家庭教育誌「ないおん」は、教育・子育ちをテーマに毎月こころのお便りをお届けしています

ないおん園版4月号(2021年4月1日発行)は

仏教が大切にしてきた言葉に「智慧」と「慈悲」という言葉があります。この二つの言葉に込められた仏さまの心を、仏教は大切にしてきました。
仏さまは私たちをどの様にご覧になられるかというと、智慧というすべてのいのちを平等に見つめる眼と、慈悲という自分と他人との隔てを超えて、他者の痛みや幸福を、わが痛みと幸福であると共感する心で見つめていかれます。これがすべての違いを認め、すべてのいのちを慈しむ、自他一如とよばれる仏さまの心です。

原始仏典には、次のようなお釈迦さまの言葉が伝えられています。

一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。

慈悲は他者を前提とした心情です。仏さまの智慧は慈悲の心として発動し、他者へと向かっていくものです。だからこそお釈迦さまは、35歳で智慧の眼を開かれてから、80歳で入滅されるまでの45年間、あらゆる人々の幸福のために教えを説き続けられたのでした。
仏教における智慧とは、自分さえ良ければいいという排他的な殻を打ち破り、慈悲として他者へと発動するものです。それがあなたのしあわせが私のしあわせ、あなたの悲しみが私の悲しみ、と響き合っていく慈悲の心だったのです。
そしてこのような心こそ、私たちが真実と仰いでいく尊いすがたであると示してくださった方がお釈迦さまでした。お釈迦さまのさとられた智慧と、他者に向けられた慈悲の精神を受けて、特に他者のために生きる、あるいは他者と共に生きるという、慈悲や利他の心を大切に受け継いできたのが、日本へ伝えられた仏教の教えでした。

仏さまの智慧や慈悲の心の素晴らしさ、尊さに触れていく時、私のあり方が少しずつかもしれませんが、見つめ直されていくのではないでしょうか。人間は自分を超えた真実に出遇うことがなければ、本当のすがたを確認することはできませんし、豊かな人生の歩みを進めていくことも難しいように思います。真実に出遇うというのは、まさに仏さまの心を最高の真実と仰いで生きていくという、新しい人生観の基盤が与えられていくことを意味しているのではないでしょうか。
この不安な時代、状況のなか、自分の都合だけに振り回されて生きていくのではなく、仏さまの教えを聞かせていただきながら、何か自分にできることを考え、実践していきたいと思います。
(赤井 智顕)

幼稚園・保育園版

育心

子どもは「せんせい」   超勝寺住職・著述家/大來尚順

大來尚順先生の今月の『育心』を拝読しながら、園で遊ぶ子どもたちの姿がいくつも重なりました。
「ごめんねと謝ろうね」「許してあげようよ」「仲良くしましょう」と、日常的に私たち保育者は、子どもたちに言葉をかけます。
ところが、それぞれの心の中には自分の考えや思いがあり、相手の心の中にも、自分とは違う考えや思いがあります。ですから、どうしてもケンカになってしまうことがあります。
園でもしばしば、保育者がケンカの仲裁をしている場面を見ることがあります。
そんな時の子どもたちの顔は、大來先生の娘さんのように、今にも雨が降りそうな曇り顔です。仲良くしたくても、ケンカになってしまった悲しみの雨です。
しかし、保育者の手を借りながら、自分の考えを相手に聞いてもらい、相手の考えもしっかりと聞いて、互いが納得し、仲良く遊ぶための着地点を見出せた時は、晴々とした笑顔を見せてくれます。
「雨降って地固まる」
私たち大人が忘れかけていた、気持ちを込めて心から謝ることや、心から人と仲良くするということを、子どもたちの姿を通して学ばせていただきました。

たくさんの花とたくさんの喜びを10

巣立ちを胸に   育児漫画家/高野 優

今月の『子育ちフォーラム』は、育児漫画家の高野優先生のお話です。
春は巣立ちの季節です。娘(息子)が生まれてから今まで、当たり前のように我が家の中心にいてくれた存在の巣立ちは、本当に、胸にぽっかりと穴が空いたような気がしますね。
食器棚の中の娘のご飯茶碗に目がとまった時、残り香だけが漂う部屋の窓を開けて風を通す時……。何だか目頭がジンと熱くなって、「ふぅ〜っ」とため息がこぼれます。初めて訪れた子離れの試練。私もしばらくはそんな毎日を過ごしました。
しかし、前を向いて、娘と過ごした時を振り返り、さらなる愛しさを募らせながら、感謝の気持ちで毎日を過ごしていきたいとしみじみ思いました。

私の雑記帖

苦難の歴史を乗り越えた 芸術を開かれた未来のために   智内威雄

今月の雑記帖は、音楽家の智内威雄さんが活動されている、左手のピアノ音楽の「芸術振興事業」「教育福祉事業」についてご寄稿くださいました。
智内さん自らが、片手に障害を持つ子ども達に、ピアノという出会いを支援される中で、逆に彼らから大きな感動を受けとり、勇気づけられ、導かれて活動を広げられているというお話に、大変心が揺さぶられました。
「苦難の歴史を乗り越えた芸術を、開かれた未来のために」第2回左手のピアノ国際コンクールが、ご盛会でありますように、心から応援しています。

智内威雄(ちないたけお)
東京音大卒。ハノーファー音大留学中に国際コンクールに入賞受賞するが右手に局所性ジストニアが発症。2003年より左手のピアノの音楽の復刻普及を目指し芸術振興と教育福祉事業を手がけ高く評価されている。

実演童話 こころに届けたいお話

◆サーダカの冒険◆ 『安心な国(1)』   文・鎌田 惠/絵・野村 玲

今月の『実演童話』でサーダカが次に訪れた国は、王さまが決めた通りに、国じゅうの人が、安心して暮らしているかのように見えます。

子どもたちの笑顔いっぱいの新年度をスタートしたいと思います。
(鎌田 惠)

令和3年3月23日 ないおん編集室(〜編集室だよりから抜粋〜)

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