『お前に渡しておく。……マイが最後に作っていた物だ』 『え?』 『ほら』 手渡されたのは小さな赤ちゃん用の靴下だった。 『靴下? 何で?』 『……さあ?』 疑問に疑問で返され、困惑が深くなる。 『ルア』 『……よく考えろ。お前ならわかるから』 『いや、そう言われても』 『本当にわからないのか? 本当にソレに気付かないのか?』 『え?』 真剣なその横顔が突然歪む。 『そうか。そうだよな。お前にだけは誰も教えないか』 『あのさ、何のことだよ?』 『……悲劇の始まり、運命の終わり、欺瞞の始まりのことさ』 『はあ?』 『だから一矢、お前はそっち側にいられる。……そして俺はいられない、そういうことなんだよ』 |