています。
(赤井 智顕)

幼稚園・保育園版

育心

土から生まれ 土へと帰る   作家/玉岡かおる

今月の『育心』は、玉岡かおる先生がご執筆くださいました。
「持続可能な未来」「持続可能な社会」「持続可能な開発」など、最近は「持続可能」という言葉をよく耳にします。
命を大切に、争わず、皆で助け合い、暮らしを豊かに、社会を担い、地球を守っていける子どもたちの感性が育まれることを願い、私たちの市の民間保育協議会では今年度から、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを一歩踏み出し学び合っています。
と、何か新しいスタートを切ったという感覚になっていました。
しかし、玉岡先生の「育心」を拝読し、この「持続可能な姿勢」は、昨今気づいた新しい考えではなく、古来より、日本人のモノづくりが、循環と再生を基本としたものであったと知ることができました。
風と潮流だけで、日本列島の荒海を進んで行く北前船の話、役目を終えた船が解体されて、様々な場所で生き続ける話など、早速子ども達に話してみようと思います。
そして、日本の歴史を振り返りつつ、「土から生まれ、土に帰る」という先人の、地球の命の循環の知恵を学び、受け継いでいきたいと思いました。

マッキー先生のアートで子育て@

美術館へ、遊びに行こう!   小学校長・美術館アートナビゲーター/牧井正人

今月の2ページ目は、牧井正人先生のアートで子育て『美術館へ、遊びに行こう!』です。
周囲の鑑賞者に迷惑がかからないよう、美術館では私語を慎み、静かに絵を鑑賞するというのが一般的な認識で、絵を見るということに「緊張」というような感覚がありました。
しかし、マッキー先生の「美術館は、遊ぶところです」という言葉で、絵を見るということに「楽しみ」という感覚を覚え、温かい温度を感じました。
「心を自由にして心を遊ばせる」「絵の中に入って遊ぶ」何だかウキウキしてきます。
遊びを支える大人の役割も大切なのですね。
「子どもの発言を否定しない」「子どもの言葉を繰り返し、すべて受け止める」学びにつながる「対話による鑑賞」で、子ども達とともに、楽しく心を遊ばせてみたいと思います。

私の雑記帖

諦めないことの大切さ   登山家/片山貴信

『私の雑記帖』は、登山家の片山貴信さんのお話です。
バイク事故からの困難を乗り越えて、目標を達成するということは、想像を絶する過酷な日々だったと思います。
そしてさらに留まることなく、次の目標に向かって挑戦し続けられる片山さんの姿に、多くの子ども達が「諦めないことの大切さ」を学んでいくことでしょう。
ますますのご活躍を心より応援したいと思います。
貴重な原稿をありがとうございました。

お話の時間 つきみとほし@

お供えのドーナツ   文・絵/三浦明利

今月から、三浦明利先生の『お話の時間』が始まりました。つきみちゃんとほし君の、ほんわか温かい世界をお楽しみください。

空に浮かんだイワシ雲を見上げながら、子ども達と会話を楽しみたいと思います。
(鎌田 惠)

令和3年9月16日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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