電磁石授業プラン
〜磁力と電気の発明発見物語をベースにした授業プラン〜
 
1.人々は古代より、自然現象の中に電気や磁力の存在を経験的に知っていた。
慈石は鉄を召し、これを引くなり」2200年前の中国の本
713年(和銅6年)近江国より朝廷に捧げられている。今は磁石といえば、人工的に作られた磁石のことをさす。つまり「慈石」は、磁鉄鉱・天然磁石のこと、おそらくは、3500年前から始まった鉄の発掘と共に偶然見つかったものであろう。また、磁化させた鉄が北を指す性質から中国で羅針盤が発明され、大航海時代に大いに活用された。
宝石のひとつとして珍重された琥珀(エレクトーン)や硫黄という鉱物が静電気を帯びやすいことは古くから知られていた。16世紀の終わり頃イギリスの医者ギルバートは、静電気は磁力と別のものであると結論づけ、静電気を琥珀(エレクトーン)からとってエレクトルムと名付けた。フランクリン(米)が凧をとばして雷が電気であることを発見したことは有名。ボルタはカエルの解剖中に筋肉がけいれんするのは2種類の金属によって生じた電気により興奮させられたと考え電池を発明に至る。液漏れの少ない現在の乾電池の元となる発明は日本の屋井先蔵によるものである。
 
2.磁力と電気の研究はエルステッドの発見に始まった。
1820年の春、コペンハーゲンの大学でいつものように授業をしていたエルステッド教授は、針金に電流を流して熱と光を出す実験中、近くにあった磁石の針が動くことを発見した。この発見は大反響を呼び、これに刺激された多くの科学者が研究を重ね、モーターの発明に欠かせない電流と磁力の関係が明らかにされていった。彼の友人アンデルセンは彼の発見をたたえる詩を詠み。その後の科学者の功績をたたえるエルステッドメダルまで作られている。。
 
【実験1】エスルテッドの発見
@電流の流れる導線の周りに磁界が発生していることを確認する。 
A電流の向きによって磁界の極が変わることを確認する。

3.アンペールの発見
シュワイガーはエスルテッドの発見を応用して、磁石の周りに何周も導線を巻いて更に大きく磁石の針を動かす発明をしている。いわゆるコイルの原型である。さらに、アンペールは、電流が磁石を動かすことから、逆に磁石が電流の流れる導線を動かす事が出来る発見をしている。これは、モーターの発明に欠かせない原理的な発明である。
【実験2】アンペールの実験
@電流を流したコイルがU型磁石の磁力の影響を受けて動くことを確認する。電流の向きも変えて試してみる。
 
【工作1】検流計を作る
 
@フィルムケースの上から5oぐらいのところに千枚通しかキリで穴を開ける。
Aエナメル線を巻いてセロテープで止める。両端はエナメルを剥がしておく。
B画用紙は10p×2.5pの長方形から先を三角にしておく。 ストローの長さは2.5p
Cフェライト磁石の上にストローをのせるようにしてセロテープで固定する。
D@で開けた穴につまようじを通して針を固定する。

 極を変えたり、電池の数を増やしたりして針のふれ方を比べる。この後学習する電流計のしくみとも関連づける。
 
4.強い電磁石を作る
 エルステッドの発見の後、スタージャンヘンリーはコイルに鉄心を入れることで強い磁力の磁石を作ることを発見している。
【実験3】電磁石の強さと巻き数や電流の関係を調べる。
@コイルの巻き数・電流と磁力の関係を調べる。
A電流計の使い方を覚える。
B実験結果をにまとめ、考察する技能を身につける。
  
 
  
5.ファラデーモーターの「誕生」
 今からおよそ200年前のロンドン。マイケル・ファラデーが少年の頃、イギリスは産業革命のまっただ中。石炭を利用し蒸気機関が開発されるなど人類が大量生産・大量消費の幕開けとなる産業革命であった。とはいえ、多くの人々がまだ貧困の中にあった。マイケル・ファラデーもまた家計を助けるために製本屋ではたらき始めた。折しも多くの科学者達が様々な分野で発見や発明を競い合っていた時代であった。ファラデーは好奇心旺盛な少年で、製本屋にはそろっていた科学者の書物をヒマを見てはそれらの本を読みあさった。製本屋の主人リボーも勉強好きのファラデーに好意的であった。科学者達のなぜから出発し、発明や発見を重ねて行く姿にファラデーは見せられながら成長していく。その後ファラデーは、講義をきいたデービーに手紙を送り、その熱意が認められ王立研究所の助手に雇われることになる。エールステッドの発見以来、ファラデーもまたこの電気と磁気の関係に惹きつけられていった。そして、どうしたら電気の流れている針金を磁石の周りで回転させることが出来るかの研究に没頭した。そしてついに実験は成功させる。モーターの原理が誕生である。このモーターの原理が今、私達のくらしの周りにある様々な電化製品や工場の大きな機械を動かし、生活を便利なものにしてくれているのである。
 ファラデーが王立研究所で一般の人たちに科学の講義をしていたとき「この新しいおもちゃはいったい何に役立つのでしょうか」と質問され「生まれたばかりの赤ちゃんは何の役に立ちますか?_」と返している。すぐに役知立ったりお金儲けにつながる研究ではなく、自然のなぞを解く喜びのために努力しつづけた人であった。
 
【工作2】ファラデーのモーターを作る(演示実験でよい)
@グループで協力してファラデーモーターを回す。
Aモーターの赤ちゃんとも言われるファラデーのモーターが回転する様子を見ながら、彼の発明が後の文明にもたらした影響について考える。
 

【工作3】コイルモーターを作る
@簡単なモーターを作りを通して、モーターが回る原理を考える。
A教え合いながら、知識や技能を高める。
 

@フィルムケースにエナメル線を10回ぐらい巻き付けてコイルを作ります。
Aエナメル線の両端は円の中心を通る直線上に来る位置に2〜3回巻き付けて
 外に出し、2センチぐらいの長さでカットします。
Bコイルは一方は全部・もう一方は半面だけエナメルをはがしておきます。
Cクリップを図のように曲げて支柱をつくります。
 (クリップはライオン製のものを使ってください。「返り」があって先端を曲げる必要がありません。)
D乾電池に図のようにクリップをセロテープで貼り付けます。
Eフェライト磁石(直径2センチ)を乾電池にひっつけ、クリップの支柱に
はじめにつくっておいたコイルを乗せます。
ちょうどバランスがとれていて、きちんとエナメルがはがしてあると
コイルが回り始めます。

めざせモーター技師・モーター博士
 先生の前で10秒間回すことができたら。モーター技師に認定します。
 技師はまだ回せない人にアドバイスできます。教えるごとにサインをもらって技師の等級があがります。
  回らない原因を究明している間に、そのしくみなどが分かってきます。
 シャイな人は、このモーターが回るしくみを考えます。先生のところにきて説明できたらモーター博士に認定します。
 授業の終わりにモーター博士になった人にモーターが回るしくみを解説させます。
 こうすることで、自然に教え合いがはじまり、モーターの原理を考える児童が現れるのです。
 この実験の後に、このモーターの原理を説明するのも博士号を獲得した児童にさせてあげましょう。



6.発電が電気の活用を大いに飛躍させた。
ファラデーが行った一連の実験や発見の中に電磁誘導がある。これは、運動エネルギーから電気を取り出す原理となる重要な発見であった。いわゆる発電である。蓄電池にたよらない電力の供給は、その後発明される様々な電化製品の普及を可能にさせたのであった。
 
【実験4】電磁誘導
コイルの中を磁石が動くと電流が起こることを確認する。
 
 
 
 
 
  
【実験5】ゼネコンで発電
手回し発電機を使って、発電を体験する。
現在使われている電気のほとんどがこのしくみで発電されていることを知る。
ゼネコンミニ授業プランはこちら
 
6.電磁石の発明は、音を伝える機械の発明へと発展していった。
 電話の発明は、1875年の事であった。音を電気信号に変えるしくみにも電磁石が使われている。
【工作4】かんたんイヤホンで聞く。
コイルと磁石で簡単なイヤホンを作って電気が音を伝えるしくみを知る。

 

ピンジャックは、100円均一などで売っているイヤホンの線を切ってつくります。
のこった市販のイヤホン本体は、分解させてみると良いでしょう。中から磁石とコイルがでてきます。
イヤホンがこの原理で作られていることを再認識できます。

【工作5】ブザーをつくる。
永久磁石にはない電磁石の特性を利用したブザーのしくみを考える。
電気が流れるときだけ、磁力を帯びるという電磁石の特性を見事に生かした仕組みです。
啓林館の教科書にのっているものを更に簡単にしてみました。
構造が簡単なので、モーター同様に鉄板が連続して振動するしくみを見つけさせましょう。
 
ブザーの作り方はここをクリックしてね。
 
7.電球の発明はまさに世の中を明るく照らした。。
 電信機、蓄音機をはじめ数々の発明品を世に送り出した天才エジソンですが、電球の発明もその後の人々
の暮らしをまさに「明るく」変える偉大な発明でした。しかし、長時間光を放ち続けるフィラメントの
発見には多くの失敗の上に成り立っていたのです。
「天才は1パーセントの霊感(インスピレーション)
と99パーセントの汗(努力)とから生まれる。」
天才と言われ続けたエジソンの言葉です。
 
【工作6】エジソン電球をつくる。
@シャープペンの芯に電流を流すと発光することを知る。
電気を利用して「あかり」を取り出す考えは、エジソンが電球を発明する70年も前から多くの科学者たちによって研究が進められていました。蓄音機をはじめ多くの発明を世に送り出したエジソンもまた、これらの研究に刺激されて、電球の研究に没頭するのでした。その偉業から「天才」と称されるエジソンですが、実はその研究は実に計画的で地道なものでした。まず、電気から光を取り出すそれまでの実験を徹底的に調査し情報を収集することから始めます。当時、金属線に強い電気を流すと明るい光を出すことは知られていましたが、金属線はすぐに焼け切れてしまい、数秒間光るのがやっと。実用化にはほど遠い状況でした。エジソンは、明るくて長持ちする電灯を作るだけでなく、どんな家にも観点に電気が送れて、スイッチ一つでつけられるような電灯を作ろうと考えていたのでした。既に「発明王」として名をとどろかせていたエジソンが電灯の研究を始め、まもなく8分間という電灯の新記録を達成すると、当時の資本家たちは彼にとびつき電灯が発明される以前から「エジソン電灯会社」が設立されたのでした。ところが、1年経っても2年経っても実用化に耐えうる電灯は完成しません。多くの資本家達は、いらだちを覚え、半ばあきらめの声を挙げる者さえあらわれます。しかし、エジソンは多くの優秀な助手たちとともに数千種回にも及ぶ実験をくりかえしたのでした。「天才は1%の霊感(インスピレーション)と99%の汗(努力)とから生まれる」彼はこんな言葉の残しています。 さて、フィラメントと呼ばれる電灯の細い発熱体に適していたものは、意外と金属ではありませんでした。細い木綿の糸を炭にしたものに電気を流すことで40時間というそれまでとは比べものにならない記録を打ち立てたのでした。その後世界のあらゆる地域からねばり強い繊維質の物が集められ実験が繰り返されました。そして日本の京都から送られてきた竹がもっとも良いとされ電灯の大量生産に至ったことは有名な話です。こうして1880年ニューヨークに発電所が建てられその1年後には1万個以上の電灯が世の中を照らし始めたのでした。

シャープペンが焼き切れる時に見られるまぶしい発光はアーク発光と呼ばれるもので、エジソン電球が発明される前に、ファラデーの師匠でもあったデービーが実験的に行ったアーク灯の原理と同じである。電球が発明されるまで、ランプがガス灯が主流であった。
 
【工作7】電気パンを焼く。
電流が流れると発熱することを知る。
ものに電流が流れると発熱することは古くから知られていました。エルステッドの発見も鉄線に電流を流して発熱させる実験中に
起こりました。電気パンは、素材そのものに電流を流して発熱させてしまおうというものです。電解質の特性を生かした
実験ですが、小学生には少し難しいので、詳しい理屈は抜きで、とにかく味覚で電気の力を実感してもらいましょう。


 ホットケーキミックスに含まれている重曹(炭酸水素ナトリウム)の水溶液は電解質であり食塩同様に電気を通す。
ボルタの電池など金属や水溶液の組み合わせで電気が起こること関連づけることもできる。
 
7.その他
 
雷電びん   静電気を体感 「百人おびえ」

ボルタの電池
  
カエルの解剖中に筋肉が痙攣(けいれん)するのは、解剖につかった2種類の金属メスが
原因であったことをつきとめたボルタは、これをきっかけに電池の発明に至ります。
10円玉と1円玉をつかった電池作りに挑戦です。
この電池で電子メロディの音を鳴らせてみます。



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