家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん園版7月号(2021年7月1日発行)は

新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらず、あらゆる場所に影響が及び続けています。もちろん教育の現場もそうです。宗門校の大学におきましても、ご縁をいただき担当しています仏教学の講義は対面式での講義がかなわず、オンライン形式での講義を進めています。対面式の講義ができないのは残念ですが、学生の方は今ある環境の中で、精いっぱいの学びに取り組んでくださっています。
宗門校の大学へ入学される方の多くは、これまでに仏教を聞いたり学んだりすることのなかった方々です。ですから仏教学の講義を通して釈尊の生涯や教え、そして浄土真宗の教えに触れていってくださいます。聞き馴染みのない内容で、最初はピンとこないという方も多く、中には「どうして仏教を学ぶ必要があるのか」、「仏教を学んで一体、どうなるのか」といった思いを抱かれる方も少なくありません。けれど、仏教の教えが時代と場所を超えて何を伝えようとしてきたのか、そのことを問い直しながら聞いていくうちに、学生の方々の学ぶ姿勢に大きな変化がおこってきます。

昨年度、仏教学の講義(オンライン)を受講してくださった方の感想です。

毎回の講義を受け、学んだことを書くという作業を繰り返していくうちに、たくさんの学びを得ていることに気がつきました。自分の考えが自己中心的になってはいなかったか、あるがままではなく心にフィルターをかけて周りを見ていなかったか、他者と比べて優劣をつけたり、欲望や執着心に負けてはいなかったかなど、私自身の悩みや苦しみにもお釈迦さまの教えはそっと寄り添ってくださるものだと思いました。
仏教の長い年月を経て現代に残っている教えは、各時代の人々がその教えを肯定し、受け入れてきたからこそ存続してるのだと思います。道徳や常識といった時代や場所によって移り変わる価値観では、人間を本当の意味では救うことができません。本質的な不安の中に生きている私たちですが、生かされているということ、仏さまからは赦されているということに気づくことは大きな支えになります。

仏教の教えを自らの人生を通して受け止め、聞いていく時、不思議なことに教えの言葉の響き方が変わってきます。日々の生活のなかに仏教の教えが大切な意味をもって立ち上がってくる、そんな経験がおこってくるのです。私の人生の生きる力となる、きっとそれが仏さまの教えが持っている不思議な力だと感じています。
(赤井 智顕)

幼稚園・保育園版

育心

赤ちゃんに会うと笑顔になれるから   浄土真宗本願寺派西正寺住職/中平了悟

今月の『育心』は、中平了悟先生のお話です。
私の園は同じ敷地内に児童クラブがあり、卒園児だけでなく、市内の小学生が大勢通所しています。
幼児期の発達段階に「8ヵ月不安」や「第1反抗期」など、様々な「壁」があるように、「9歳の壁」を迎えた学童期の子どもたちも、イライラを消化できず、周囲に攻撃的になったり、友達関係や親子関係がギクシャクして孤立してしまったり、多くの葛藤を抱えているようです。
そこで毎年夏休みに、1歳児クラスのボランティアを彼らにお願いすることにしています。まさに「赤ちゃんに会うと笑顔になれる」と考えたからです。
最初は、面倒くさそうに不貞腐れた様子の彼らも、赤ちゃんを抱っこして寝かせてあげたり、膝にのせて遊んであげたりしているうちに、顔の筋肉が緩み、どんどん笑顔が多くなっていきます。
そんな彼らの姿を見ながら、赤ちゃんのお世話を務めとする私も、実は、赤ちゃんから笑顔をたくさんもらい、力をもらっていたんだということに気付かされます。
「動いている私を動かしているものがある」中平先生のお話を拝読しながら学ばせていただきました。

子育ちフォーラム

子どもが経験している世界を一緒に楽しむ   和洋女子大学教授/矢藤誠慈郎

今月の矢藤誠慈郎先生の『子育ちフォーラム』を拝読しながら、現在22歳になる娘の、幼い頃の姿を思い出しました。
2歳〜5歳頃までの娘は石ころを集めるのが好きでした。
娘の玩具コーナーには必ず箱があり、石ころが大事そうに入っていました。珍しい模様や変わった形の石を集めるというのなら分かるような気もしますが、何の変哲もない、どこにでもあるような石ころばかり。
どんどん家の中に石ころが増えるので、娘のいない間にそっと捨てると、必ずバレて怒られました。
いつだったか、「石ころ集めてたの覚えてる?」と娘に聞いてみたことがありました。
「そうそう集めてたわ。でも、何で集めてたか覚えてないわ」と返ってきました。娘はもう、大人になってしまったんだなぁ……。
好奇心いっぱいの子どもたちの世界を、一緒に楽しみたいと思います。

私の雑記帖

食前のことば 食後のことば   理学療法士/清水健太

『私の雑記帖』は、理学療法士の清水健太さんのお話です。
3歳児の頃は、得意げに張り切って言っていた「食前・食後のことば」ですが、4歳児になると恥ずかしい気持ちが芽生え、言えなくなることは珍しくないようです。
こうした娘さんの発達の姿を温かく受け止め、お父さんが「食前・食後のことば」を代わりに言ってくださる姿を見て、娘さんや息子さんの、感性豊かな心が育っていくことでしょう。そんなご家族の風景に心が温まりました。
ご家庭の貴重な体験談をありがとうございました。

実演童話 こころに届けたいお話

◆サーダカの冒険◆ 『緑の国(2)』   文・鎌田 惠/絵・野村 玲

今月の『実演童話』は、サーダカが、氷で覆われた緑の国を蘇らせますが……。

梅雨明けを待つ園庭では、泥んこ遊びが盛んになってきました。
(鎌田 惠)

令和3年6月16日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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